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悪を暴きて7

「へへっ、こちらです」


 元よりパンパンだったけど殴られてさらにパンパンになった小太りの男はヘコヘコと頭を下げる。

 絶対に口を割らないと意気込んでいたけれどロセアに殴られて結局話すことになった。


 脅しだけでは口を割らなかったことは見上げた根性だが落ち着いたと言いながら一度タガの外れてしまったロセアに強気な態度を取るべきじゃなかった。

 さっさと話しておけばよかったのにどうして殴らないと思ったのだろうか。


 ちょうど向かっている町に男たちの拠点があり、そこに帳簿があるという話だった。

 ゾロゾロと男たちを引き連れて町中を移動しては目立ちすぎる。


 帳簿の在り処を知っている小太りの男を除いたその他大勢の男たちはテユノとロセアに任せて待機させてリュードが帳簿を取りに来た。


「あれ、おかしいな。


 鍵が開いてる……」


 なんの変哲もない普通の家が拠点であった。

 小太りの男がポケットから鍵を取り出して開けようとしたら鍵どころかドアがうっすらと開いていた。


 鍵だけならかけ忘れを疑うけれどドアまで開いていてはおかしい。

 小太りの男が首を傾げながらドアを開ける。


「ど、どうぞ。


 綺麗なところでもないですが……」


 小太りの男は開いているドアを疑問に思いながらも後ろに立つリュードのこともあって疑問を追いやったがリュードは嫌な予感がした。

 押し開けたドアの向こうに散らかった部屋が見える。


 荒らされたのでもなく元々汚い部屋なのだ。

 何かがあるとリュードの本能が警鐘を鳴らす。


「危ない!」


 開いたドアの上の方に目が行った。

 チラリとわずかに上から垂れ下がる布が見えた。


 リュードは手を伸ばして部屋に入ろうとした小太りの男の服を掴んで引き寄せた。


「グエッ!」


 後ろに放り投げられて転がっていく小太りの男がいた場所に人が降ってきた。

 リュードが助けなかったら降ってきた男が持っていたナイフが小太りの男の頭に突き刺さっていただろう。


「いたた……何をするんですか?」


「おいっ!


 あいつ知り合いか?」


「あいつ?


 ……あ、いえ、知らないです!」


 死ぬぐらいだったら多少の痛みぐらいまだマシだろう。

 入り口上から降ってきた男は黒い布で口元を覆い隠して手にはナイフが握られている。


 お友達のドッキリにしてはやりすぎだ。


「こ、こんなやつ知りませんし命を狙われる覚えもないです!」


 一瞬で状況を理解した小太りの男はサッとリュードの後ろに隠れた。

 リュードも敵だが少なくとも必要なものが手に入るまでは小太りの男を殺すことはない。


 家に忍び込んで暗殺を図る黒尽くめの男に知り合いなんていないし、暗殺者を送り込まれる覚えも小太りの男にはなかった。


「何者……チッ!」


 リュードが問いただす暇もなく黒尽くめの男はリュードに切りかかってきた。

 リュードは剣を抜いて応戦する。


「ひ、ひぃぃ……」


 元商人で戦闘要員でもない小太りの男はただただ怯えている。

 混乱極まり逃げるという選択肢すら頭になかった。


 丸くなって頭を抱えて小さくなって動けない。

 そんな小太りの男だから黒尽くめの男は先にリュードを狙う。


 リュードを倒せれば小太りの男など倒すのは容易い。

 そう思っていたのだがナイフでリュードを切り付けて分かった。


 リュードの方が遥かに強い。

 聞いていた話では手練れなどおらずに簡単な仕事であると言われていた。


 なのにリュードはさらりとナイフをさばいて反撃に出ようとしている。

 対してリュードもそんなに黒尽くめの男は強くないので骨の1本ぐらいはもらって終わらせようとリュードは考えていた。


 何者であるのか話を聞くのに切り付けては都合が悪い。

 ナイフを弾いて軽く剣を当てようとしたリュード。


 しかしその剣は男の首に吸い込まれ、深く切りつけてしまった。

 これはリュードのミスではない。


 男がわざとリュードの刃に首を差し出してきたのだ。

 まさか相手が自分から切りつけられようとしてくるだなんて思いもしていなかったリュードは剣を止められず男の首は深く切り裂かれた。


 コユキがいたら助けられたかもしれない。

 けれど今ここには怯える小太りの男とリュードしかいない。


 暗殺者は見つかったら自ら命を絶たねばならないルールでもあるのかとリュードは顔をしかめる。

 以前にも暗殺者と対峙したことがあるけれどそちらも後味の悪い結果に終わったことを思い出した。


「……ダメか」


 何か少しでも話をと思ったが剣を引いた時にはもう男は絶命していた。


「おい、本当に命を狙われる覚えはないんだな?」


「そりゃあもちろん。


 そもそもここを知っているのは仲間たちか、シギサぐらい……まさかシギサが」


 今現在絶賛ヘマをやらかしている最中であるがそれをシギサがリアルタイムで知る術はない。

 だからシギサに命を狙われる理由もないのだけどここには他の囚われている仲間たちも立ち寄る場所である。


 あんな暗殺方法では誰が最初にドアを開けていても殺されることになる。

 ならば仲間たちがやろうとしたことではない。


 となるとやはり犯人はシギサということになる。

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