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悪を暴きて5

 冷静になってロセアとテユノを見てみると知っている顔。

 みんながロセアとテユノのことを思い出してきてざわつく。


「覚えていてくれたみたいね?」


 そしてテユノの方ももちろん覚えている。

 記憶力もいい方だ。


 この場にいる男たちの半分は行商隊として見覚えがあるが、行商隊として見覚えがある男の半分は襲っていた側である。

 最終的には助けに入ったはずのリュードたちを行商隊までもが襲いかかった。


 つまりこいつらは全員グルなのである。

 行商隊も固定ではなく襲う側、襲われる側の役割を入れ替えて演劇をしているのだろう。


「な、何も話さねえぞ!」


 リュードたちがたまたま近くを通りかかって助けたのではないと察した。

 目的までは分からないが男たちにとって良いことでないのは確実であることは分かる。


 立派な決意を口にして男たちは顔を背けた。

 別に話さないというのはいいのだがそれでは何か知ってますと言っているようなものではないか。


「あんたが話さなくても他の奴はどうかしら?


 他の奴が話してくれるならあんたは用済みよ?」


「ふん、やれるならやってみろ!


 俺は口を割らねえ!」


 男は強がる。

 暴力的な方法は好まないが今回は事情が事情だけにそうした方法を取ることも視野に入っている。


 頑なに口を割らないというならリュードたちも多少手荒なこともする可能性がある。


「1人。


 1番最初に口を割った奴は解放してやる」


 それでも暴力的な方法は最後だ。

 まずはチャンスをくれてやる。


 これだけの数がいるのだ、全員が固く結束しているなんてことない。

 1人2人ぐらい口の軽い奴がいてもおかしくない。


「シ、シギサに言われてやっただけだ!」


「な、テメェ!」


 少しの沈黙の後、行商隊役だった1人の男が口を開いた。

 リュードがテユノに視線を送るとその男をテユノが離れた場所に連れていく。


 このまま一緒にしていたら話を聞こうにも邪魔されそうだ。


「おいっ!


 このクソ野郎!」


「そのセリフはこっちも同じだ。


 立場を弁えるべきはお前の方だ。


 口を閉じてろ」


 リュードが相変わらず威勢の良い男に剣を突きつける。

 男の脅しで離さなくなっては困る。


「チッ、お前も覚えてろよ!


 この借りは絶対に……グッ!」


「ふざけるなよ……ふざけるなよ!」


「ロセア!」


 我慢の限界が訪れた。

 男がロセアに殴られて地面に倒れ込む。


 ロセアの体が大きくなり服が破けて裂ける。

 興奮のあまりに魔人化したロセアは真っ黒なリュードと違って土属性の魔力の影響を受けて茶色っぽい色をしている。


「余計な、ことを、言うなと、言ってるじゃないか!」


 興奮したロセアは男のことを何度も殴りつける。

 ロセアは戦いとして強くないだけで力が弱いわけではない。


 魔人化までして全力で殴りつけるロセアに縛り付けられている男は全く抵抗もできない。


「ロセア……ロセア!」


 殴られて男の体から力が抜ける。

 だらんとする男をさらに殴りつけようとするロセアをリュードが羽交締めにして止める。


 このまま殴らせておくと男は死んでしまう。

 しかし大の男が本気で暴れているのを止めるのは楽なことではない。


 リュードを殴りつけはしないがまだ男にかかっていこうとするロセアを必死に引き剥がす。


「すまん……ロセア!」


「ぎゃあああ!」


 完全に正気を失っているロセアを落ち着くまで押さえておくのは難しい。

 ロセアを止めるには手荒にいくしかない。


 リュードは魔法を使う。

 ロセアの体に電撃が流れてピクピクと震える。


 荒療治だが止めるには他に方法がなかった。

 興奮と電撃の衝撃でフーフーと荒く息を吐くロセアはひとまず男にかかっていかなくはなった。


 男は死んではいないがロセアにひどく殴られて白目を剥いて気絶していた。


「落ち着いたかロセア?」


「……はい、ごめんなさい」


「いや、いいんだ。


 いきなりどうしたんだ?」


 暴れるように男を殴りつけたロセアだったが電撃を食らってようやく正気を取り戻した。

 魔人化をするつもりも男を殴りつけるつもりもなかった。


 なのに魔人化してしまった。

 ロセアの服はビリビリに破けている。


「……あいつは僕の時に行商隊のリーダーをしていたんです」


 しばらく息を整えるように黙っていたロセアがようやくポツリと漏らした。

 威勢の良い男はロセアが騙された時に行商隊のリーダー役をしていた男であった。


 行商隊として接している時にはロセアのことも気にかけてくれて、話も聞いてくれたとても良い人だった。

 それに襲われた時にはロセアに向かって逃げろなんて叫んでいた。


 捕まって奴隷として連行されながらもリーダーは死んだと思ってとても落ち込んだものだった。

 それにも関わらず今のリーダーはおとなしくしているどころか、周りを威嚇するように声を上げてあの時の優しい姿などない。


 我慢ができなかった。


「ごめんなさい……」


「いいって。


 気持ちがわからないわけじゃないから」


 見た目には平気そうでもしっかりと心の傷になっている。

 悪いのは黙らなかった相手の方だから死んでなきゃ良いだろうとリュードはロセアの肩をポンと叩く。

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