第1話 桜が舞う始まりの高校
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この物語は、平凡な僕が、誰も予想しなかった恋に出会い、人生の景色が少しずつ変わっていく話だ。
僕の名は中嶋真也。恋愛には興味がなく、嘘をつく癖もある… そんな僕にとって、高校生活は退屈で、面倒で、少し恐ろしい場所だった。
だが、運命とはいつも、予想外のタイミングでやってくるものらしい。
この物語は、そんな日常の中で芽生える、小さな奇跡の記録である。
これは、恋愛に全く興味がなかった僕、中嶋真也が、予想もしなかった恋に落ち、人生が変わっていく物語。
僕はとある田舎町に生まれた。周りは山や川だらけで、特に面白味のない町だ。
その中に、ひときわ目立つ大きな校舎が立っている。これは、僕が今年から通い始める共学の高校、「桜誠高等学校」だ。
偏差値は52で、普通の高校だ。
小学校、中学校と特にこれといった目標がなかった僕にピッタリな高校なのだが、「桜誠」という文字には「誠実に咲き誇る桜」、つまり嘘をつかず誠実に生きるという意味が込められているそうだ。
唯一これだけは僕に似合っていない。
僕はそんな名前を付けられるほど純真無垢な人間ではない。ここでは長くなるので話さないが、僕には嘘をつく癖、いわゆる「虚言癖」というものがある。
これが理由で、僕には似合ってないのだ。
まあ、そんな話は置いといて、4月7日、入学式だ。
予想は何となくつくだろうが、みんな「受験戦争」というものを乗り越え、自分が入りたかった高校に合格したわけだし、当然浮かれている。
周りからは「やっと入学式だ!たくさん友達作って、彼氏も作るぞ!」などの、女学生のテンプレとも言える台詞があちこちから聞こえてくる。
一方、男子学生は「可愛い子いた?俺さっきめっちゃ可愛い子見つけたんだよね。あれ狙うわ」と、男子学生が言わなくても心で一度は思ったことのあることを口に出して代弁してくれる人もいる。
先にある体育館に向かって、両親と歩いて行く。
体育館の中に綺麗に並べてある椅子に静かに座る。
幸いなことに座る席は自由とのことなので、後ろの席に座っておいた。
これは僕の偏見だが、内向型の人間は後ろへ座り、外向型の人間は前へ座るもの、そして僕自身はそう座るべきだと思っている。
そして30分くらい経つと会場は満員になり、ステージの脇に立っているマイクを持った男性の先生が「ただ今より入学式を始めます」という声が体育館中に響き渡る。
先生に「一同起立!」と言われ、皆一斉に立ち、先生の「礼!」という声と共に頭を下げ、また再び座る。
そこからは僕にとっては、というより、全学生にとって特に意味のない時間だろう。
在学生が校歌を歌い、校長先生の長い話を聞き、教育委員会代表だったりPTA会長だったり、来賓に来ているよく分からないおっさんの話を長い時間黙って座って聞いていなければいけないのだから。
やがて入学式は終わり、クラス発表がされた。
当然、同じ中学校から一緒に来ている人たちが同じクラスだからか、「やったー、同じクラスだな」という声が多々聞こえる。
かくいう僕は友達なんていないのだから、このクラスがいいというのもなかった。
とりあえず変な奴と同じクラスにならないように、贅沢を言うならば、その変な奴と隣にならないことを願っていた。
しかし、学校の神は僕に味方なんてしてくれるはずがなかったのだ。
クラス発表がされ、指定された7階のクラスに行った。
このことから分かるように、教室の位置に恵まれなかった。
1年生は全学科7階で、階段を登る時に少し殺意を覚えた。
3年生の教室の位置が3階なのだ。
後ろのいかにも野球部だろって髪型している奴が、先輩から「あー、疲れた。3階まで登ったんだから当たり前か。ん?お前は7階か。ずいぶん大変だな」と、語尾に「笑」が付きそうな口調で言っていたので、控えめに言って、ぶん殴りたくなった。
教室に入り、僕の席は「窓際族」だった。
「窓際族」とは、窓側の席に潜んでいる先住民族の愛称だ。
女性アイドルの人が呼ばれている、「〇〇たん」みたいなものだ。
先生が授業の時に左側から指してこない限り、大当たりな席だ。
けれど、隣の席になった女子。
「今井彩花」という名前の女子だった。
見た目は清楚系で髪は長く、肌が綺麗で、おまけに頭もかなり良いらしい。
噂だが、彼女は国立医学部を目指しているらしく、周りの生徒が騒いでいた。
僕はそれを聞いて、彼女は場違いな場所に居ると思った。
どれくらい場違いかと言うと、「サッカー選手になります!」と言って、バッティングセンターでサッカーボールを蹴っているのと同じくらい場違いなのだ。
そしてこれまでの話を聞いたら分かる通り、彼女はとてつもなく目立つのだ。
これは根本的な僕の性格に問題があるのだが、基本的に目立つのがあまり好きではなく、ごく少数の友人と付き合い、それ以外の時は教室の隅で本を読んでいたいタイプだ。
このようなタイプの人間なら分かると思うが、今説明したような学生生活を送りたい人にとっては、迷惑極まりない。だから、少し距離を置いて過ごそうと思った。
そして、担任の先生の柴崎利美先生はとても優しい人で、落ち着く声で話をする。
心で「先生は良い人そうで良かった」と安堵した。
色々と説明があり、柴崎先生が「説明は以上です。今日はこれで終わりです。明日元気に登校して来るのを楽しみにしています。」と言って、こうして、僕の高校生活初日は静かに幕を閉じた。
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こうして、僕の高校生活は静かに幕を開けた。
まだ何も起こっていない… そう思っていた矢先、僕の隣に座った彼女、今井彩花の存在が、静かな日常を少しずつ揺るがしていくことになる。
この物語は、日常の中に潜む小さな変化と、心の揺れを描くものだ。
そして、僕がこれから経験する「予想外の恋」は、きっと、人生を大きく変えていく。