第26話 感情を込めて君のこと
前日、クラス劇が「シンデレラ」に決まった。
どこの誰だか知らないが、僕を王子にしたらいいんじゃないかと言った人がいた。
そのせいで、今王子の衣装を着てセリフを覚えている真っ最中だ。
「全然覚えられないな…」
自分で言って劇になってしまったのだから、責任は勿論持つ。
だがしかし、劇の才能が皆無ということに気づいた。
物語のキャラクターに感情移入しなければならないため、凄く難しい。
「おい、中嶋!棒読みになってるぞ」
「うるさい」
セリフに苦戦していると、奥の方でみんな騒いでいる。
何かと思い、見に行くと…
今井さんがシンデレラの衣装を着ていて、それでみんな騒いでいるのだ。
「今井さん、可愛い〜」
「今井さん、似合ってるぞ〜!!」
クラスみんなが絶賛している。
今井さんはこちらへ近づいてきて「あの…に、似合ってる…かな?あまり自信ないんだ…」と聞く。
(なるほどな。今井さんも勇気出してシンデレラ役に立候補してくれたんだもんな。俺も頑張らないと)
そういう気持ちになった。
「いや、あの…なんていうか。す、凄く似合ってる…よ…」
僕も勇気を振り絞って、今井さんに思っていることを伝えた。
「あ…ありがとう!」
今井さんは嬉しそうに笑顔で言葉を返す。
今井さんが笑った瞬間、教室の空気が一段と明るくなった気がした。
その笑顔に引き込まれそうになって、危うくセリフ帳を落としそうになる。
「おい、中嶋。顔真っ赤だぞ〜!」
後ろから茶化す声が飛んでくる。
クラス中が笑いに包まれるが、僕は必死にごまかした。
「ち、ちがう。暑いだけだ!」
でも、本当は暑さのせいじゃない。
胸の奥から込み上げてくるこの熱さは、間違いなく別のものだ。
先生が手を叩いてみんなを集める。
「はいはい、集中してください!今日は王子とシンデレラの舞踏会の場面を通してみるよ!」
一気に空気が張り詰めた。
舞踏会の場面。
つまり、僕と今井さんが初めて本格的に絡む場面だ。
「……やれるかな」
つい小さく漏らした声を、隣にいた今井さんが拾った。
「大丈夫。私も緊張してるし…でも、真也くんとなら頑張れるよ」
その一言が、不思議と僕の胸に響いたんだ。
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