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ウォークアの子2

 リュードが気をひきつけている間に首を落としたのだ。


「ほーら!」


 仲間がやられて動揺しながらもリザードマンはリュードに剣を振り下ろす。

 その剣に見事ラストの矢が当たってリュードから軌道が逸れる。


 知能が高いのも厄介だ。

 仲間がやられたなら逃げるか、怒ってかかってくるかが本能に近い行動。


 けれどもリザードマンは怒りもせず逃げる機会も失って攻撃も中途半端。

 もっと知能が高ければ、あるいは知能が低ければと思うがリザードマンの行動は何の結果ももたらさなかった。


 恐怖と困惑に硬直したリザードマンは振り返り様に振られたリュードの剣を防ぐこともできない。

 綺麗に3体全て首を刎ねられた。


 これなら竜人族と比べることもおこがましいと思わざるを得ない。


「なんてことはない相手だったな」


「パパ強い!」


 剣についた血を振り払ってリュードが戻るとコユキが抱擁で迎えてくれる。

 マーマンもそうだけど死体が消えないってことはこのお城はダンジョンに近い雰囲気がありながらもダンジョンではない。


 分かってたけどダンジョンのような雰囲気があるだけに消えない死体に少しだけ変な気分を覚える。


「お疲れ様です」


 リザードマンでも大丈夫だろう。

 でもいざとなれば助けに入る準備はしていた。


 コユキが特に強化支援しなくてもリュードたちは圧倒的に強かった。

 反撃する隙も与えてもらえずリザードマンは倒された。


 正直な話リュードたちの強さはニャロやコユキの強化支援あってのことと考えていた人もいた。

 このような実力を見せられれば己の見る目の無さを恥じるしかなかった。


 出てくる魔物がマーマンではなくリザードマンになった。

 マーマンよりは強い相手で多少の連携も取るので慎重に戦っていくために進行スピードは落ちた。


 さらにリザードマンは角で待ち伏せなんてこともしてきた。

 ただ無防備に進むことも危険になった。


「ここはどこらへんだろうにゃ?」


 城の地図なんてものはない。

 外から見ていた城は巨大で中の構造も曲がり角が多くて軽い迷路みたい。


 リュードが提案した方角に進んでいるとは思うけど不安にも思い始めていた。


「待って」


「どうしたルフォン」


 ルフォンが突如立ち止まって目をつぶって耳を澄ませる。

 ピクピクと動くミミ。


 みんなは緊張した面持ちだけどリュードだけは動くミミ可愛いななんて考えていた。


「音がする……」


「そう言われれば……何かを叩く音かにゃ?」


 ニャロも耳を澄ませてみると何かの音を感じた。

 戦いの音ではない。


 一定のリズムで何かを叩くような低い音がしている。

 慎重に、でもペースを早めて音のする方に向かう。


 進んでいくとリュードや他の人にも音が聞こえ始めてくる。


「リザードマンの戦士と戦士長……かな?」


 知能のあるリザードマンにはその集団内での階級みたいなものがある。

 ただのリザードマン、戦士、戦士長と単純な階級だが戦士リザードマンはただのリザードマンより強く、戦士長リザードマンは戦士リザードマンより強い。


 それぞれの階級の間には強さの壁があり戦士長リザードマンはリザードマンのリーダー的な存在でもある。

 戦士長にまでなると周りのリザードマンよりも体格が一回り大きく見た目で分かりやすい。


 戦士リザードマンとただのリザードマンの違いは装備品。

 どうやったのかリュードには分からないが戦士リザードマンと思しき個体は防具を身につけている。


 そして広くなった部屋に多くのリザードマンが集まっていた。

 奥側には大きな扉が閉ざされていて戦士長リザードマンが大きな斧で扉を叩きつけて壊そうとしている。


 扉はボロボロで歪んでいて今にも壊れそうになっていた。


「元々住んでいたんじゃなさそうだね」


 住んでいたなら今更扉を壊そうとなんてするはずがない。

 リュードは神様から聞いているからリザードマンが他所から来たものだと知っている。


