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悪を暴きて6

「ま、あれだ。


 もう何人か殴っとくか?」


「いや……もう落ち着いたからいいよ。


 ありがとう、兄貴」


「いいってことよ」


 他の人には分からないだろうけどロセアは目を細めてリュードの冗談に笑っている。

 ちゃんと冷静さを取り戻している。


「何があったのさ?」


 むしろ男たちが怯えてくれて抵抗しそうな雰囲気は消えてくれた。

 結果オーライだ。


 ちょっとした騒ぎがあったことを聞きつけてテユノが戻ってきた。

 チラリと見ると先ほどまで騒いでいたうるさい男が鼻血を流して気を失っている。


 犯人も推測するまでもない。

 未だに魔人化したままのロセアを見れば何があったのかは一目瞭然。


「まあ、ちょっとあってな」


「そう」


 リュードも問題視していないのでそんなに騒ぎ立てることでもないとテユノも軽く流すことにした。


「あっちで話聞いてきたわよ」


 少し他の連中から離してやると男はベラベラと話し出した。

 ここにいる男たち全員シギサに雇われているので間違いない。


 しかし雇われていると中でも2つに分けられるらしい。

 1つは元々シギサに雇われていた古い連中で荒事を得意とする荒っぽい奴らのグループである。


 商業的な知識に乏しく力作業を得意としているので元々は盗賊かなんかだったかもしれない。

 そしてもう1つは話し出した男も含めた元商人だったグループである。


 商才や運もなく食うにも困るような生活をしていた商人たちにシギサが声をかけて集めた。

 シギサが持つ仕事の一部を回してもらい商人としての仕事をもらっていたのだけれど、ある時から荒っぽいグループが合流してきた。


 なんだか空気感が変わったがシギサのところを離れても仕事がないのでみんな何となく続けていた。

 そうしてあれよあれよという間に新人商人を騙してお金を搾取する片棒を担がされていた。


 新人商人たちに行商隊が偽物だとバレなかったのは行商隊を構成している人たちに本物の商人がいたからであった。

 男は良心の呵責に悩まされていた。


 男もうだつの上がらない商人でシギサに仕事をもらうことで助けられていた。

 この卑劣な行為の片棒を担ぐことになっても恩とお金のために抜け出すこともできなかったが才能ある若者を食い物にすることに抵抗感はあった。


 ただシギサを告発する勇気もなくて若くないことを理由に足抜けして田舎に帰ろうと思っていた。

 荒っぽいグループの連中はあまりそうしたことを思わないが元商人グループは思い悩んでいる人も多い。


 もうこの先に待ち受けるものに希望なんてない。

 どうせこのまま捕まるならシギサのことをぶちまけてやろうと思ったのであった。


 許されるなら田舎に帰って真面目に働くという。

 そんなに情報も持ってないみたいだし約束通りテユノは男をそのまま行かせた。


 他にも人はたくさんいる。

 約束を守ることを見せつけることで他の人も口を割りやすくなる。


 本気でやり直すなら身一つでも生きているだろう。

 是非とも罪を償って生きてもらいたいものである。


「しかし……結構組織的だよな」


「それにやっている側も半ば騙されたようなものですしね」


 方向性は違うが元商人たちもシギサによって騙されてこき使われている。

 いかに理由を付けようと悪事に加担していることは許しがたいが同情の余地というものはある。


「……次のチャンスをやろう」


 この際ロセアには魔人化したままでいてもらい、鞭と飴とする。

 とりあえずこの男たちがシギサに雇われていることは分かった。


 けれど口先ではなんとでも言える以上はシギサの方も言い逃れができてしまう。


「なんでもいい。


 シギサとの繋がりを証明するものを持っている奴やその存在を知っている奴はいるか?


 もしいたら命の保証はしてやろう」


 テユノは戻ってきたが連れてきた奴は戻ってこない。

 殺されたか、あるいは本当に解放されたか。


 男たちは揺れている。

 騒いで周りを威圧している男はまだ気を失っているので流れを引き戻す奴もいない。


 今のうちに何か情報を話してしまった方がいいかもしれないと悩んでいる。


「お、俺は直接持ってないが持っているやつを知っている!


 それでどうだ!」


「内容による」


「そ、そいつだ!


 そいつは奴隷の取引に関する帳簿をつけている!」


「な……俺を売る気か!」


 男が別の男をアゴでしゃくって示す。

 手を縄で縛られているのでこうするしかない。


 そのためにまだはっきりと誰と示していないのにややでっぷりとした体型の男が慌ててしまう。

 どちらかといえば商人に見える男である。


「くシギサは表でも金を使えるように上手く裏の帳簿と合わせて記載している!


 だが本当はない取引をでっち上げて載せているから調べればボロが出るはずだ!」


「お前……黙れ!」


 別の男がさらに追加で情報を漏らす。

 シギサは自分で帳簿を管理しているが奴隷の取引には自分はおもむかないのでそちらの方の管理は雇った商人にやらせていた。


 金勘定の上手い元商人が担当しているが他の商人にも帳簿を付けていることはバレていた。


「くっ……覚えてろよ!」


「イキがるのはいいがまず自分の心配をするんだな」


 シギサの不正を証明できる帳簿がある。

 これは是非とも入手しなければならない。


「私は絶対に口を割らないぞ!」


ーーーーー

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