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強烈な売り込みのワケ2

「弟が病気で、町のお医者様じゃ何も分からないって……」


 少女の目から涙が溢れた。

 涙を拭う少女の服の袖はだいぶくたびれているように見える。


 あまりお金がありそうには思えない。

 学ぶのが難しい世界であるので医者の人数は少なく、実力にも差が大きい。


 さらに少ないために医者にかかるのも高い。

 教会に治してもらうという選択肢もあるけれどこちらもお金がかかるし、単純でわかりやすいケガと違って原因の分からない病気の治療は費用がかさむ。


 結局教会で治してもらうと原因が分からないままに治してもらうことにもなる。

 町医者ではレベルが低いことも多い。


 なので病気について診察して分からないなんてこともままあるのである。

 真魔大戦で医学的な知識が失われたりしたことも影響はあるだろう。


 このような町に医者がいるだけ立派だけど力及ばなかったようだ。

 この少女は町医者ではダメなのでもっと大きな都市の医者に連れていこうと考えているようだ。


 医者に簡単に原因がわからない病気だと教会も大きなところに行って高いお金を払わなきゃいけないので医者でも教会でも変わらない。

 どちらにしてもお金は必要になる。


 治療費だけでなく、病人である弟を連れていく必要経費もかかる。

 大きな町まで運ぶ輸送代やそれまでの食費、護衛を雇ったり宿泊費なんかも捻出せねばならない。


 近くで治せないとかかるお金は爆発的に多くなる。


「親は?」


「……父がいるのですが長いこと帰ってきていなくて。


 父がいない今ではたった1人の家族なんです……


 でもお金を稼ぐ方法なんてこれぐらいしか!」


 正直なところ少女の顔は可愛い方だ。

 もし仮にリュード以外に話を持ちかけていたなら少女のことを買っていた人もいることだろうと思う。


「リューちゃん……」


「リュード……」


 すでに完全に同情しているルフォンとラストの視線が突き刺さる。

 さっきまでリュードを誘惑するとは何事だと怒っていたのにそんなこと忘れたようである。


 テユノは冷静だなと思って見てみたら、なんとかしなさいよって目をしていた。

 もしかしたら父子家庭なテユノが1番同情しているのかもしれない。


「そうだな……その弟に会わせてくれないか?」


「えっ、どうしてですか?」


「お金を渡して医者に連れていくのもいいけど俺も診てみよう。


 自慢じゃないが薬を作ることが趣味なんだ」


 薬を作ることが趣味ってちょっと危なく聞こえるけど間違っていない。

 それにこちらには秘策もある。


 なんと聖者レベルの神聖力を持つコユキもいるのだ。

 コユキの神聖力なら大都市にある教会の聖職者よりも上な可能性の方が高い。


 多少の病気程度なら治してしまうことわけがない。


「もしダメだったら君を買うことだって考えるさ」


「ほ、本当ですか!」


 ダメだったらの話だ。

 リュードにも治せず、コユキにもダメならまず治すことは無理だろうけどそうなったらお金を渡してこの子が納得するまで治療を試してもらう他ない。


 治療できなかったらリュードに買われるというのに少女の顔は明るくなる。


「私はシーラと言います」


 病気なら治すのは早い方がいい。

 早速リュードたちはシーラの家に向かうことにした。


「どうしてリュードに声をかけたの?」


 こういった時に気軽に声をかけるられるのがラストの良いところ。

 サラッと気になっていた質問をラストはシーラにぶつけた。


 町には他にも人は大勢歩いていた。

 お金を持っていそうな人もいるし、何もリュードである必要などなかったはず。


 なぜリュードに声をかけてきたのか気になっていた。


「それは、か……」


「か?」


「顔が……カッコよかったから」


 顔を真っ赤にしてうつむくシーラ。

 リュードに声をかけた1番の理由は見た目、容姿だった。


 どうせなら。

 どうせ初めて体を売ることになるのなら見た目がいい人がいいと思った。


 その点でリュードの見た目はいい。

 むしろシーラの好みで望むところだった。


 さらにはリュードは身なりが小綺麗で装備品も高そうで見えた。

 冒険者風に見えながら周りにある安い宿には目もくれず高い宿がある方に向かっていた。


 お金も持っていそうだと思った。

 そしてリュードを選んだ極めつけはリュードが多くの女性を連れていたことである。


 女性の扱いにも慣れていそうなら買ってくれる可能性もありそうだし、嫌がることをしないで優しくしてくれそうだと考えた。

 リュードが女性に手慣れていることはないが他については的外れでもない。


 お金は持っているし女性に乱暴はしない。

 まさかルフォンたち女性が多いことがそんなプラスな印象に働くとは思ってもみなかった。


「褒められて悪い気はしないな」


「ちょーしのんない!」


 こうストレートに褒められると嬉しくないはずがない。

 思わずニヤついてしまうリュードの脇腹をラストが肘で小突く。


「そういえばシーラ……」


「なんでしょうか?」


「いや、なんでもない」


「か、体は毎日拭いてますよ?


 お望みなら水で清めます……」


「いやいやいや、そうじゃない!」


 リュードはシーラに対してちょっと気になっていることがあった。

 けれどそれをどう表現して聞いたらいいのかも分からなくて言葉を引っ込めた。

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