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それぞれの結末4

「ただし、助けてやらないこともない」


「本当か! どうすればいい!」


「近寄るな。


 みんな、入ってくるんだ」


 すがってこようとするキンミッコに剣を向けて、セードは声をかけた。

 エミナやヤノチ、リュードにルフォン、マザキシとダカンが部屋に入ってきた。


「き、貴様!」


 キンミッコの目にまず入ってきたのはリュード。

 あえて竜人化をした姿をして入ってきたのであった。


 エミナを連れ去った英雄を名乗る謎の者はやはり仲間であったのかとキンミッコが怒りに震える。


「言っただろ? お前には天罰が下ると」


「く、くそぅ……」


 キンミッコの顔が赤くなり、すぐに青くなる。

 まさしく言った通りになった。


 怒りたいが腕を切られた時に失った血が多くて、怒ると頭がクラクラしてしまう。

 ここで怒りをぶつけても相手にいいようにされた事実は変わらない。


 助かるかもしれないこの状況では声を荒げるのは得策でもない。


 キンミッコはうなだれた。

 リュードが誰で、どんな関係のやつだったのか一気にどうでもよくなった。


 血が足りなくて思考力も落ちている。


「被害を受けたのは何も僕だけじゃない。


 パノンの娘さんや僕の妹も当然被害者だ。


 もし、彼女たちが貴様を許すというなら、息子の命ぐらいは助けるように口添えしてやってもいい」


「ほ、本当か!?」


 キンミッコはすぐに2人に視線を向ける。

 必死に助けを求める父親の目、ではなく2人には濁っていてゴブリンのような目にしか見えていない。


 隣同士に立つ2人の手が触れて、握り合う。


「私はあなたを許しません」


 まず口に出したのはヤノチ。

 キンミッコの目を見てハッキリと切り捨てた。


 キンミッコの瞳が動揺に揺れて、最後の希望であるエミナにのみ向けられる。


「私は……」


 息が詰まって言葉が出てこない。

 ヤノチが先に答えてしまったのでキンミッコの命はエミナに握られることになった。


 切羽詰まったように戦いの中で人の命を奪うのとはまた違う。

 命の選択。


 やらなきゃやられるのではなく、一方的に相手の命を生かすも殺すもできる。


 こんなことならヤノチに乗っかって勢いで言ってしまえばよかった。


 答えは決まっているのに言い出せない。

 人の命を奪うことが急に怖くなって、そんな選択をしようとしている自分を周りがどう思うのかが怖くなって。


 周りというかリュードとルフォンがどう思うか。

 もしこの選択に引かれてしまったらと考えると苦しくなってくる。


「はい?」


「えいっ」


「……はい?」


 肩を叩かれて振り返ったエミナの頬にルフォンの指が刺さる。

 古典的ないたずら。


「大丈夫だよ」


 ジッとエミナの目を見てルフォンが言う。

 ルフォンの目は優しくて、それ以上言わなくても何が言いたいのか伝わってくる。


「リュードさん……」


 逆側に振り返るとリュードがいる。


「大切なのはどうしたいか、だ。


 それにエミナがどんな選択をしても、俺たちはエミナの味方だ」


 流石にひどく拷問でもしろなんて言い出したら止めるけど基本的にはエミナの考えを尊重する。


 こんな場だから言わないだけでリュードもルフォンさっさとヤってしまえなんて思っていたりもする。

 泣きそうになって口をグッと結ぶ。


 そうだ。

 こんなことで嫌いになってくれる人たちじゃなかった。


「私もあなたを許せません」


 苦しくて死んでしまい日々だった。

 父親が不名誉を背負って死に、母親が心労で追いかけるように亡くなった。

 2人がいなくなった後の中傷の石はエミナに投げられた。


 1人でも、どこでも生きていけるようにと祖母が冒険者学校に送り出してくれた。

 こんなことでもして、目標を見つけなかったらダメになっていたかもしれない。


 ただ、少しだけ、ほんの少しだけ感謝しているところもある。


 リュードとルフォンに出会えたことだ。

 きっと何事もなくそのまま暮らしていたのなら出会うことのなかった2人。


 この出会いは何物にも代え難い宝物である。


 こんな人生を歩んできたけれどこんな人生だからこそ出会えた。


 だからほんの少しだけ感謝はしている。


 でも。


「私はあなたの全てが許すことができません」


 この男は手に入れた全てを失うべきなのだ。

 息子も甘やかれて育ったクズ野郎だったので助けてやりたいと思う気持ちも全くなかった。


「私は……私は…………」


 涙が溢れて止まらなくなった。


 子供のように泣いた。


 セードが腕を振り上げて剣の柄でキンミッコを殴りつけて気を失わせて何処かに連れていった。


 ヤノチもエミナに釣られてか、同じように泣き出した。


 同じ傷を持つ2人は、互いに慰め合うようにしながら疲れ果てるまで泣いた。


 パノンとミエバシオは互いを認め合っていた。

 和平がなり、平和な時代が来たら自分の息子と娘を結婚させようなんて話まであった。


 少し違った結末を迎えていたならばエミナとヤノチは姉妹になっていたかもしれない。


 誰も知らない話。

 迎えた結末は異なるものであったのだが。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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