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真っ赤な鳥にさらわれて3

 だからずーっと様子を伺っていたのだけどこのままじゃヒュルヒルを抜けていってしまいそうなので強硬手段に出た。


「よく美しい人をお連れで!」


「あ、はい、ありがとうございます」


 リュードを誘拐したのは緊張せずに話したかったから。

 かなり強引だったが誘拐の時ですらルフォンたちに見られて緊張してしまっていたのだ。


 随分とハッキリと理由を述べてくれるのでリュードもそれを信じざるを得ない。


「これだけ離れれば緊張しない!


 手荒な真似をしてすまない!」


 ちょっと斜めになって片翼を軽く伸ばす。

 女の子に緊張するのはいいけどポージングはなんなんだと思わずにいられない。


 ただあまりにも堂々とした態度と理由にもう怒る気も警戒する気も削がれてしまった。


「そして私のお願いとは、私を殺してほしいのだぁ!」


 そして予想だにしなかったお願い。

 展開のスピードが早すぎて理解が追いつかない。


「えっ?」


「まあ、待たれい!


 説明はする!」


「そ、そうか……」


 会話の圧が強い。

 終始ハッタシュの勢いに飲まれている。


 ちゃんと話してはくれるようなのでリュードは遠い目をしてハッタシュの話を聞くことにした。


「先ほども申した通り私は美しきフェニックス!


 火の聖獣である!」


 聖獣とは神獣と似ている響きだけど異なるものである。

 神獣とは神様が功績や力を認めて己の使徒とした魔物である。


 神聖力を与えられ、神の使徒として相応しい態度を求められ、時に使命が下される。

 一方で聖獣は神様とは関係ない。


 聖獣にも一定の神聖力があるのだけれどそれは聖獣自らの行いで得たものである。

 善行や強力な力の証明などで人々の間で噂になり、敬意を抱かれたり信仰の対象などになったりすることで聖獣となるのだ。


 神に認められるか、人に認められるかという違いがある。

 どちらにしても人にとっては味方であるような印象は強い。


 フェニックスはとても有名な魔物である。

 炎と再生を司る魔物で知能が高く人に対しても友好的で善良である魔物とされている。


 人と関わりがあるなら聖獣とされているのも納得の魔物である。

 同時にリュードは疑問を抱いた。


 フェニックスの力としては再生の部分も大きい。

 殺してもまた復活することができる。


 死なない魔物なのである。

 そんなフェニックスが殺してくれとは何事だろうか。


「なに悪しき意識に乗っ取られるから……などという理由ではない」


 人の世の中ではそのようなお話もあることはハッタシュも知っている。

 別に悪いことをしてしまいそうだなんてことはない。


「フェニックスは死してまた新たに生まれ変わる。


 この私もハッタシュとしての生も長いことを生きてきた。


 しかしいつまでも同じまま生きてはいられないのだ。

 どこかで生まれ変わらねばならない」


 じゃあ生まれ変わればいいとリュードは思うのだけどそうもいかない事情がある。

 フェニックスは再生の能力があるので死なない限りはある程度まで長い間をそのまま生き続けることが可能である。


 最終的には死ぬのだけど他の生き物に比べて圧倒的に長く生きてしまうことができる。

 けれどいつまでも同じまま生き続けることは生命としての流れに反することでもある。


「このまま死を迎えると私は大爆発してしまうのだ!」


「……はぁっ?」


 またしても会話がとんでも方向に飛んで困惑する。

 いきなり出てきた大爆発に怪訝そうな顔を浮かべてしまう。


「私は強く、そして上手く生きすぎた。


 そして人はなぜが弱くなり……私を倒せなくなってしまった」


 ハッタシュは深いため息をついた。

 フェニックスは再生をして長く生きることも可能なのだけど長い歴史で見れば上限から考えられるほどには長く生きるものでもない。


 時として冒険者と戦い、時として他の魔物と争い、自分の強さを高めながらも時に負けて次の生を迎えることになる。

 けれどハッタシュは強くて賢かった。

 運も良くて死ぬような負けを経験することがなかった。


 本来なら好敵手となる魔物がいたり、功名心に駆られた人なりと戦って力を使うはずだったのだけど全くそういう相手に出会うこともなく生きてきてしまった。


「今の私は使わなかった力を溜め込みすぎている。


 私が死ぬ時にこの行き場を失った力は私の死と共に解き放たれて大爆発を起こすことになるのだ!」


 ブワッと翼を大きく広げて上を見上げるハッタシュ。

 長生きしすぎたが故の弊害。


 蓄えた力の行き先がなくて今のハッタシュは爆発寸前の火薬庫のようになっていた。


「……殺すのはいいが殺したら爆発するんだろ?」


 口ぶりから察するには大爆発することは避けたいような感じを受ける。

 なのに死んだら大爆発するという。


 要するに死にたくないと解釈できる。

 それなのに殺してくれという。


「そう思うのも当然だ。


 少し言葉足らずだったな。


 ただ殺してほしいのではなく大爆発しないように力を使わせて殺してほしいのだ!」


「……じゃあ空に向かって好きなように空打ちしろよ」


 蓄えた力が問題なら適当に空に魔法でも放って力を使えばいい。

 ごもっともなリュードの意見である。

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[一言] 勝手に死ねやww
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