第3話『帰還者団』
「F……Ü…NF?なんのことだ」
「私に聞いてもわかるわけない」
知ってるよ、独り言だよ。
「なあ、俺達の他にも首に何か書いてあるやつはいたか?」
「知らない、見てなかった」
コイツ……!
かなり重要なヒントになり得る情報だったのに……!
まあかく言う俺も、コイツに首の文字のことを聞かれるまでは気づきもしなかったが。
「ヘイ、それはドイツ語だぜ少年」
2人で頭を抱えてウンウン唸っていると、いきなり声をかけられた。
魅惑的なバリトンボイスの持ち主は筋肉質で強面の短髪の男だった。
「あ、どうもありがとうございます……?」
こんな人にタメ口利くだなんてとんでもない。
相手がタメ口でも、流石に相手は選びます。
……というか。
「今ドイツって言いました!?」
「うお、あまり興奮するな少年」
鼻息を荒くして詰め寄る俺をどーどーと宥めてくる。
「つまり俺達は同郷の人間ってわけだ。少年、君は日本人だろう?」
男は日本人ではなさそうだ、見た感じヨーロッパ系の人かな?
「ええ、見ただけでよくわかりましたね」
すると男は片目をつぶり、人差し指をピッと立てた。
「別にすぐわかったわけじゃない。俺達の世界なら日本人だろうなと思っただけさ」
「どこの世界から来たか見分けられるんですか!?」
その言葉を聞き、男は得意げにニカッと笑った。
「この首の文字はドイツ語で数字を表している」
数字、数字か。
「なるほど、俺とあなとの数字が一緒、ということですね」
「正解だ。俺と君の首のFÜNFは5、そしてそこの彼女のSECHSは6だ。1〜6まではさっき見せてもらってきた」
まあ他の数字もあるかもしれんがな、と男はやれやれといった顔で大きくため息をついた。
「この数字が自分がどこの世界から来たかを表しているのはほぼ間違いない。俺達の数字は一致しているし、ここの住民だった人らの首は全員ZWEIだからな」
ツヴァイ、つまり2。
「それはここが2番目の世界ってこと……?」
「あくまでも可能性だが……、まあ十中八九そうだろうな」
つまり……。
「つまり世界は、最低でも6個存在する……」
男は俺の肩をバンッと叩き笑った。
「そんな深刻そうな表情すんなよ少年!なあ、俺と一緒に来ないか?」
……?
「俺達はこの世界に連れて来られたわけだが、その逆、この世界から連れ去られたやつらも大勢いるわけだ。そこで俺は、元の世界に帰りたいヤツらや消えてしまった家族や友人、恋人などを連れ戻したいヤツらを集めた!」
この世界に来たのはついさっきだろうに。
なんて行動力のある人なんだ。
「その組織の名を、『帰還者団』!」
とても頼りがいのある人だ。
俺は彼に尊敬の念を抱いていた。
この人になら、こんな非常事態でも今後を任せられる。
「そして俺の名は、アロイジウス・アドラー!少年少女よ俺について来い!」




