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悪を暴きて9

 どう粘ったって仕入れ値を超える金額で売れることはないと断言されてしまった。

 信じたくない気持ちや悲しみ、悔しさなど今アシューダとゴマシの中には様々な感情が渦巻いていた。


 必死に守ったのに誰にも引き取ってもらえなかった馬車を引く2人の姿は暗かった。

 トボトボと歩く2人と合流するがアシューダはリュードの目すら見られなかった。


 もはや庇いようもない。

 シギサに騙されたのだと認める他になく、シギサを信じてリュードに反抗的な態度を取ってしまった自分を恥じている。


「……殺してやる」


「アシューダ?」


「シギサの野郎ぶっ殺してやる!」


 目に悔しさの涙をためてアシューダが馬車を蹴り飛ばした。

 ただ足が痛くなっただけで少しも気はおさまらない。


 言葉は荒いが気持ちは分からなくもない。


「こんな……こんなもの!」


 アシューダは全財産をはたいて買った工芸品を鷲掴みにすると地面に叩きつける。

 売れる価値すらないゴミを押し付けられてゴミを大切に運んで守っていた。


 地面に叩きつけ、踏みつけ、周りの人たちがアシューダを見て遠ざっていくほどの暴言を浴びせても事実は変わらない。

 息が切れるぐらいに暴れても全く気持ちは軽くならないが事実を受け入れる覚悟はできた。


「お兄さん、お姉さん、すいませんでした!」


 一通り工芸品を破壊し尽くして荒れた息を整えたアシューダはリュードたちに深く頭を下げた。

 ゴマシも慌てて同じく頭を下げる。


 間違っていたのは自分たちだと認めた。

 悪人はシギサであってリュードたちは助けてくれようとしてくれていた。


 良くも悪くも素直で真っ直ぐだなとリュードは思った。

 自分の非をしっかりと認められるのは良い才能である。


 ラストはお姉さんなんて呼ばれてちょっと嬉しそうにしている。


「この後シギサや僕たちを襲った男たちはどうするのですか?」


「ギルドに引き渡すつもりだ。


 いくつかの国にまたがって活動しているし奴隷の売買にも関わっているから国よりもギルドの方がいいだろう」


「では1つお願いがあります」


「言ってみろ」


「ギルドに引き渡す前に僕の父に話をさせてもらえませんか?」


 どこに引き渡すのかは難しいところだ。

 詐欺行為を考えると商人ギルドに告発すべきである。


 しかしその後は商人を奴隷にしているので奴隷に関わるのなら冒険者ギルドが取り締まりをしている。

 直接活動している国の機関に引き渡すこともできる。


 どこがいいのか困るところである。

 しかしシギサは広く良い商人と思われている。


 人の信頼が厚くて少し前のアシューダのようにシギサを信じている人だっている。

 そうなると国に引き渡すことにはリスクがあると考える。


 シギサの味方をする人や助けようとする人、あるいは仲間や奴隷関係でもみ消そうとする人がいるかもしれない。

 なので国の方ではなくギルドの方に引き渡そうとは考えていた。


 リュードは商人ではない。

 そのため商人ギルドとは関わりがないので自ずと冒険者ギルドの方に引き渡すことになるだろう。


 ギルドが関わって調査を開始すれば国の中に協力者いても握りつぶすことなど出来ない。


「父親に?」


 しかしアシューダはその前に自分の父親に話をさせてほしいと言う。

 男たちを長時間拘束しておくことはリュードたちにとってリスクとなる。


 なのでさっさと引き渡してしまいたいがリュードは理由を聞いてアシューダの父親に会うことにした。

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