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飯にも潤いを1

 イマリカラツトはルーロニアの北側と国境を共にする小国の1つ。

 ルート的には通らなくても良い国ではあるのだがとある名物がありリュードたちは立ち寄ることにした。


 名物に1番乗り気なのはリュードでイマリカラツトに寄ることもリュードの希望であって、エミナたちはそれに従っている形である。


「なんで!」


 名物を楽しみにイマリカラツトの大都市ストグまで来ていたのだが肝心の名物がどこにもない。

 一年中あるはずのものなのに、どこに行っても誰に聞いても無いと言われてしまった。


 まずは名物を、と思っていたのに完全に当てが外れて先に宿を取ることになった。


「落ち込まないで、リューちゃん」


「元気出してくださいよ、こういうこともありますって」


 宿の人にも訊ねてみたのだが困ったような顔をされて他と同じ返事が返ってきた。


 思わず部屋で叫んでしまう。


 まさか魔人族には売らないだとか町を上げての決まりでもあるのだろうかと疑いたくなる。

 町の人も困っていると言っていたのでリュードが原因ではないのだけれど疑心暗鬼にもなりたくなるほどに無いと言われ続けた。


「情報収集だな」


 2人の言う通り部屋でウジウジしていても原因は分からないし状況は改善しない。

 ただ無いですとだけ言われても引っ込みもつかないので理由ぐらい知りたい。


 リュードたちは冒険者ギルドに向かった。


 基本的に情報とは人の寄る場所に集まるものだ。

 冒険者ギルドは様々な人が集まり情報を交換する場でもあるので名物がない理由ぐらい分かる。


 そもそも名物がないなんて話をみんながしない方がおかしいので確実に情報はあるだろう。


「なんだか人が多いな」


「ホントだね」


 イマリカラツト自体は小国なのだがストグはイマリカラツトの首都を除けば中心的な大都市であり、名物も含めた豊かな農業を軸に交易が盛んで近くの大きな国の都市と比べても遜色ない。


 隣接する他の小国群にもある冒険者ギルドの統括的な立場でもあるストグの冒険者ギルドは普通に大きいものであった。

 にも関わらず冒険者ギルドには人が集まっていて少し息苦しさを感じるほどであった。


「おい、何かあったのか?」


 手近にいた人を捕まえて事の次第を聞く。


「あ? あーなんでもボーノボアの進化種が現れてボーノボアを統率し始めたらしいんだ。

 おかげでギルドから大規模討伐の依頼が出てんだよ。


 ったく、こうならないように管理してたってのに何してんだか……」


「へぇ、ありがとう」


「おう、まだ依頼は人募集してるから興味あるなら聞いてみなよ」


 無い名物。活気のない町。人が集まったギルド。

 そして今聞いた進化種の話。


 話が見えた。


 100%その進化種がこの町の状態の原因であり、町の人は観光客が不安がらないように口を閉ざしていたのだ。


「まさかですけど参加するつもりじゃないですよね?」


「……エミナ、俺たちは何者だ?」


「何者って何ですか?」


「俺たちは冒険者だ」


「そうですね」


「冒険者ってなんだ?」


「なんだって何ですか……」


「困っている人がいたら助け、魔物がいたら討伐する、それが冒険者じゃないか?


 今目の前に困っている人がいて、魔物が原因なんだ。

 俺たちがやらずして誰がやると言うんだ」


 冒険者はそんな崇高な職業じゃない。

 エミナが呆れ顔をしているがやると決めたリュードを止めることはできない。


 どっちにしろリュードがやるならルフォンもやるし2人がやるならエミナも1人でやらないわけにはいかないのだ。


「まあ、それにそろそろ体動かしておかないと鈍っちゃうからな」


「そうだね!」


「私は戦わなくていいならその方が……」


 旅の道中しっかり警戒もしているおかげか魔物には遭遇しなかった。

 元より道を歩く分にはそんなに魔物も襲いかかってくることもない。


 視界が開けた道の上では魔物は優位性がないし人は魔物にとって厄介な相手なのでわざわざ突っかかってくることもない。

 道を外れてナワバリに入っていけばその限りでないが道にかかってナワバリを広げることは少ないのだ。


 もちろん何もしていないのではなく素振りなんかをしていたりはするのだが、もうちょっと相手を立てて動き回りたい感じが出てきていた。

 ルフォンも同様で、反対意見はエミナだけ。


 決まっていたようなものだけど一応多数決的にも参加の賛成多数となった。

 一見すると多数決ならエミナが不利と思われがちだがお店を決めたりすることなんかでは普通に女の子同盟があるのでなんでもリュードの意見が通るわけでもない。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。

 今日はなんの御用ですか?」


「大規模討伐の依頼があると聞いてきました」


「はい、現在グレートボアとその支配下にあるボーノボアの大規模討伐の依頼がございます。

 まだ参加受け付けておりますが受けられますか?」


「はい、参加しようと思います」


「討伐の開始は2日後の朝になります。


 大規模討伐ですので他の冒険者との共闘依頼になりますが大丈夫でしょうか?」


「大丈夫です」


「それでは冒険者証の提示をお願いします」


 3人が冒険者証を出して受付が名前とランクを確認して記入する。


「アイアン+ランクのシューナリュード様、ルフォン様、エミナ様ですね。


 これでご依頼の申込は完了となります。

 今一度確認となりますが討伐は2日後の朝になりますのでよろしくお願いします。


 他に何かご依頼は受けていかれますか?」


「いえ、今はいいです。


 それよりも地図を見せてほしいのですが」


 もちろんのこと、これから先の旅のことも忘れていない。

 ルーロニアのギルドで売っていた地図はイマリカラツトからちょっと西側の国に入ったところぐらいまでの地図だったのでここでちゃんと西側の国の道が確認できる地図が必要になる。


 お金はかかるけどついでにイマリカラツト周辺の小国群の地図も買う。


 大規模討伐に2日もあるならまた地図とにらめっこするには十分な時間である。


 ついでにまずは旅の消耗品なりの補給をしようと冒険者ギルドを出てお店に行った。

 改めてグレートボアのことを聞いてから町の人を見るとどことなる不安げに見えるから不思議なものだ。


「うーん……これはちょっと」


「いや、悪いね。

 品物がくる北と東の街道を魔物に占拠されちゃってね。


 私たちとしてもお安く良いものを売りたいんだけど品物が入ってこないんじゃどうしようもない」


 買い物にお店に入ってみると意外なところに影響があった。

 お店に置いてある品物がことごとく高い。


 しかも品質も良くないのである。


 件のグレートボアのせいで物流が滞り、商品が入ってこないので値段がどこも高騰していた。


「あれじゃちょっとな」


 良いものはもうすでに買われてしまっていて無い。

 妥協して残っているものを買おうにも値段と釣り合わないのだ。


 急ぐ旅でもないので品質の良くないものを高値で買う必要はないと店を出た。

 謝り通しの店員が不憫でならなかった。


 グレートボアの討伐を終えれば物流が回復してすぐにでも適正な値段に戻るだろう。

 買い物はそれからでも遅くはない。


 念のためといくつか店を回ってみたけれどどこの店も同じような状況で結局消耗品の補充は諦めることとなった。


 これでグレートボアをやる理由が1つ増えたとリュードは思った。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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