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大きくなりたい3

「いくぞー!」


 先ほど警備隊の仲間たちを倒した勢いそのままに突撃していく。


「うわぁ!」


「気をつけろ、さっきより強いし武器持ってるぞ!」


 冒険者ともなればケンカの仲裁ぐらいしかしない警備隊よりも戦いに慣れている。

 人数差で容易く押し切れた先ほどと違って冒険者たちは陣形を組んでまとまって戦っていた。


 魔法使いもいるし、1人武器も持っている冒険者もいた。


「……俺たちも出るか。


 コユキ、隙を見てさっきみたいに魔石をぶっ飛ばしてくれ!」


「りょーかい!」


「ラスト、コユキを頼むぞ」


「オッケー!」


 リュードとルフォンも前に出る。

 ラストにはコユキについていてもらう。


 ルフォンには徒手空拳の心得があるがラストにはないからだ。


「武器を持ったのは俺に任せろ!」


 武器を持った冒険者はリュードが相手する。

 たまたまリュードも剣を持っているのでちょうどいい。


 ルフォンは冒険者の中で厄介な魔法使いを狙う。


「パパがんばれー」


「リュードぉ、やっちゃえー!」


 リュードが対峙するのは双剣使い。

 細め短めの剣を両手に持ちリュードに切りかかる。


 双剣使いは数が多くなくあまり戦う相手ではない。

 テクニカルな戦い方でありやりにくいタイプの相手だと言える。


 しかしながらリュードの場合は話が違う。

 リュードの師匠であるウォーケックは双剣使いである。


 普通の剣を振り回して戦うウォーケックは驚異的だった。

 そんなウォーケックに比べれば冒険者の一撃はまだまだ遅くて軽い。


 双剣というやつは回転は早いが一撃が軽くバランスが崩れやすい。

 リュードは相手の力量を見極めるためにしっかりと防御する。


 ただ防御するのでもない。

 力を込めて押したり逆に受け流すように引いたりと相手に揺さぶりをかける。


 防いでいるだけ。

 でも立派な攻撃となっている。


 安定して素早い攻撃を繰り出していた冒険者だが徐々に回転が落ちで動きが乱れ始める。


「ハッ!」


 距離を取ろうにもリュードがピタリと同じ距離を保っている。

 押し返そうにも力はリュードに及ばない。


 乱れ始めた剣筋ではリュードに距離を取らすこともできない。

 かなり無理をして攻撃の速度と手数だけを保っている状態の冒険者。


 剣にかかる圧力は少なく、ただそれなりの速度があるだけで脅威は感じない。

 傍目には見えない変化。


 リュードはそれを好機と捉え一転して攻勢に出る。

 強めに力を込めて冒険者の剣を弾き返す。


 何の中身もない手数を維持するためだけの剣は容易く力負けして飛んでいく。

 けれど一本持っていかれたところでもう一本ある。


 冒険者が正常だったとしてそうしたかは知らないがこの操られた冒険者は剣を弾かれ、不安定な体勢のままに無理矢理もう一本の剣を振り下ろした。


「悪いが寝ていてもらう」


 遅くて軽い。

 ここまでで1番弱い攻撃だった。


 バランスが崩れた中で振り下ろされた剣には力も乗っていない。

 剣の重みだけの威力ほどしかない。


 あっさりと剣で受けてそのまま弾き飛ばすと男の手から剣が飛んでいく。

 2本もの武器を操っていたはずなのにあっという間に武器を失った。


 倒すだけなら簡単なのにわざわざこうしたのはしっかりと無力化するためである。

 ここから剣を使うと殺してしまう。


 剣を引いてリュードは大きく前に出て冒険者と距離を詰める。

 リュードの拳が腹に加減もなく入って冒険者の体がくの字に曲がって一瞬宙に浮く。


 トドメを刺すまでもなくそれで冒険者は土下座するような体勢で気絶した。


「むぅん!」


 ちょうどそのタイミングでコユキのピッチングが魔石を直撃した。

 見ると他の冒険者も倒されている。


「伏せろ!」


 リュードたちが地面に伏せる。

 コユキによって崩された魔石のいくつかが爆発をして地面が揺れる。


「おっ!」


 そしてまた体が少し大きくなる。


「これじゃあ縛る紐が足りないな」


「服脱がせて袖で縛っとけばいいですよ」


「なるほどね、そりゃ賢い」


 結局冒険者たちも全員制圧した。

 縛るためのロープが足りなかったので服を脱がせてそれで手足を拘束する。


