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幻にも君を見た2

 ビドゥーが貸し切っているのは最上階フロア。

 眺めも良く町を一望できる高さにある。


 そんなとこまでどうやって行くのか。

 なんとこの宿にはエレベーターが存在していた。


 リュードが前世でいた世界ほどのクオリティのものではなく、木で作られた箱のようなもので壁にいくつかヘコミがある。

 そのヘコミの上には階数が書いてあってそこにダッチが魔石をはめ込む。


 するとエレベーターが動き出す。

 魔石の魔力によって昇降するシステムであり魔石をはめ込む穴によってどこの階まで上がるのかをコントロールしているのだ。


 中々面白い作りだとリュードは思った。

 そんなに高い建物をこれまで見なかったのでこうしたものの必要性を感じたことがなく、考えてきたことがなかったけれどちょっと細かな作りが知りたい。


 自動に閉まる扉もないエレベーターがギュンと上に上がっていく。

 ルフォンは初めて見るエレベーターに驚いていた。


「これは……」


「こちらは古代の魔道具を応用したものでございます」


「なるほど」


 ダッチに聞いてみようとしたが古代の魔道具を使っているならきっとダッチもそんなに仕組みを分かっていないだろう。


「ええと、では、お願いいたします」


 リュードたちを降ろしてダッチは下がっていってしまった。

 帰る時はどうすんだと思うが交渉に成功すればそのまま部屋に泊まればよく、ダメだったら階段を使ってくださいということ。


 ダッチはビドゥーとあまり関わりたくないのであった。

 いなくなってくれるならありがたい。


「どちら様ですか?


 ビドゥー様は今……」


「済まないな」


 エレベーターを降りてすぐ正面がビドゥーの部屋。

 その部屋のドアの前に2人の護衛が立っていた。


 護衛には流石に知り合いですなんてウソは通じない。

 それに話し合いも通じない。


 リュードとルフォンは一瞬視線を交差させるとすぐさま護衛に襲いかかった。

 剣すら抜くことが出来ずにそれぞれの護衛はリュードとルフォンに倒された。


 普段なら悪人がどうか気にするところだけどそうしている暇などない。


「さていくぞ」


 丁寧にノックなんてしない。

 剣に魔力を込めてドアを切り裂いて中に突入する。


 入った瞬間になんとも言えない甘い匂いを感じた。


「な、なんだ君たちは!?」


「……貴様!」


 どうしてこうした人間は醜いものなのか。

 ほんの一瞬以前に美を追求して多くの人を犠牲にしたガマガエルを思い出させるようなずんぐりむっくりとして不細工な顔をしたバスローブ姿の男がベッドの上にいた。


 手には紐を持っていて、その先は首輪に繋がれていた。

 そしてその首輪が繋がれているのは見知った女性、テユノの首に出会った。


 下着姿のテユノは目がうつろで焦点があっていない。

 頬が赤く腫れていて少なくとも何かの暴力を振るわれたことは明白であった。


「……貴様ぁ!」


 リュードの頭に一瞬で血が昇る。

 テーブルの上に置いてあるグラスにヒビが入るほどに重たい魔力がリュードから溢れ出して、ビドゥーは蛇に睨まれたカエルの如く動くことが出来なくなる。


 言い訳も、事情も聞くつもりはない。

 護衛の血に濡れた剣を手に近づくリュードにビドゥーはただただ恐怖することしかできない。


 しかし相手を苦しめる趣味はない。

 体も首も動かしていないのにビドゥーは自分の視界が刹那に移り変わるのを見た。


 首が刎ねられて頭が飛んだから天井が見えたのだと理解することはなくビドゥーは死んでいった。


「テユノ!


 大丈夫か!」


 リュードはビドゥーの体を乱雑にベッドから突き飛ばすとテユノに近寄る。

 リュードが目の前に来てもテユノの目は焦点が合わずリュードの呼びかけにも反応しない。


 肩を掴んで揺すってみる。


「リュード……」


「テユノ、そうだ俺だ!」


「リュードォッ!」


「テ……ムッ!」


 ほんのわずかに目に光が戻ったテユノ。

 リュードの呼びかけにようやく反応したかと思ったらテユノは手を伸ばしてリュードの頬に触れた。


 そして、リュードの唇を奪った。


 頬をホールドして舌まで差し込んでくる。

 力が強く、いきなりのことにリュードも身動きが取れなくなってしまう。


「な、何してんのよー!」


 チュッチュとリュードの唇を奪い続けるテユノをルフォンが大人しく見ているはずもない。

 ガッとリュードを掴んでテユノから引き剥がす。


「あれ……ルフォン?」


 いまだにトロンとして寝起きのような声色のテユノがルフォンに気づいた。


「分かった……これは媚薬だ」


 キスされたから、もあるかもしれないがこの部屋に入ってからなんだかおかしい。

 妙な感覚を覚え、体が熱くなってきた。


 入った時からしている甘い匂いの正体、それは媚薬であった。

 抵抗が強く体にも触れさせないテユノを落とすためにビドゥーは強い媚薬を部屋で焚いていた。


 一般的には禁止されている強い薬で竜人族にすら効果がある。


「ルフォンはなんとも……ん!」


「ん……プハァ」


 当然毒耐性が竜人族より低く嗅覚にも優れた人狼族のルフォンに媚薬が効いていないわけもなかった。

 怒りの表情を浮かべたルフォンはリュードの頭を掴んで自分の方に向けさせると顔を赤くして唇を重ねた。

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