たこ焼きにしてやった
「最悪!
最悪サイアクさいあく!」
実際見てないし、見てないとリュードは言うのだけど口ではどうとでも言える。
見ていないと言うけれど絶対に見られたとネローシャは顔を真っ赤にして取り乱していた。
服は魔力で作り出したものなのですぐに再生できたけど気を失ってしまったのでしばらく素っ裸だった。
この際あのタコに消化されてしまえばよかったとすら思っている。
「見てないって言ってるし……」
「ウソだぁ!
性に獰猛な若い人のオスがどんなのか知ってるでしょ!
見てないと言いながらも頭の中ではもう私の裸でいっぱいになっているに違いないわ!」
知らんがなとナガーシャは思う。
思うが口には出さない。
ここで余計な一言を口に出そうものならまた話は最初に戻ってややこしくなるだけだから。
そしてリュードも関わるとめんどくさそうなのでネローシャからは距離をとって何も言わないことにした。
今は他のウンディーネたちが来るの待っていてすることもないので手を動かしている。
古くなって使わなくなった古いフライパンを加工していた。
力技でフライパンに丸い凹みをつけていく。
魔法でフライパンを強く熱して少し柔らかくなったところをハンマーで殴る。
このハンマーもドワーフたちから受け取ったもので多分こんな風に使うものじゃない。
ある程度凹んだらそこに丸く加工された宝石を入れて魔力で固く強化して綺麗に丸い凹みにする。
この宝石もドワーフからもらったやつだけどこんな使い方するなんてドワーフも考えていなかろう。
そうした作業を繰り返してフライパンにいくつも丸い凹みをつけたお手製たこ焼き器の完成。
なぜこんなことをしているのか。
たこ焼き器を作ったのだから理由は1つだ。
タコを食う。
たこ焼きにしてやると口に出したのだからたこ焼きにして食ってやる。
「たこ焼き器の完成!」
多少不恰好だがある程度たこ焼きっぽく作れればそれでいい。
「えっ、それ……」
「あっ……」
テンションが上がってしまったリュード。
マジックボックスの袋を見せてしまうことは魔物の食材をしまうのに見られてしまったし盗もうとするバカもそんなにいないのでゆるくなっていた。
しかし袋からガッツリデカいコンロを取り出すと話は違う。
そんなものが入るマジックボックスの袋、しかもそんなものを持ち歩いているなんてとみんなが驚いている。
つい何も考えずに取り出してしまった。
「い、いいか、みんなのこと信頼しているから見せたんだからな!」
誤魔化しようもないので開き直るリュード。
ラストの視線が冷たい気がするがここで変に隠そうとしてはいけないので堂々とする。
ウンディーネたちがメインルームに到着して機能の回復をしている間にリュードはたこ焼きを作り始めた。
竹串なんかはないけど暗器として使う鉄串がある。
これもドワーフ製なんだけど人を殺すのではなくてたこ焼きを転がすのに使われる。
他にすることがないのでみんなの注目を浴びながらたこ焼きを作る。
「ほいほいほい!」
「わぁ……」
「やりたい!」
クルクルと器用にたこ焼きをひっくり返していくリュード。
丸く焼けていくたこ焼きにみんなコンロの衝撃を忘れて見入っている。
意外と上手く出来るもんでいつの間にかニルーシャも野次馬していた。
ガラーシャが首根っこ捕まえてニルーシャは連れ戻されていった。
コユキもリュードの手際を見てやりたいと言い出した。
なのでリュードが後ろについてやらせてみたり、ルフォンやラストもやりたそうにしていたのでみんなでちょっとずつやってみたりもした。
しかしいざ作ってみると問題があった。
たこ焼きに付随するソースやマヨネーズなんかがないのである。
マヨは何とか作れそうな気がしないでもないけどソースは難しい。
カツオブシとか青のりとかもない。
そのまま食べてもいいけれどリュードは知恵を働かせて解決策を導き出した。
コンブを煮て出汁をとり、それにつけて食べる明石焼き風にして食べるのである。
「うんま!」
「美味しいよ、リューちゃん!」
「もうちょっと冷まさないと食べらんにゃいにゃ」
残念ながらタコと小麦ぐらいしか材料もないのでたこ焼きそのものもギリギリだった。
しかし食べてみると案外うまい。
上級の魔物であるクラーケンはその身の旨味もすごい。
単純な作りのたこ焼き、明石焼きもどきだけどコンブ出汁の旨味とたこ焼きの旨味はそれだけでも美味しくいただけるレベルのものであった。
これはちゃんと食材を集めて作れば相当絶品だっただろうなとリュードは思った。
慣れてくればみんなも作れるたこ焼き。
ワイワイとみんなで作りながら食事をしているとウンディーネたちも大体作業を終えてたこ焼きを欲していた。
「リューちゃんから出てくる料理のアイデアはすごいよね」
ルフォンでは思いもよらない料理をリュードはふと提案してくることがある。
料理への新たなるチャレンジ、創造性を刺激してくれるので非常にありがたい。
それは全部前世の知識から来たもので時々食材なんかを見た時に料理を思い出して食べたくなるのだ。
それをルフォンにどうにかならないかとお願いする。
ルフォンからすると思いもよらない料理をいきなり提案する謎の天才的発想みたいな感じでリュードを見ていた。
「んなことないさ。
実際に手元にあるもので作ってみせるルフォンの方がすごいよ」
リュードは前世の知識から提案をしているだけでその説明だって上手くはできていない。
無茶難題なことも多いのにルフォンは身近にあるものからそれに似たものを作り出してしまうことがある。
これこそ真の天才と言える。
さらには旅の中でも毎日限られた状況で美味しい料理を出してくれる。
毎日の料理を楽しみにしてくれるルフォンには頭が上がらない。
「まあね、俺は主にアイデアだけの担当だから」
リュードも不器用ではないけれど料理へのセンスはあまり高くない。
頭にどんなものか分かっている自分がやったほうが早そうなのにルフォンが再現する方が美味いのだ。
料理が出来なくないけど料理のセンス、バランス能力はルフォンが圧倒的に優れている。
しかしたこ焼きはこんなものではない。
他の料理もそうだけど持っているポテンシャルを引き出してリュードの理想とする味にはやはり足りないものが多い。
いつか色々な食材や調味料を集めて色々と作ってみたいものだとリュードは思った。
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