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ショートショート:賑やかな居酒屋での出来事

掲載日:2026/09/09

 仕事も片付いて一段落。何とか夜が更ける前に会社を出ることができた。帰りの電車に揺られ、自宅近所の駅に着いたところで、新しく居酒屋ができているのを発見。


 雰囲気は悪くない。入り口から中をのぞいてみたが、お客は少ないものの落ち着いた雰囲気だ。


 じゃあ入ってみるかと、俺はのれんをくぐった。


「シャッセー!」


 元気よく応じてきた店員は……全員外国人女性だった。いや、最近はどこも人手不足で外国人が働いているのも珍しくはない。そういうもんだよな。


「ナンニシマショー!」


 俺は相手が言葉が不自由かもしれないと思い、メニュー表にあるつまみを三つほど指で示し、そして生中も注文した。


「ヨリコンデー!」


 うん、元気だけは満点だ。


 さすがに生ビールはすぐに出てくる。


「オマタシシマシター!」


 元気良く運ばれてきたジョッキはこれまた勢いよく、テーブルにぶつけるように置かれた。ジョッキからこぼれたビールがこっちの袖にかかってしまう。


 思わず文句を言いそうにはなったが、だが慣れない日本で頑張っているのだとしたら、言葉を荒げてしまうのもかわいそうだと思い、俺は言葉を何とか飲み込んだ。


 だが、その店員が厨房に戻ったところで、何やら話し声が聞こえてくる。聞いたことのない言語なので内容は分からないが、なんとなく笑い声も混じっているようだ。接客のミスをしたのだから、笑い声は出さないでもらえるとありがたいのだが。


「ヤキトレデスー」


 ……どうやら焼き鳥の串盛り合わせなのだろう。皿に盛られた物が出てきた。だが、俺の知っている焼き鳥と何だか見た目が微妙に異なっているような。食べてみるとタレの味が妙に甘い。香ばしさはあるので食べられないことはないが……というか、これ、鶏肉なのか?歯ごたえがおかしい。


 そして、また厨房から話し声。今度は口論になっているようだ。分からない言葉で喋られてしまうと、聞いているこちらも何やら不安になってしまう。


 それからもいくつか盛り合わせの料理が運ばれてきた。どれも知っている味付けではなく、独特だ。もしかしたら味付けをお国柄に合わせて変えているのか?そう言えば海外の日本料理屋や寿司屋で提供される料理が日本人の感性から大きく外れているというのもよく聞く話だ。

もしかして、この店もそういうコンセプトなのだろうか?だが、看板にも店内の装飾にもそれっぽい演出はない、どこにでもある居酒屋の設えだ。


 一通り頼んだ物は出てきた。食べ進めると案外ビールには合う。ビールもやや注ぎ方が拙いのか泡がすぐ消えてしまったが普通に生ビール。なので中ジョッキをおかわりして飲んだ。

 それからも外国語の話し声は聞こえてくる。この店の客は俺しかいないので、殊更話し声が気になってしまう。分からない言葉で陰口など言われているとしたら嫌だなぁ。


 ……そう言えば最近のスマホに入っている翻訳アプリが良くできていると聞いたな。普通にリアルタイムで同時通訳とか。試しにやってみるか?だけどこっそり聴き耳を立てるようでもあるので気は引ける。

とはいえ、ここまで賑やかに話しているのだし、そこまで問題にもならない気がする。よし、試してみるか。


 俺はスマホの翻訳アプリを起動してみた。すると言語が認識される。聞いたことのない言語らしい。


 ……


「地球人の料理は難しいね、だが彼は気に入って食べているようだ。うまくいっている」

「私たちの好みを気に入ったのならいい傾向だ」

「ぜひ連れ帰ってみたいね、私たちと地球人は幸いにも遺伝子情報がほぼ同一、子孫を残すのも恐らく問題ない」

「まず誰が彼と性行為をするか?順番はまず私のはずだが」


 ……


 俺はそそくさと勘定を済ませて店を後にした。


 それにしても……最近の翻訳アプリは本当に良くできているらしい。まさか異星人の言葉まで翻訳できるとはね。

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