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オトコ、立ち上がる1

 ロセアとテユノのものを探し出していると商人ギルドの人たちも入ってきた。

 シギサを確保して証拠の差押えに来たのだけど個人のものと思われるものが多く置いてあって驚いていた。


 テユノにボコボコにされた男たちの目的はリュードだった。

 高い懸賞金がかけられたリュードを追っている人は少数ながらいて、ダッチはリュードの顔を知っているために誘拐されるように連れてこられた。


 そしてシギサの商人としての顔の広さを活かしてリュードを探そうとしていたのであった。

 ついでにシギサが関わっていた奴隷商人はビドゥーであってビドゥーが死んだことによって関係や情報の漏洩を防ぐために関わりを消そうとしていた。


 それが帳簿を探していた怪しい男であった。

 もしかしたら帳簿をビドゥーが抱えていた取引を奪いたい人に売りつける目的があったかもしれないとラソレドンは教えてくれた。


 奇しくもシギサに協力しろと脅しかけていた時にリュードたちが踏み込んだ形となったのである。

 シギサにとっては最悪のタイミングと言えるだろう。


 奴隷商人との関わりを完全に押さえられたことになるのだから。

 さらにはシギサはどう騙すのがいいのかを考えるためにこれまで騙してきた商人たちの記録を取っていた。


 とんだサイコパス野郎だなとテユノが吐き捨てるように言っていた。


「ええっ!?


 それっていいんですか?」


「そういったルールだからな。


 どうするかは君たちで決めてくれ」


 当然ながらシギサの全財産は没収となる。

 結構貯め込むのも好きだったようでシギサの家にはお金が大量に隠してもあった。


 そしてその一部はリュードたちのものとなる。

 所持品を売られたからではない。


 こうした不正の通報を促したりするためのルールとして実際に不正が見つかった場合差し押さえられた財産の一部が通報者のものとなることが定められている。

 今回はシギサの罪も重たいためにもらえる割合も大きめで、金額としてはかなりの額になる。


 お金だけではなく仕入れた商品や奴隷として売られた人たちの持ち物まで好きなものを持って行っていいことにもなった。

 いきなりのことに困惑を覚えずにいられない。


「お前らが決めるといい」


 テユノとロセアに判断を一任する。

 リュードはあくまでも協力者でシギサの財産に関しての権利はない。


 当事者はテユノとロセアの2人なのだし2人が決めるのがいい。


「えー、押しつけるなんてずるい!」


「ずるいったってな……なんならラソレドンさんに任せたっていいんじゃないか?」


 立ち直るのに必要な分だけ貰って後はいりませんと言っても1つの手ではある。

 お金そのものに罪はないが入手経路が綺麗ではないお金も混じってはいる。


 抵抗感があることは否めない。


「ロセア、お前はどうしたい?」


「僕ですか?


 お金か……どうしたら」


「違う。


 お金じゃなくてお前がこれからどうしたいかを聞いている」


「どうしたいか……ですか」


「そうだ。


 手に入るのはお金だけじゃない。

 仕入れた商品もあるしシギサがいなくなれば困る人もきっと大勢いるだろう。


 商人としてのチャンスもあるとは思わないか?」


 考えようによっては大きなチャンスである。

 これまでシギサが気づいてきた販路が丸々空白となることが確定している。


 お金を断ったり、あるいは受け取って一からやり直すことももちろんいいが商人としてのやり方もある。

 シギサの築いてきたものを奪う。


 シギサとの取引がなくなって困る人を助けることもできるし、シギサへの復讐にもなる。

 違法でもなんでもない。


 商人としてやっていくならこれぐらいのこともできなきゃいけない。

 リュードの言葉を受けてロセアがハッとした顔をした。


 何を言いたいのか理解して悩み始める。


「何がしたい……僕は何が」


 ぶつぶつと呟きながら思考を巡らせるロセアは長いこと考え込んでいた。

 そして考えがまとまったのかゆっくりと顔を上げてリュードを見た。


「お金も仕入れた商品も、そして奴隷にされた人たちの持ち物も全部受け取ろうと思います」


 自分は運が良かったのだとロセアは思う。

 たまたまリュードたちが駆けつけてくれて奴隷として売られる前に助けてくれた。


 けれどロセアの前には一体何人の人たちが奴隷として売られていったことだろう。

 奴隷とされていたのは短い間の出来事だったけれどあの時のことはとても怖くて未だに夢に出ることがある。


 常識として合法奴隷以外の違法な奴隷がいけないことであるのは分かっていたが自分とは関係ない遠い世界の話だとどこかで思っていた。

 身をもって体験体験した今は関係のない世界の話だなんて口が裂けても言えない。


 同じように苦しみ、あるいは売られてしまってもっと苦しんでいる人がどれほどいるだろう。

 そんな人たちにも思いを馳せずにいられなかった。


「僕は奴隷にされてしまった人たちを探して、助け出してあげたいと思います」


 そのためにお金も受け取る。

 仕入れた商品も受け取って、持ち物は保管しておこうと思った。


「そのために全部受け取って、僕はここで商人として活動してみようと思います」


「……腹は決まったみたいだな」


 強い意思を持った目をしている。

 やりたいことが明確になった。

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