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冒険者学校3

 大人数で挑めば難易度は下がり、攻略は簡単になる。

 つまり成績評価も相対的に低いものになる。

 最低人数の3人でしっかりとクリアするところを見せつけられれば自ずと評価は高いものになる。


 なのでリュードとルフォンの2人に誰か引き入れるなら1人がいいのである。


 最悪の場合は2人でも許容できるけれどまだ時間の余裕があるのでできる限り1人の人を探すのがよい。

 これまで合格も優秀点も多い。


 実戦訓練が無難でも成績優秀な気がしないでもない。

 どうせやるなら最後まで優秀のままいきたいけど。


「けどなぁ……」


 人を探すと言っても楽ではない。


 それなりの学校生活で周りは周りで仲良くなっていた。

 それに比べてリュードとルフォンは2人だけでいつも一緒。


 非友好的なつもりは一切ないのに誰も話しかけてもこない。

 初日のキスズインパクトが強すぎたのかもしれないと今更ながら反省する。


 目ぼしそうなものはすでにグループなり親そうな友達とくんでいる。


 実戦訓練では連携なんかも見られるので適当なやつを連れて行って置き去りにして戦うわけにもいかない。

 おそらく優秀点で見ると優先的に入れるはずなのだが必要な条件をクリアするのに苦労しそう。


 実は話しかけてきた奴がいないこともない。

 それは大体がルフォン目当てだったので当然の如くそんな奴らは却下である。


 しかもパーティーのバランスも考えなくてはいけない。

 ルフォンは当然前衛になるし、リュードも基本は前衛なので引き入れたい人材は後衛になる。


 リュードは魔法も使えるので後衛でもいいといえばいい。

 教師はリュードを前衛で剣を振るタイプだと思っているから魔法を使ってみせて意外性をアピールするのも悪くはない。


「うーん……」


 悩んでみても答えは出ない。

 とりあえず1人そうなのを捕まえて話でもしてみる他方法はない。


「ルフォンはどんな人がいい?」


 一時的にとはいえだ、パーティーを組むのだから出来るだけルフォンの希望にも沿えた人がいい。


「……リューちゃんに色目を使わない人かな?」


 さらっと言ってのけたわりにはスルーすべきか迷う怖い発言。


「あとはあんまり男の人だとイヤ、かな。

 それぐらいかな?」


 少ない条件には見えるけれど希望に沿えると性別の半分が選択肢から消える。


 女性の冒険者は最近増えてきているとは言っても男性と比較するとまだまだ少なく、冒険者学校でも女性の割合は2、3割ほどしかいない。

 冒険者学校の中で考えると7割ほどが選択肢から消えたことになる。


 自分が1人の女の子に絞って声をかけていたら、それは外から見たらただのナンパではないか?

