熱き砂浜の戦い4
「リューちゃん大丈夫?」
拭いても拭いても汗が止まらず唇が腫れぼったく感じる。
特別スポンサーとして紹介されたヒュポクウォを出している店の店主によるとあまり辛くないものから激辛まで辛さを選べるとのことだった。
今回は競技用に超激辛仕様のヒュポクウォを出していた。
1番最初に感じたのは旨味だったので辛さがまともなら美味いんだろう。
参加者であるリュードとルフォンはその場を離れられないのでスナハマバトルの応援に来てくれていたエミナに飲み物を頼む。
「やるじゃないか、ボウズ」
辛さにやられて木陰で休んでいるとバーナードが話しかけてきた。
「どうも……」
リュードは辛さのためにヒィーヒィーしているのにバーナードは元気そう、に見えてバーナードの唇もなんだかさっきよりも分厚く見える。
リュードほど汗はかいていないけどバーナードもしっかりと辛さにやられていたのだ。
「前回は酸っぱいもの早食いだったんだが今回は辛いものだとはな。
苦手ではないけどあれは辛すぎる」
「そうですね。
自分でも食べ切れたのが信じられません」
「私も君がいなかったらリタイアしていたかもしれないな」
「今回の大会はあなたたちが私たちのライバルになりそうね」
青い水着を身につけたバーナードの隣に立つ女性はバーナードのパートナーであるエリザ。
「そうだな、若いことは素晴らしいが私たちも経験というものがあるからな、負けないぞ」
豪快に笑うバーナード。
「よろしく頼むぞ!」
まるでボディービルダーのような体つきのバーナードは己の筋肉を誇示するようなポーズを決めて、去っていった。
この世界にボディービルダーという職業はあるのだろうか。
ただ悪い人ではなさそうだ。
「さて!
次の競技の準備ができました。
続きましては〜息止め対決ー!」
せっせと料理たちを片付けて今度は深めの透明な容器がステージ上に並べられた。
水が並々と注がれていて容易に次の競技のことを想像ができる。
「毎回毎回のことですが、ルールは簡単です。
水に顔をつけて、息を止めるだけ!
1番長く息を止められたものがこの対決の勝者となります」
全体的にそうだけどゆるゆるな競技。
ただ単に楽しいイベントなのだからいいのだけど。
息止め対決の出場者は早食いで出なかった方が出ることになる。
つまりは早食いで男ばっかりだったので、息止め対決は女の子ばっかりになるのだ。
リュードは早食いに出たのでルフォンがステージに上がる。
「ふっふっふっ、この息止めは私が1番得意な競技なのさ。
圧倒的な実力の差を見せてあげるよ」
運命のいたずらかルフォンの隣はなんとエリザだった。
特に必要もないのに手首を回してみたりしてみせている。
威嚇しているつもり。
威嚇になってないけど。
これで水に潜ってください、とかいう勝負だったら絶対に勝てなかった。
水の入った容器に顔をつけて我慢するだけならルフォンでもなんとかいける。
「それでは息止め対決を始めます。
用意はいいですか?
……始め!」
一斉に女の子たちが大きく息を吸い込んで顔を水につける。
「注目株は誰ですかね、バイオプラさん」
「これはねぇ、やっぱり去年の感じからいくとエリザさんかな?
僕は個人的にルフォンさんを推しているけどね」
「なるほど、やはり優勝候補筆頭とも言われるエリザ、早食いでパートナーが頑張ったルフォンと言ったところが注目ですね」
「あとはやっぱり女の子が並んで頑張って息止めてるのを見るのはイイネ」
「危険な発言はお控えくださーい」
なんとなくスナハマバトルを見てる男性客が増えた中ルフォンは必死に息を止めた。
リュードもこの勝負の行方は分からない。
ルフォンがどれほどの肺活量を誇るのかリュードは知らないのだ。
泳げないので川遊びに積極的でなく、川までついてきてはいても横でジッと見ていたりしていた。
川に潜って息を止めたりなんてやったものだけどルフォンがそれに参加したのを見たことがなかった。
リュードや他の子も特に無理矢理やらせたりなんてこともなかった。
運動はするからそうした能力も低くはないだろうがルフォンの肺の能力は未知数であった。
頑張る女の子たちにオッサンの声援が飛ぶ。
バーナード・エリザペアには一定のファンがいるのかエリザを応援する声もある。
ルフォンに対しても応援する声は上がっていた。
エミナやヤノチも応援しているのだけどオッサンたちにもルフォンを応援している人がいる。
最初の1人が顔を上げると続くようにして続々と脱落していく人が増えていく。
息を切らす女性は美しい、なんてバイオプラの声が聞こえたような気がしながら時間は過ぎ、応援にも熱が入ってくる。
ルフォンの隣の女の子が顔を上げた。
エリザの方ではなく、逆側の女の子。
「ここでまた1人脱落しましたー!
残るは2人、息止め対決一騎討ちとなりました。
残っているのはバイオプラさん推薦のエリザとルフォンだぁ!」
なんと最後まで残ったのはルフォンとエリザ。
1つ前の早食いでリュードが死ぬ気で頑張ったのだからルフォンも死ぬ気で頑張った。
コポコポとルフォンの口から空気が漏れる。
「プハァ!」
体をよじるようにして我慢していたけれど限界が来た。
「ルフォン!」
限界まで耐えたルフォンは酸素不足でフラついた。
リュードは慌ててステージに上がってルフォンを支えるとゆっくりと下まで付き添う。
「リューちゃんゴメンね……勝てなくて」
「いいって、アレは……強すぎる」
ステージを見るとただ1人、エリザがまだ水に顔をつけていた。
全く微動だにせず、苦しそうな様子も見受けられない。
司会のウェッツォが止めてようやく顔を上げたエリザは息を切らすことなく、手を振って観客の声援に応えていた。
まだまだ余裕を感じされる顔をしている。
ルフォンも2位なので頑張った。
エリザの肺活量が異常に優れていた話で無理をすることはないのである。
ショボンと耳をたたむルフォンの頭を撫でてやる。
息を止める鍛錬をしてきたでもない。
負けてもしかたないと言える圧倒的な実力であった。
バーナードとエリザはハイタッチを交わすと、バーナードがエリザの頬に軽くキスをする。
前回大会覇者はダテではなかった。
「息止め対決ではエリザが圧倒的な強さを見せつけてくれました。
2位のルフォンもかなり健闘していましたね。
さて、息を整えるために少し休憩しましたら次の競技に参りましょう。
次の競技は旗取り!
もうお分かりかと思いますがこのスナハマバトル難しいことはございません。
この旗取りもひじょーにシンプルな競技でございます。
ルールの方、説明させていただきますよ。
砂浜に旗がブッ刺してあるので、一斉に走って、それを取りに行く。
旗を取って手にした者が勝者……うーん、わかりやすい!」
ビーチフラッグ。
そのまんまやないかいと突っ込みたくなる。
名前も旗取りなんてそのまんまだ。
心の中でそっと思う。
この旗取りは男性部門、女性部門、ペア部門の3つで争うことになる。
水分補給をしたり、柔軟をする時間が与えられ、リュードたちも体を軽く動かす。
ようやく汗と口の痛みも引いてきたので体調は悪くない。
まずは男性部門からの開始となった。
最初の砂山崩しで脱落したペアを抜いた20人を4つに分け予選とする。
そして勝ち上がった4人で決勝となる旗取りをする。
どの組み合わせになるのかはくじ引きだった。
くじ引きの結果、うまくバーナードとは別の組になった。
ひとまず決勝まで上がることができそう、そう思ってバーナードを見ると軽くウインクを返してきた。
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