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真っ赤な鳥にさらわれて4

「そんなの美しくないじゃないかぁ!」


「…………なんだ、美しさって」


 怒りを通り越し、呆れ。

 空打ちなどハッタシュも当然に考えた方法である。


 長年生きてきてコツコツと溜めたものをただ空に放出するだなんてとても耐えられなかった。


「いいかい、私は歴々美しく戦い、美しく相手を認めて、美しく散っていったのさ。


 空に魔法を放って美しくなく死んでいくなんてやれるわけがない」


「いや、知らねーよ!」


 堪えきれず口から言葉が飛び出した。

 ハッタシュにはハッタシュのプライドがあるらしいがそれはリュードには一切関係のない話だった。


「大爆発して晩節濁す方が美しくないだろが」


「だーかーらー、こうしてお願いしているじゃないか」


 翼をクロスするように上に上げるハッタシュ。

 ならポージングやめれと言いたい。


 もしかしてこのポージングが人にものを頼む態度いうやつなのだろうか。

 ハッタシュが魔物であるために常識的な行動がリュードと違う可能性もある。


 そう考えたリュード。

 実は実際にそうであった。


 ハッタシュにとってポージングとは美しさを引き立てるもので、美しいものを見れば人は感動する。

 そして大きく感動した人は感謝して頼みを聞いてくれる。


 つまりお願いしたいからハッタシュはポージングしているのであった。

 それを実際に聞いたら何を馬鹿なことを考えているのだと言うだろうけど突っ込む気にもならないのでその真相をリュードが知ることはない。


「まあ理由は置いといてだ。


 力を使わせてってまさかとは思うけど……」


「そう、そのまさかさ!


 ただ殺されるなんて美しくない。


 私と戦って私を美しく倒してほしい!」


 もう話聞くのやめて走って逃げてやろうかなとリュードは思った。

 なぜそんなことに協力しなきゃならないのだ。


「勝手に死んでろ」


「ええっ!?


 なぜいきなり氷のように冷たく!?」


「帰るわ」


「ちょっと待っ……て!」


 美しくないお願いに帰ろうとしたリュードの前に美しくない走りで回り込むハッタシュ。


「私美しく謝罪!


 すまなかった!」


 ハッタシュはスッと頭を下げる。


「理由は分からないが怒らせてしまったのなら謝ろう!」


 素直はよろしいが素直すぎる。

 とりあえず謝っとけ、がモロに口に出てしまっている。


「お願いだから帰らないで!


 いいのか、爆発するぞ!


 それに空打ちもできない事情があるのだぁ!」


 翼を広げてリュードを囲い逃さないようにする。

 もはや美しさのかけらもない。


 そんな脅しチックなやり方始めたら終わりだぞ。


「……ちなみに爆発ってどれぐらいの規模なんだ?」


 これで花火ぐらいの爆発なら大人しくしていてもらう。


「爆発か?


 ……そうだな。

 ここに隣接する国は焼け野原になるかもしれない!」


「はっ?」


「1番酷くてそれぐらいだ。


 少なくともこの周辺は消し飛ぶだろうな」


 若干自慢げに話すが自慢げにするところじゃない。

 周辺国が焼け野原になるほどの爆発ってなんだ。


 とんでもない天災だ。


「空打ちできない理由ってなんだ?」


 それなら早急に力を使わせねばならない。


「それも戦ってほしいという理由に関わってくるのだ」


 迷惑にならないように魔法を放って力を使う空打ちなんて思いつかない方法じゃなく、美しくないと分かっていながらもハッタシュは試したりした。


「するとこの火の森が急速に広がってしまったのだ……」


 この不思議な燃える森、それはハッタシュが原因で生まれたものであった。

 強い火の力を持つフェニックスであるハッタシュは強い魔力を持っている。


 他の生き物でもそうであるのだけど普通に生きているだけでも魔力は流れ出している。

 特に強い力を持つハッタシュから漏れ出す魔力は多く、ハッタシュが持つ火の力の影響を受けた魔力に長時間さらされると周りも影響を受ける。


 ハッタシュの火の魔力の影響を受けた結果として生まれたのが燃える森であるヒュルヒルであった。

 草や葉が火に変わってしまっているのはハッタシュの魔力によるものだった。


 昔から死と再生を繰り返していたフェニックスのハッタシュの魔力の影響は限定的だった。

 ヒュルヒルの規模は現在よりもはるかに小さく、森の一部が不思議と燃えている場所だった。


 けれどハッタシュが長く生き、魔力がより強くなっていくに従って魔力によって影響を受ける場所が広がっていってしまっていた。

 つまりハッタシュの魔力が放出されればされるほど燃える森が広がるのである。


 空打ちすると当然魔力が放出されることになる。


「空打ちして気づいたらいつの間にかこんなに広がってて……」


 爆発する、マズイ!と思ったハッタシュはちょいちょい魔法を放っていたのだけど気づくとヒュルヒルの範囲が爆発的に広がっていた。

 気のせいでは済まされないほどの範囲が赤く燃える木々に変わっていて、ハッタシュはその失敗を悟った。


 ヒュルヒルは火の神物によってできた場所ではなかったのである。


「これ以上無駄に空打ちして影響が広がると私にもどうなるか分からないだから空打ちできないのだ」


 美しくない、という理由だけでなかった。

 ちゃんとした空打ちできない理由が存在していた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです 久しぶりに冒険らしい冒険小説です
[一言] 傍迷惑なナマモノやなww
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