第6話『スキル』
「『防御』ッ!」
ゴブリンの攻撃をマックスが危なげなく盾で受け止め、そのまま押し返す。
体勢を崩し、よろめいたゴブリンの隙を俺は見逃さなかった。
「スキル、『蛇眼』ッ!」
このまま押し切る!
ゴブリンに距離を詰め、片手剣を振り下ろす。
———だが動きを封じられたはずのゴブリンのナイフにあっさり弾かれてしまう。
「あれっ!?」
今度はこちらが体勢を崩してしまい、隙だらけの俺めがけてナイフが一直線に伸びてくる。
これは死———。
だが、その突きが俺に届くことはなかった。
薄汚い緑の腕が宙を舞う。
その腕が地に落ちた瞬間、マックスの腕が高速でしなり、ゴブリンの頭が飛んだ。
「戦闘中に気を緩めるな、死にたいのか!」
マックスは元々名のある衛兵で、腕のたつ剣士だ。
実際、今もマックスがいなければ、俺の命は無かっただろう。
「助かったよ、ホント。あんたがいてくれて良かった」
感謝の言葉をかける間にもマックスは次々とゴブリンを斬り伏せていく。
人外の魔物とは言え、目の前で生き物が血飛沫や臓物を撒き散らしながら死んでいくのを見るとトラウマになりそうだ。
ZWEI にはスキルという概念が存在する。
生まれつき全ての人間が必ず一つは持っており、その効果は様々。
マックスのスキルは『防御』。
盾などを装備しながら発動すると、防御力が上昇するという実にシンプルなものだ。
一見すると地味な物だが、戦闘向きのスキルというだけでかなり珍しく、重宝するらしい。
『料理』や『鍛治』などの生活や仕事に役立つものならまだいいが、『木登り』なんていうしょっぱいものもあるそうだ。
そしてスキルを持つのはZWEI の人間だけでは無かった。
他の世界に住む者にも生まれつきスキルを持ってるいるのだ。
———ただ、使えないだけで。
スキルを使えるようにするには『刻印台』と呼ばれるアイテムで、魂に刻まれているスキルを体に定着させる必要がある。
スキルの存在にすら気づかなかった他の世界にはそもそも刻印台が無く、スキルを持っていても使うことができない。
街で帰還者団の全員が刻印台でスキルを定着させ、その中でも戦闘向きの者、元の世界で戦闘経験がある者、命をかける覚悟がある者を選抜し、それが俺達十人というわけだ。
おれのスキルは『蛇眼』。
発動すると、対象の動きを二秒間封じられる。
……成功確率は五パーセント。
超低確率であまり使い物にならないし、俺もせんと経験がないため、最初は選抜メンバーから除外されていたのだが……。
「お前がどうしてもって言うから連れてきたんだからな、シャキッとしろ!」
俺の強い懇願により、連れてきてもらったのだ。
光織を見つけるために……。
俺は約束したんだ、光織と。
必ず助ける———。
その後、俺達はゴブリンの群れを全滅させ、移動を再開した。
まあ俺はほとんど何もしてないけど。
その後も道中何度か魔物と遭遇したが、マックス達のおかげで何事も無く進んでいた。
アイツが、現れるまでは。




