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異世界に強制転移させられた上に国王になれといわれたので現代兵器を使って最強軍事国家を目指します。  作者: Tel


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10. 小さな鍛冶師

あの後、シエ・デュラック上院長は部下に引きずられ街の警備に戻ったようだ。

祖父のいいつけだからといって見ず知らずの孫をそこまで慕うことが出来るだろうか。しかも、今1番国民と院の貴族たちから支持が厚いのが彼だというのだから尚更困惑してしまう。いうなれば俺の対抗馬になる男だ。要警戒せねばならない。

 そんなことがありつつ、俺とルイス、オズは賑わっている街の外れにある森に来ていた。まだここはミゼラブル王国内だろうが開拓はされておらず木々が鬱蒼と生い茂っている。


「なぁルイス。ここにその職人がいるのか?」


「えぇ、彼は……"チド・ジェニス"はかなり人との対話が不得手でしてね。私やオーズ、生前のマサオミなどには友好的なのですけど…。あっ、キヨマサここから先は私の後ろにきちんとついて来てくださいね。彼が作った迷いの結界があるので」


「迷いの結界……?」


後に聞いたことだがこの迷いの結界は非常に優れていた。まず初見で知らない人は目的にはたどり着けないようだ。何度挑戦しても森の入り口に出てしまうという。チド・ジェニスは魔法が使えないからこそ魔法を使わないよく切れる剣や優れた弓を作っているものだと思っていたが魔法も使えるのか。なら何故彼はオズが言っていた魔法を使用しない武器にこだわるのだろうか。


「アイツはコミュニケーションが下手すぎんだよ、だから私が代わりに武器やら飛び道具、嫌々作らせた魔道具なんかを冒険者や騎士団に卸してやってんだァ。私がいなかったらなんにもできねぇんだアイツは……」


オズはガリガリと後ろ髪をかきながら、ウザったそうにいう割にはその職人と仲は親密であるように見えた。

そんな様子を見る俺にルイスは小声で俺に囁いてくる。


「オーズと彼は昔からの幼なじみなんです。彼はずっとオーズの後ろにずっとひっつき虫でして、、そしてオーズも実に満更ではない様子で……あいだっ」


「んん? 何をおっしゃってやがりますかルイス様ァ?」


ルイスにデコピンを後頭部にお見舞したオズ。

あたたっと冗談めかして笑う。

2人もネームドの魔女と魔法研究所長として旧知の仲なのだろう。非常に仲が良さそうで微笑ましい。

そんなことをしていると、森の中に人工物が見えてきた。

素朴なログハウス。そこから横へ石材でできた四角い建物が伸びており、煙突からは煙がでている。

その傍らには大量の黒い石と赤い鉱石が乱雑に大きな木箱に入れられていた。

耳をすませば中からカンッカンッ という音が聞こえてくる。なにやら作業中のようだが。

 そんなことも気にもせずオズはずんずんと進みログハウスの扉をノックする。


「チド! アタシだ! 出てこい!!」


カンッカンッ!


「はぁ…アイツ1回集中しちまうといつもこうなるんだ」


音は相変わらず鳴り止まない。かなりの声量だったが中の住人には聞こえなかったようだ。オズはこうなることを分かっていたのか無遠慮にガシャっとドアを開け、入室した。

ルイスも続くようにログハウスに入っていく。

俺も続くようにお邪魔させてもらうと、外気温より明らかに高い室温。そして土と鉄の臭い。製鉄所の工場見学に行った時を思い出す。

中は床中に本や設計図のような紙、ベットの横にある机には食べかけのシチューのようなものが置かれていた。

部屋の奥にはひとつの木の扉があり、そこから何かを叩く音が鳴っている。オズはそこに向かい扉を乱雑に開ける。


ムワッとした熱風が顔を打つ。

開けられた扉の奥には小さな男の子がごうごうと燃える炉の前に座っていた。小さな手で自身の背丈ほどの真っ赤に光る細長い鉄を持ち、液体に浸していく。その瞬間白い湯気と炎が昇り、花火を水に突っ込んだ時のような高い音が鳴る。

 それを真剣に見つめる横顔は幼く、オズと幼馴染ということだったが彼の見た目は10歳そこらに見える。青色の髪にクリっとした女の子のような瞳可愛らしいものだったが、革でできた作業着から見えるその前腕には並々ならぬ傷と逞しい筋肉があった。

 俺はその洗練された作業に図らずも見蕩れてしまっていた。

 隣にいたオズは見慣れているのか作業が一段落したようなタイミングで開けた扉をノックする。


「おいチド、今ァ大丈夫か??」


「えっ? うわぁああああああ!!!」


驚くチドは仰け反り、後ろに倒れそうになる。

そして瞬きをした次にはオズが素早く移動し、チドの背中に手を添え、熱そうな鉄を持っている手を一緒に握っていた。


「―え?」


とても人間業ではない所業にオズもルイスと同様魔女だったことを思い出す。身体強化などの魔法だろうか。


「おっとと、すまねぇ。大丈夫かチド」


「オズ! って、ルイスさままで!! ……ひっ、、知らない人ッ!」


驚きからの喜びからの恐怖。

俺の顔を見てチドはオズの後ろに隠れてしまった。

なんか悪いことをしている気分だ。

こう目の前で拒否られるとくるものがある。


――――――――――――――――――


「突然おしかけてごめんなさい。本日はチドにお話があってきました」


「はっ、はいぃ… お久しぶりですルイス様……そ、そちらの方は?」


俺達は先程の散らかっている部屋に戻り机に座っている。

 オズの服の裾を握りながら俺のことを聞いてくる。


「はい。こちらはキヨマサ。貴方が敬愛していたマサオミの孫です…って何度目でしょうねこの会話」


「チドさん?でいいのかな。うちの祖父がお世話になったみたいで……」


「ッ!?」

 


