実は初恋だった
「コユキーーーー!」
「先生ーーーー!」
ひしっと抱きつくコユキとニャロ。
旅を続けてきたリュードたちだがとうとうニャロを送り届けるところまで来てしまった。
エシャミド王国のシナージュというところがニャロの活動地だった。
このシナージュは他でも珍しい魔人族の町であった。
国ではなく国の中にある1つの町ではあるが住人の多くが魔人族の町なのだ。
広く言うとエシャミド王国にある教会所属だがもっと詳細に言うとエシャミド王国のシナージュの教会に所属しているのがニャロである。
ニャロはそこ出身の魔人族である。
だからニャロは真人族の領域にいながら魔人族の聖職者であるという珍しい存在であるのだ。
その教会の前までやってきた。
つまりニャロとは本当にここでお別れなのである。
師弟関係だったけど姉妹関係みたいだったニャロとコユキ。
別れを惜しんでコユキを強く抱きしめるニャロ。
コユキは良い弟子だった。
聖者であるニャロはやはり普通の聖職者の尊敬の対象になることもあって壁を隔てたかのように接される。
敬意を持たれているといえば聞こえもいいけれどもニャロとしてはもっと気軽に接してほしいことも多かった。
けれどコユキにはニャロが聖者とかそんなこと関係ない。
ニャロはニャロでありニャロはありのままに接してくれるコユキが大好きになっていた。
もちろんリュードやルフォン、ラストもそうだけどやっぱり教えていた都合もあってコユキが1番。
「ルフォン〜、ラスト〜!」
もちろんみんな大好きなので2人ともハグをする。
旅に別れは付きものであるけれどニャロといた時間は長く、明るくて周りを盛り上げてくれるようなニャロとの別れにはルフォンとラストもうるうるきている。
「いいかにゃ?」
「しょーがないなぁ、今日だけだよ」
「そうだね、特別」
順番的には次は自分の番であるとリュードも手を広げて待つがニャロは一旦止まってルフォンとラストの方を見る。
2人にお伺いを立てる。
リュードがオッケーなら別れのハグぐらいはいいんじゃないかと思うけれどこれまで一緒に旅をしてきた2人に対する礼儀みたいなもの。
親しき仲にも礼儀ありである。
魔人族にとって本人と同じく婦人の合意も大切。
そうしたことはコユキ以外は分かっている。
「リュードにはたくさん助けられたにゃ。とっても感謝しているし私の人生の中でも2番目にかっこよかったにゃ」
「2番目か?」
「1番目は私を育ててくれた人にゃ」
「そっか。
それなら敵わないな」
「今生きている中では1番にゃ」
ギュッとリュードを抱きしめる。
「ニャ、ニャロ?」
頬が触れ合うほどに顔を寄せる。
少し熱っぽいニャロの目と見つめ合う。
そっと目を閉じてニャロはリュードの頬を舌先で舐めた。
ざらりとした舌の感触。
ニャロは悪戯っぽく笑ってリュードから離れた。
「よく冒険者なんて好きになっちゃダメだって言うにゃ。
聖職者は守り癒す者、冒険者は戦い傷つく者で互いに惹かれ合いすぎてしまうことがあるからにゃ。
でも思っちゃうことは止められないにゃ」
ルフォンとラストが止めに入ろうとしたのをコユキが服の裾を掴んで止めた。
「私のこと思い出して我慢できなくなったらいつでも呼んでほしいにゃ。
リュードがいつかハーレムを作るならその端っこに私も加えて欲しいにゃ」
「ニャロ……」
「じゃなきゃ、私がルフォンとラストを倒してリュードをいただくにゃ!」
「な……!」
「ニャロ〜!」
「はははっ!
いい男はみんなのものにゃ!
ニャロ・ベスイェ、リュードのお嫁さんに立候補するにゃ!」
「1番は私だよ?」
「くっ……ニャロはだ、第3夫人だかんね!」
「おーい、俺の意見は?」
色々おかしい。
なんか勝手にオッケーなことになっているしこの会話の流れではラストが第2夫人になっている。
ルフォンもそこに突っ込まないと言うことは認めているとこになる。
「もちろん第3でもリュードハーレムに入れてもらえるだけで有難いにゃ」
お父さん、お母さん、知らないところでお嫁さんが増えていきます。
忘れちゃいないお嫁さん候補のエミナだっているしどこぞで言われたハーレムパーティーだのが否定できないものになっていく。
「リュードのためならいつでもどこでも飛んでいくにゃ。
教会を界して呼んでほしいにゃ!」
「分かった!」
「リュードのパートナーに相応しいように自分磨きを怠っちゃダメだよ!」
「もちろんにゃ!」
「うん……みんな納得ならいいけどさ。
…………いいのか?」
ニャロの性格は明るく快活で好きだ。
顔も可愛いしケモミミもリュードは好きだ。
ただ告白されたならルフォンがいるからとちゃんと断るけど肝心のルフォンの方が先に認めてしまっているのにリュードがあれこれ言うのもタイミングがもう遅い。
こうして猫人族の聖者であるニャロとは別れることになった。
ただまあニャロとはまたどこかで会うような気がしないでもない。
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