 ふとそう思った。


 ただでさえルフォンを独占している変態野郎なんて変な話が立っているのに女好きみたいな扱いをされるのは勘弁願いたい。


 これはサンセール一行が嫉妬で流した噂、というか単なる悪口が独り歩きしたものだった。

 リュードは噂の発生源は知りもしないが噂の内容は耳がいいのでちょいちょい聞こえたりしていた。


「はぁ、とりあえず帰ろう」


「ため息ついちゃダメだよ?」


 もう授業は終わり、人はいない。

 教室での作戦会議も良いアイデアはでなかった。


 切り替えて晩御飯の話でもしながら教室を出た。


「きゃっ!」


 誰もいない教室に入ってくる人なんていないと思って油断していた。

 リュードたちと入れ違いに教室に入ってこようとした人とリュードがぶつかってしまった。


 確かこんなこと前にもあったなとデジャブを感じる。


「ごめん、大丈夫?」


「ごめんなさい……てっきりもう誰もいないと思って」


 尻もちをついた女の子にリュードが手を差し出す。


「あれ、君……」


「あっ、あなたはあの時の」


 本当にデジャブだ。


 ぶつかったのは前に教科書を買いに行った書店の出入り口でぶつかった子であった。

 女の子の方もリュードを覚えていた。


 同じ人に2度もぶつかってしまった恥ずかしさで顔が赤くなる。


 光の当たり具合によっては深い藍色にも見える髪、クリクリした大きな目が特徴的な可愛らしい少女。

 体格は小柄でルフォンよりも小さくリュードを前にすると小動物のよう。


「書店でぶつか……会いましたね。ええと……」


「俺はリュード、こっちはルフォン」


「リュードさんにルフォンさんですね。私はエミナと言います。


 何回もぶつかってしまってほんとごめんなさい」


「いやいや、俺も注意不足だったからお互い様だよ」


 ぶつかってしまったことにどちらが悪いとか言ってもしょうがない。


「人のいないの教室にそんなもの持って何の用?」


 ルフォンが当然疑問を口にする。

 そんなものとはエミナは今ホウキを持っていた。


 学校だし魔法を使うための補助道具として杖を使うことはあるけどホウキを使うことはまずない。

 空を飛ぶ道具として使うこともない。


「あ、これはお掃除するためです」


「掃除?」


 ルフォンが首をひねる。掃除が何なのか分からないということではない。

 何でエミナが掃除をしているのかが分からないのである。


「はい、私もここに通ってるんですがあんまりお金がなくて。

 冒険者学校卒業後に冒険者として活動したお金から天引きで返済するのと同時にこんな風に冒険者学校の雑用をこなして支援してもらうことも出来るんです」


 エミナは朝と学校終わりに掃除を手伝い学費の軽減と多少のお金の支援などを受けていた。


「雑魚寝を嫌がって宿なんてとらなきゃもっと余裕あるんですけどね」


 あははと笑ってエミナが頭を掻く。


「何か手伝おっか」


「えっ? いいですよ、そんなこと」


「いいのいいの、リューちゃんがぶつかっちゃったお詫び」


 エミナからホウキを奪って床を掃き始めるルフォン。


「あ、あれ?」


「諦めろ、受け入れて掃除をした方が早いぞ。


 俺も手伝うから、何をしたらいい?」


 思いつきの突拍子もない行動だけどこうしたところもルフォンの良いところである。


 教室が最後の掃除場所だったのでリュードとルフォンの手伝いもあって掃除はさっさと終わった。

 冒険者学校を出てから向かう方向が同じということでエミナも途中まで一緒に帰ることになった。


 帰りながらエミナのことを聞く。

 エミナはこの国の出身ではなく他の国から来ていた。


 どうにか自分の力で生計を立てたくて冒険者になるために冒険者学校に来た。

 最初は宿に泊まるつもりはなくて雑魚寝で我慢するつもりだったのだが先にいた人たちがちょっとよろしくなく宿に泊まることにした。


「情けないですよね。冒険者になろうっていうのに他の人と寝るの我慢できないなんて」


 伏し目がちにエミナは言ったけれどリュードたちも雑魚寝を聞いただけで嫌がったので何も言えなかった。 


 その後もエミナと教師の悪口なんかを言いながら歩いているとリュードたちが泊まっている宿に着いた。


「ここが私が泊まっているところです……って何ですかその顔?」


 思わず笑ってしまう。

 不思議な偶然もあるものだ。


 エミナが泊まっている宿とリュードたちが泊まっている宿は同じであった。


 エミナは掃除のためにリュードたちよりも早くに宿を出発していたので会うことがなくて知らなかった。


「珍しい組み合わせだね」


 一緒に入ってきたリュードとルフォンとエミナを見ておばちゃんが不思議そうな顔をする。


「まあ、色々あってね」


 リュードが肩をすくめてみせる。

 2回ぶつかって、同じ冒険者学校に通っていて、実は同じ宿に泊まっていた。


 まさしく色々である。


「夜ご飯はどうするかい?」


「エミナちゃん一緒に食べない?」


 どうにもルフォンはエミナを気に入ったようだ。


「じゃあご一緒させてください」


「おっ、いつも1人だったエミナにもとうとう友達ができたのかい」


「マチルダさん……」


 マチルダは宿のおばちゃんのことである。


 エミナがぼっちだったと明かされて気まずそうにリュードたちを見る。

 リュードたちはそんなこと気にしないのでルフォンはお友達ですなんておばちゃんに返している。


「エミナは実戦訓練はどうするんだ?」


 これはチャンスなのではないかと思いリュードが質問する。


「はは……私は友達もいませんし、まだ誘われてもいなくて。

 一応実戦訓練には参加できる数の合格は得てるんですけどね……」


 チラリとルフォンに視線を送るとルフォンも同じことを考えていてうなずく。


「どうだ、他に誘いがなさそうなら俺たちと実戦訓練に参加しないか?」


 エミナはちょうど1人。しかも魔法使いなので後衛。

 女の子であり、ルフォンもエミナのことは気に入っている。


 完璧すぎるぐらいに条件に当てはまる人物。


「エエッ!? 私でいいんですか?」


 驚きを隠せないエミナ。


 エミナも初日の戦闘訓練の様子を見ていた。

 ルフォンの強さはもちろんだったし、ルフォンがウソをつく人物に見えないのでリュードもとても強いのだと純粋に思った。


 他の授業もそつなくこなして全体的な能力の高さを見せつけている2人だった。


 誘われたのは嬉しいけど足を引っ張らないか不安が胸をチクリと刺す。


「返事は今すぐじゃなくてもいいんだ。

 もう何日か考えても……」


「い、いえ! 私でよければ参加させてください!」


 時間を空けるときっと不安で断ってしまう。

 エミナはテーブルにぶつけそうなほど頭を下げて参加を申し出た。


 エミナは真面目で戦闘訓練やサバイバルに関しては合格のみだがそれ以外に関しては優秀点ももらっていた。

 成績について2人の足を引っ張ることはない。


 戦いに関する若干の不安はあるものの成績は申し分なく、良縁あってパーティーの結成となった。


「よろしくね」


「はい、よろしくお願いします!」


 女の子に声をかけまわる必要がなくなってリュードはホッとしていた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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