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思いを返しに3

「マクフェウスさんは凄いお方でしたよ」


 慰めにはならないかもしれない。

 それでもリュードはガイデンが人としての自我を保っていたこと。

 最後はリュードと戦って武人として死んだことを伝えた。


 室内がシンとなる。


「……私、頭を冷やしてくる」


 アリアセンが思い詰めたような顔をして部屋を出ていった。


「……私が父の事を英雄のように語りすぎてしまいました。

 あの子は父の、ガイデンの見えない背中を追いかけているのです」


「お姉ちゃんを、泣かせたのは、誰だ!」


 アリアセンと入れ替わるように青い髪の少女が入ってきた。


「エリエス!」


「あっ」


「あっ」


 リュードとエリエスの目が合い、お互いに気の抜けた声を出す。

 エリエスはつい先日リュードたちをこっそりと付けていたあの少女であった。


 次にエリエスの視線は父親に移る。

 全く予想していなかった人物が多くてエリエスは状況把握が出来ていない。


「なんでお父さんがここにいるの?」


「私は呼ばれて来たんだ。


 お前こそなぜここにいる?」


 他人の空似にしては似すぎている。

 そんな風に思っていたのだが他人の空似ではなかった。


 アリアセンとエリエスは姉妹で、ということはアリアセンの父親はエリエスの父親でもある。

 貴族ならそんなこともないこともあるかもだけど皆鮮やかな青い髪をしている。


 他人だとしても血縁関係には絶対にあると断言はできる。


 ガイデンも生前は青い髪だったのだろうか。


「あー、失礼しまし……」


「待ちなさい!


 シューナリュードさん、ありがとうございました」


 エリエスは父親に引きずられるようにしてどっかに連れていかれてしまった。


「お呼びしたのはこちらなのにお騒がせしてしまい、申し訳ございません」


「こんな話を聞けば動揺してしまうのは当然ですよ」


 聞くところによると王様も手紙を読んだせいなのか体調を崩してしまったらしい。

 死の知らせを聞いて涙を堪えられなかったぐらいなので手紙を読んでさらに感情が揺さぶられてしまったのだろう。


 王様だろうと1人の人間。

 親しかった相手の突然の話に何も思わない方が難しい。


「今日お呼びしましたのは他でもありません、1つご依頼があるのですがこれから何かご予定などありますか?」


「依頼ですか? 特に予定はないですよ」


「そうですか。


 名簿を確認して分かったのですが亡くなった者の多くがここよりも南にあります港湾都市のデタルトスかその周辺の者なのです。


 ですのでわざわざこちらに来ていただくよりもデタルトスに遺品を運んだ方がスムーズに遺族に遺品を返せます。

 ですがお持ちになられた遺品は中々の量でございまして……


 運ぶのも一苦労でございます。


 そこでシューナリュード様にお力添えいただければと思いまして」


 要するにリュードというよりもリュードの持つマジックボックスの袋が使いたいのだ。


 改めて出した荷物はものすごく量が多かった。

 入れる時はスケルトンたちがせっせと入れてくれたので量が多いことを意識していなかった。


 なので出して初めてげんなりする量があると分かった。


「冒険者ギルドを経由して、直接指名という形でご依頼を出します。


 こうしますと冒険者としての実績にも反映されます。


 受けていただけますか?」


 面倒なので袋だけでも渡すかなんて思っているとファランドールが先に条件を書いた紙をリュードに差し出す。


 実績になるなら悪くない。

 提示されて金額も荷物をは袋に入れて運んでいくだけにしては破格の金額である。


「実は他にも仲間がいまして、相談する時間をいただいてもよろしいですか?」


 南の都市には行くつもりではあった。

 楽でいい稼ぎにもなって実績にもなる。


 この依頼に今のところ断る要素がない。


 けれども今はルフォンと2人で旅をしているのではない。

 答えは分かりきっている気がしないでもないけれど相談して意見は聞かなければいけない。


 3人の判断しだいではこのままここに残って冒険者として活動するなんて話も有り得ないことでない。

 ほとんどそんな判断をする可能性は無いとしてもゼロじゃない。


「ええ、もちろんですよ。

 お受けになるならお仲間様の実績にもなりますのでよろしければ是非」


 遺品を返してやることは約束なので出来るだけ手伝ってやりたい。

 リュードたちが王城を出て宿に帰るとエミナたちもすでに宿に帰っていた。


 今日受けた依頼は早めに終わったようで部屋で各々くつろいでいた。


 心配だったエミナも依頼の回数を重ねていくと落ち着いてきて安定してきた。

 連携も取れ始めてダカンも燃える可能性がグッと減った。


 3人は喧嘩も無く、次にどう動くべきかなど話し合って互いに高めあっていた。

 低ランク帯の依頼なら危険も少なくこなせるだけの動きを3人は見せていた。


 休んでいた3人を集めて細かな事情を話すことなくこんな依頼が舞い込んできたと言ってどうするかを問う。


 3人からすぐに行くと二つ返事で返ってきて、完全に事前の想定通りの展開になった。


 さっそく次の日に王城に向かってファランドールに依頼を受けることを伝えた。

 てっきり冒険者ギルドに行くと思っていたエミナたちはビビっていたけれど面白そうなのでわざと伝えなかったのが功を奏した。


 一応ギルドを経由していることになっているのでギルドの印があるなら依頼書にサインをして依頼の受諾となった。

 依頼を受けたのだがギルドのギの字もないほどにギルドには行っていない。


 これでも実績としてカウントされるのなら言うことは無い。


「どんなことをしたら王様から直接指名で依頼が舞い込んでくるんですか……?」


 失礼がないようにとファランドールに縮こまるエミナは疑いの目をリュードに向けていたけど、やがてため息をついた。


 これがきっとリュードの言っていた用事に関することなのだろうと今気づいた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 亡くなった彼らは王族の随伴で任務に出ていた訳だし、王宮から使者を出して慰霊会みたいな物でもやれば良さそうだよね。
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