 他の人にとってはリザードマンがどこから来たかは知り得ないことなのでその行動の不思議さに首を傾げている。


「ちょっと数が多いね」


「でも早くしないとあの扉もう限界そうだよ」


 扉が何を守って閉ざされているにしてもリザードマンが正当な理由や方法でそれを狙っているように見えない。

 扉が突破される前に倒さなきゃいけない。


 ルフォンはリザードマンを見て少し顔をしかめた。

 倒すことには問題なさそうだけどリザードマンの数が多い。


 コユキやニャロを優先して狙われたら厄介だ。


「少し誘き出して倒そうか」


 知能があるということは意外と騙しやすいということでもある。

 リュードは近くに転がっていた石を手に取って投げた。


 上手く石は転がっていきリザードマンの足にコツンと当たった。

 リザードマンは不自然に転がってきた小石の出所を探して周りを見回す。


 これまでのリザードマンもそうだったが何かの知恵でリザードマンは3体1組で動いている。

 石が飛んできた方を調べようとリザードマンが仲間の2匹を連れてゆっくりとリュードたちの方に向かってくる。


「いくぞ。


 ……3……2……1!」


 リュードを始めとした数人が通路の影から飛び出す。

 のこのこと誘き出されて通路近くまで来ていたリザードマンに襲いかかる。


 一陣の風のようにルフォンが手前のリザードマンの横をすり抜けて1番奥のリザードマンの喉を切り裂く。

 持っていた槍を落として喉を押さえるリザードマンの心臓をさらに1突きする。


 そのまま音がしないようにゆっくりと地面に倒す。

 まずは1体。


 リュードも手前のリザードマンを抜けて後ろのリザードマンも狙う。

 仲間を呼ばれては面倒なことになる。


 リュードはリザードマンに素早く接近すると喉を殴りつける。

 小さくグェと鳴いたが扉を叩きつける大きな音にかき消されて他のリザードマンには聞こえない。


 袈裟斬りにリザードマンを切って捨てるとリザードマンの首を掴んで通路の方に引きずっていく。


「ふおおっ!


 これがコユキちゃんのしえーん!」


 1番前にいたリザードマンは冒険者が戦う。

 リュードやルフォンの方は心配ないので冒険者の方をコユキが強化支援する。


 小声ながらコユキの強化支援に感動している冒険者がリザードマンを切りつけ、ラストがその隙をついて眉間に矢を突き刺す。


「羨ましい……」


「ズルいぞ」


 みんなでリザードマンの死体を見えないところまで引き込んで隠す。

 幸いリザードマンたちは戦士長リザードマンを真面目に見ていて後ろで起きたことに気づいていなかった。


 もう一度リュードが石を投げる。

 同じく引っかかり3体のリザードマンが石の投げられた先を探しにくる。


 ほとんど同じ動きでまたリザードマンを倒して隠す。

 今度は違う冒険者をコユキが強化支援して、またコユキの強化支援争奪戦が少しあったが問題はなかった。


 しかし3回目となるとリザードマンもただのバカではなかった。

 後ろにいた仲間が減っていて戻っていないことに気がついた。


 リザードマンの中でも知能が高そうである。

 もう何回か繰り返して数を減らしたかったが完全に気づかれる前に奇襲したいので戦うしかない。


「俺が動きを止めるから一斉攻撃だ。


 コユキとニャロは広くみんなを支援してやってくれ」


 みんながうなずく。

 しっかりと意見を述べるし真面目で強く風格もある。


 いつの間にかリュードがリーダーのようになっていた。


「準備はいいな?


 行くぞ!」


 リュードが集中して魔力を高めながら出て行く。

 広く、より伝達していくように意識する。


 リュードの魔力が電撃へと変わる。

 じっとりと濡れた床を通して電撃が部屋の中に広がって次々とリザードマンを痺れさせていく。


 殺傷力は控えめだけど素早く広がり長く痺れるように魔力もたっぷりと込めておいた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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