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祖父譲りの正義感3

「ぐ、ぐぞ! お前一体何者なんだよ!」


「うるさい、質問するのは俺だ」


 涙目で顔を上げた男にリュードは剣を突きつける。


「な、何がしたいんだ!」


「村をこんなにふうにしたのはお前か?」


「村?


 ……ああそうさ、俺と俺の仲間がやったのさ!


 まだ近くに俺の仲間がわんさかいる。

 こんなことをしてただで済むと……」


「関係ないことを話すな」


「ぎゃああああ!」


 男の体に電撃が走る。

 リュードが放った魔法である。


「お前たちは奴隷商か?」


「誰がそんなことを……そ、そうだ!


 俺は奴隷商人に雇われて働いている!」


 リュードが手に電撃を走らせて脅すと男はあっさりと口を割る。


「仲間は本当に近くにいるのか?」


「……いや、もう拠点に帰っているだろうよ」


「お前は何してたんだ?」


「見つけたもん他の奴に取られんのが嫌で隠してたんだ。

 それを取りに来てた」


「お前たちの拠点はどこにある?」


「そんなもん言うわけ……ぎゃああああ!」


「言え」


 再び電撃を食らって男はふらつく。


「クソっ……死ねぇ!」


 好き勝手にやられてたまるか。

 そんな思いで男は剣を抜いてリュードに切りかかる。


 こんな程度の速度遅すぎる。

 奇襲されたとしても対処が出来そうな攻撃なのに、抜き身の剣を持って目の前にいる状況で男が敵うはずもなかった。


 話を聞き出したいからあえて殴打で対応したり出力を落とした魔法で攻撃したりしていたのに、仲間がいると脅しかけたり反撃までしてくる。

 もはやリュードの中に男に対する慈悲の心はない。


 男とは比べ物にならない早さで剣を振ったリュード。


「はぁ……腕? 腕がァァァ!」


 剣を持っていた右腕の先が消えた。

 ドサリと音が聞こえて状況が理解もできないままに男は痛みにのたうち回る。


「これが最後のチャンスだ。


 拠点はどこにある?」


 あまりの素早さに血すらついていない黒い剣の切っ先を男に突きつける。


「分かった、案内する!


