祖父譲りの正義感6
ハーレムパーティーのすけこまし野郎。
もうずっと竜人化した姿でいようかと思えるほど不名誉なあだ名を頂いた。
人の噂が広まるのは早い。
同じパーティーの女を妊娠させた挙句出産するまで放置、パーティーから切り捨てて逃げ出したクズ野郎がいると驚くほどの早さで話が広まった。
面白半分、というかほとんど面白いから誇張して話された噂話が、人を渡るたびに誇張されていき、リュードは各地に妻と大勢の子を抱えることになった。
話が伝わる中でリュードの容姿についてはボヤけていって黒髪長身のイケメンという薄い表面的なものになったのだが、リュードの特徴としては間違っていない。
つまりはリュードを見ては、あの話知ってるか?なんてリュードが異国の姫とねんごろになっているような話をヒソヒソとされることになった。
リュードが本人だと気づかれなくてもリュードの見た目から話を想起される。
生まれて初めて女性に手を上げたくなった。
そんな気持ちをリュードに初めて抱かせたアリアセンに引き連れられてリュードはデタルトスのお城に来ていた。
デタルトスにもお城があった。
これは元々海からの侵攻に対する防衛城であったものを長年侵略がなかったので今ではデタルトスの政治の中心として使い始めたものである。
村の生き残りの人々は村や家族を失った精神的なショックはあるものの、体は無事で心の方をゆっくりと時間をかけて治していくことになった。
王国のほうで保護して、村の再建をするなり他で暮らすなり当人たちの希望を聞いて今後を決めていくらしい。
奴隷商の男たちなのだが活動していたのはこのヘランド王国ではなかった。
元々の活動拠点はトキュネス。
金さえ払えば悪いことでも見逃してくれる領主がいて、そこを中心に活動していた。
しかし最近になってその領主が色々な罪で処刑となり、犯罪に対する取り締まりが非常に激しいものとなった。
なので少しでも敏感なものはいち早くトキュネスを抜け出していた。
奴隷商の男たちも上の判断に従ってトキュネスからヘランドに逃げてきた悪人たちだった。
逃げたのはいいけれど前金で奴隷の引き渡しを受けていた奴隷商は村を襲うという強硬手段に出たのであった。
森の洋館も仮拠点であって長居はするつもりはなく、奴隷の引き渡しに行くついでに引き払うつもりであった。
たまたまリュードたちが通りかかっていなかったら、村が壊滅させられて女子供が誘拐されたことにいつ気付いたのだろうか。
国王に報告は上げたので何かしらの動きはあるだろうとアリアセンは言っていた。
ひとまず今日デタルトスの城を訪れたのは依頼を終えるためだった。
遺品を置くためのスペースも確保したし早く案内の仕事を終えたいアリアセンにせっつかれた。
せっせと遺品を出しながらアリアセンが奴隷商についてのことを話してくれたのだ。
村人たちの今後はともかく犯罪者が流れてきているなんてよそ者に言っちゃダメじゃないかと思ったけれど気になっていたことでもあるのでちゃっかり聞いてしまった。
まさかトキュネスでの出来事がこんな影響を与えているとは思いもしなかった。
そして改めてキンミッコがどんな人間だったのかもよく分かった。
前払いで村1つ分の奴隷が必要な相手とは何者か。
妙な引っ掛かりを感じたけれど奴隷商たちの調査は続いているし、アリアセンが直接の担当ではないのでこれ以上の情報はなかった。
デタルトス周辺の人が多く亡くなったというのはウソではなかった。
全体の7割ほどの遺品がここデタルトスに運ばれた。
血縁者や子孫などが見つかった人は連絡が行って遺品を受け取るか聞かれる。
家が断絶してしまっていたり血縁者が見つからなかった人の遺品は国の方で供養してくれる。
「ありがとう……。
私は国の代表ではないけどきっとみんなあなたに感謝してると思うから、代わりに感謝を伝えさせて」
「俺はただ遺品を届けただけさ」
依頼書に完了のサインをもらう。
報酬は国からもらうことになっているのでそのままアリアセンから貰った。
依頼書は冒険者ギルドに持っていけば依頼遂行の実績になる。
「いろいろあったけどあなたたちとの時間、楽しかったわ。
冒険者と国の騎士は立場が違うからもう会うこともないと思うけどこれからも冒険者として頑張ってね」
俺はあんまり楽しくなかった。
「ああ、アリアセンもおじいちゃんに追いつけるように頑張れよ」
喉元まで出かかった言葉を抑え込んでリュードはアリアセンと別れの握手を交わした。
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