コミュニケーションが不得手と聞いたのでなるべく下から、無意識からでる言葉の圧を徹底的に排除する。

どうやら突然の事で脳の処理が追いついてないようだ。

オズの方に驚愕した表情を向けている。

彼女も困ったように目を瞑って無言でコクリと頷く。


「"先生"のお孫さん、ですか……」


「先生?」


「チドはオジキに鍛冶師としての知恵やアイデアをよく教えて貰ってたからなァ」


なるほど。

祖父は昔プロ棋士をしていた頃、将棋盤や囲碁盤のマス目の線を作る、日本の伝統的な技法である「太刀盛り」が大好きで、その影響からか刀の勉強もしていた。

先程チドがやっていたのは日本刀の作る工程で非常に重要な「焼き入れ」だろう。

その知識も祖父から譲り受けたものだとするとあの細長い鉄は刀のようなものだろうか。

チドの異世界の知識を取り入れてものをつくるその柔軟さと技術に歓喜する。

となれば用意してきた"これ"にも食いつくはず…!


「チドさん。いきなりで悪いんだが貴方を生粋の職人だと見込んで依頼したいことがあるんだ」


1枚の紙をチドに差し出す。その紙をオズが手に取りチドと一緒に見る。オズはピンと来てない様子で怪訝そうな顔をしていたが対するチドの顔はみるみるうちに青ざめていった。


「先生……のお孫さん。これは貴方が考えたものです、か、、?」


「これは俺がこの世界にくる前に存在した武器だ。"マスケット銃"という。俺が好きな武器の一つだ」


俺が手渡した紙には俺が構造を知っている中でこの異世界において製造が可能そうな武器。マスケット銃の設計図が書かれている。本当はライフリングのついた銃がいいのだがあの加工技術があるのか確証がないためこの選択になった。


「この設計図の価値は未熟な僕にも、分かります、、これを独占すれば、貴方はどんな国からも喉から手が出るほどの富と名声を、手に入れられたはず、です……」


「この世界において魔法に優るものはない。だからこそ剣や弓からの脱却が出来ていない。これは魔法が使えないただの人間でも身を守ることのできる術だ。もちろん輸入出は管理しなければならないが…これができればこの国はもっと強くなる。この国の兵力は先の大戦で大損害を受けたと聞いている。唯一の魔物への対抗策であるルイスも国力の低下により魔力も減少し続けている。人材も国力も弱くなる一方であるならば、新しい防衛策が重要だと俺は考える」


「チド、この杖みてぇなんにそんな価値があんのかァ?」


「オズ、これは凄いなんてもんじゃないよ!弓に代わる新しい武器だ。なにより機能美に優れているし、爆発による圧力により球を高速に弾き飛ばすなんて常人じゃあ考えられないよ。これを設計するまでにどれ程の時間と犠牲が伴ったんだろう……!装填速度や反動に操作性、素材は考慮する必要があるけどこれを作ることが出来れば魔法と肩を並べることだって可能かもしれない。魔法至上主義の世の中が変わるほどの代物なんだ!あァ!作りたい!今すぐ作って実際に作動するところを見てみたい!」


チドは先程の怯えた様子とは打って変わって饒舌に話し出した。頬は紅潮し、目はガンギマっている。

なにより目を見張るのは設計図に対する理解力。

俺が書いたマスケット銃の設計図は全体図と仕組みだけ。

所詮は少し銃に詳しい素人が書いたものだ。

それだけの情報でこの銃の改善点すら見出した。

俺は背中がゾクリとする感覚を覚える。


「チドさん。これを国への贈り物として捧げ、俺はミゼラブルの国王になろうと思っている。祖父の遺言。それに恩人であるルイスからの頼みなんだ。どうか協力してはくれないだろうか」


「あ、頭を上げてください! ぼ、僕の方から頼みたいくらい、です……!―って国王!? き、清政、、さん? は選挙に出られるのですか?」


「チド。私からもお願いします。私はマサオミの遺言通り、キヨマサをこの国の王に推薦します。貴方も知っての通り、デュラック上院長は人柄は評価しますが王の器ではないです。そう思ってしまうのも彼の"(へき)"……いえ、特性ゆえでしょうが…」


「あぁ、確かに……」

 

癖……? ルイスにそこまで言われる彼は一体なにをしたのだろうか。

 何はともあれチドの協力は取り付けた。お孫さん、ではなく名前も読んでくれたのも少しはお近付きになれたということだろうか。

後は各部品の詳細な図を書き起こしていこう。

なにやら妙に納得した表情をしているチドを見て疑問符を浮かべずにはいられなかった。


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