 女性の冒険者だけちゃんとロープで縛っておく。


「よし、このまま行くぞ!」


 勢いづくリュードたち。

 印のある三か所目の呪いの模様にも守っている人がいた。


 だけどそれは一般市民で戦闘力は低い。

 ヤンキーみたいなケンカは得意そうな連中だけどそんなの酔っぱらい同士のケンカでもないのだから役に立たない。


 一般市民だから戦うのがちょっとはばかられるということはあった。

 まあ結局倒したけども。


 ちょっと素行の悪い奴なんかは警備隊の面々も積極的に倒して止めていたりした。


 そうして法則に則って地図には載っていないけどありそうなところも行ってみると予想は大当たりだった。

 やっぱり町を丸く囲むように呪いの模様が配置されているみたいであった。


 ただ森以外のところは草で隠してあったりとカモフラージュして見つかりにくいようにはしていた。


「これで一周か……」


 バレてるのかバレてないのかで言うとバレていなさそう。

 朝から日が落ちるまでかけて町の周りを一周して呪いの模様潰しをした。


 2番目の冒険者たちが1番まともだったなとリュードは振り返ってみて思う。

 一応他の呪いの模様にも護衛はつけてあったけれど警備隊の仲間はサンジェルのおかげで結構な人数誘拐される前に逃げることに成功していた。


 そのためなのか戦える人が少なく体つきの良い男性にとりあえず守らせているぐらいな状況だった。

 そして気づいてみればリュードたちもコユキと同じくらいの大きさになっていた。


 これぐらいなら普通の大きさの人とも何とか戦えそうではある。

 コユキも同じくらいの大きさでニッコニコだ。


 ただ一周して全部破壊したと思うのに元の大きさにまでは届かない。

 そうなるとと考えて思いついたのが中心にも同じように呪いを維持するための模様なり何なりある可能性だ。


 魔法陣でも大切なものはど真ん中にあったりする。

 まだ子供ぐらいの大きさでやや不利だがどこかで最終決戦しなきゃならないことは分かっていた。


「うわっ、なんだこれ」


 呪いの模様を破壊して回るのにもう夜になってしまった。

 中心になる元領主に行くにしても休みは必要だ。


 リュードは腕をコユキに抱きつかれながらも拠点に戻ってきた。

 そこには大量の人。


 家の中だけじゃなくて外にまでびっしりと困り顔の人で埋め尽くされていた。

 考えてみれば当然の話。


 拠点には町中の人がほとんど集まっていた。

 そしてリュードたちは呪いの模様を破壊して体が大きく戻った。


 と言うことは他の人たちだって戻っている。

 小人サイズではどうにか家に収まっていたが町中の人たちが集まっても収まる家なんて城でもない限り無理だろう。


 子供サイズでも簡単に限界を迎えた。

 みなどうしたらいいのかも分からずとりあえず家の周りに出ることで大きくなる体に潰されることだけは避けたのである。


 けれどもこんなもの隠れているとも言えない。

 ガッツリ人が集まっているだけである。


「どうします?」


 お留守番をしていた警備隊の人が困った顔をして戻ってきたサンジェルに話しかける。


「どうしますったって……」


 もう完全に日は暮れている。

 子供サイズとは言え大勢の人たちを隠すことができる場所になんて心当たりはない。


「どうする、シューナリュード」


 情けない困り顔でリュードの方を見るサンジェル。

 ここまで来ればここで1番知恵が回るのがリュードだと認めている。


「…………いや、もうこのまま1晩耐えてもらいましょう。


 明日、日が出たらすぐに元領主の館に突撃です」


 方法はない。

 隠れる場所を探す時間もないし手持ちの食料も小人だからどうにかなるぐらいしかない。


 もう偽物たちの視界にはバンバン入っちゃってるし取り繕いようもないのだから敵が来ないことを願って体を休めることにする。

 その間に待機組だった警備隊の人たちには自分達の家に向かってもらい、武器となるものを持ってきてもらったりもした。


 夜中に攻めてきたら被害は出るかもしれないが他に取りうる手段もない。

 交代交代で周りを警戒しながらみんな不安な夜を過ごすことになった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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