 だから命だけは助けてくれ!」


「……いいだろう。2人とも出てくるんだ」


 ルフォンとアリアセンがそれぞれ男の後ろの方から出てくる。

 仮に男が多少の手練でリュードの隙をついて逃げ出せたとしても2人が待機していた。


 どの道捕まっていたことになる。

 むしろリュードより容赦のない2人だから捕まえるのではなくそのまま切り捨てられていたかもしれない。


 リュードの対応はまだ優しい方なのである。


 男の腕の止血だけをして敵の拠点に向かう。


「こ、この先にある館を拠点にしています」


「あれか……なんでこんな森の中にあんなデカい洋館が?」


「俺たちが建てたものではなく元々あったものでして、利用させてもらってました」


 森の中に大きな洋館があった。


「この国は戦争で急激に大きくなった過去があるから、以前にはここら辺の領主でも住んでいたのかもしれないな」


 それにしても大きく立派な洋館。

 しかし古くなっていて廃墟と呼べる雰囲気がある。


 まるでお化け屋敷のような見た目をしている。


「本当にここに入るのか?」


 洋館を見てアリアセンの勢いが減じる。

 あんなに怒りに震えていたのにいきなりどうしたというのだ。


「……怖いのか?」


「怖かなーいやーい……」


 しりすぼみになる言葉尻。

 アンデッド系の魔物、いわゆるお化けを苦手とする人は少なからず存在する。


 実際にスケルトンを見た時リュードもギョッとした。

 ルフォンは全くの平気みたいだけどアリアセンはそうでもないようである。


 確かに洋館はおどろおどろしい雰囲気がある。

 夜はいつの間にか明けてきて朝日が差しているのだがそれでもさわやかに見えない。


 リュードだって用事がなければ避けて通りたいほどの重たい雰囲気が漂っている。

 だからこそ悪人たちに目をつけられて使われているのだろう。


「おい、誘拐した人たちはどこに閉じ込められてるんだ」


 顔色の悪いアリアセン以上に血の気の無くなっている男に剣を突きつける。


 もちろん顔色が悪いのはアリアセンとは異なる理由。

 このまま解放したとて、この男生きていられるだろうか。


「この屋敷、地下がありまして、そこに閉じ込められているはずです。


 奥に階段がありまして、そこから地下に行けまして、そこの地下の部屋にいると、思います」


 地下に閉じ込められているとは厄介な話。

 どこかの部屋ならこっそりと助け出せる可能性もあったのだが、見張りもいるだろうし地下にいるならまず見つからずに助け出すのは不可能だ。


「中には何人ぐらいいる?」


「3、40人ほど……」


 段々と男の反応が悪くなっていく。

 限界が近い。


「分かった。


 もう行け。治療の当てがあるなら早くするんだな」


「ありがとうございます」


 これ以上付き合わせると本当に目の前で死んでしまう。


 このまま仲間に知らせに行く可能性もあるが拠点場所までバラしている男は裏切り者になる。

 リュードたちを上手く片付けられたとしてもその後責任は追求されることになる。


 そうなったら男はタダではすまない。

 きっと戻ることなどないと踏んでいる。


 生きているならどこかに逃げ去るはずである。


 屋敷の様子をうかがいながらリュードは考える。


 40人がいっぺんに襲いかかってきたら無傷で切り抜けるのは難しい。

 多少のケガを覚悟しなきゃいけないし、アリアセンの無事は保証出来ない。


 洋館の中の1ヶ所に固まっているとは考えにくいが一人一人別々に洋館の中にいるとも考えにくい。

 よほど運良く上手くやらないと結局集まってきてしまうことになる。


 集まってくるだけならいいが問題は誘拐された人たちである。

 人質にされたり、証拠隠滅を図って皆殺しや火を放たれるなんてことがあるとリュードたちでは対応しきれなくなる。


 被害を出さないようにしながら奴隷商たちを屋敷から追い出す方法。

 アリアセンとルフォンも頭をひねってくれればいいのに、どうにも考えるのが苦手なのか2人はリュードからいい考えが出てくるのを待っている。


「うーん……本当はこんなことのために使うもんじゃないんだけどな」


 作戦は思いついた。

 なんでいきなりそれが頭の中に思い浮かんだのか不明だが悪くない作戦だと思う。


 リュードが作戦を2人に伝える。


 ルフォンがリュードの発言に対して珍しく渋い顔をする。


 ダメとか不可能な作戦ではない。

 ならどうしてルフォンが嫌な顔をするのか。


 リュードはそれを荷物から取り出してニヤリと笑う。


「まあ、使える時に使う、それが1番の使い道だからな」


 ーーーーー


 人が来るだなんて考えてもいない連中は見張りを立てることもしない。

 攻略する側としてはありがたい話なのだが不用心すぎる。


 あるいは40人もいてそんな役割の人がいないわけもないので、見張りをサボっているのかもしれない。


 3人はそれぞれ分かれて洋館に接近していた。

 気配を消して窓から中を覗き、人がいないことを確認していなければ鍵もかかっていない窓を開けて、それを投げ入れる。


 そして窓はちゃんと閉めてグルリと1周3人で手分けして投げ入れられるところ全てに同じく投げ入れた。


 玄関には太い木の枝を取手に挟み込んで開かないようにしておいた。


 効果はすぐに出始めた。

 玄関のドアを叩く音と何かしらの怒号が聞こえてくる。


 やがて玄関が開かないと分かると玄関から出ることを諦める。


 別に鍵もかかってないから開けりゃいいのに窓から椅子が飛び出してくる。

 そうして開けた窓から男たちが我先にと飛び出してきた。


 涙目で酷く咳き込み、慌てて新鮮な空気を求めて大きく息を吸う。


 リュードたちが家の中に投げ込んでいたのは村を出る時に村長に貰った魔物避けの臭い玉だった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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