第18話 君が忘れるなんて珍しいね
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僕は今学校に来てからある初めての光景を見ている。
それは今井さんが、さっきからカバンの中を漁っているのだ。
おそらく探し物をしているのだろうが大分慌てているのでどうしたのかと内心心配しているのだ。
「今井さん。どうかしたの?」
僕はそう彼女に問いかける。もしないなら一緒に探そうかとも思っている。
「あのね。今日の朝、教科書入れたはずなんだけどなくて…」
あの今井さんが忘れ物とはずいぶん珍しいこともあるもんだな。
学校に来てからと言うもの今井さんには「完璧」という言葉が本当に似合うほどの完璧さだった。
テストも「隼人」と「高倉」の3人で1位〜3位を争っているレベルで到底この偏差値52の学校にいて良いレベルではないので、普通の学生は手も足も出ない状況だ。
僕は…。
「あのさ。良かったら何だけど、教科書貸すよ」
勇気を振り絞って言った。(よく頑張った、俺)
「いいの!?やったー!」
今井さんは喜んでくれた。最近は少しずつだけど嘘をつかずに、自分の本心でやってあげたいってことをできるようになってきた気がするよ。
ほんの少しだけだけどね。
教科書は一つしかない。だから今井さんと椅子をくっつけて、真ん中に教科書を置いて、一緒に見ることにした。
(見て良いとは言ったものの…距離が近いからなのか少しだけ緊張するな)
肩がもう少しでくっつきそうなくらいの距離にいる。
球技大会の練習の時もそうだったな。僕達は肩と肩がくっついた。その時の感情は今でも忘れはしない。
授業に集中していると、今井さんがこっちに近づいてくる。
(きっと集中し過ぎてて、気づいてないんだろうな…)
すると肩と肩がぶつかる。
「あ、ごめん」
そういってこちらを見る。近づいて来ていたからか、お互いの顔が近い。
少しの間、お互い見つめ合ってたような気がする。
でも、すぐに我に返る。
「ごめん!」と言いながら、勢い余って立ってしまった。
「何やってんだよー!」
クラスのみんなに笑われた。今井さんも笑っている。
(全く。他人事だと思って…)
でも、その笑顔を見ていると、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ、こんな日常が少しだけ愛おしく思える。
そんな気がした。
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