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リュード、パパになる1

「リューちゃん!」


「リュード!」


「……えっ、何?」


「何じゃない!」


「そうだよ、いきなりボーッとしてさ!」


 神の世界から戻ってみるとルフォンとラストが心配そうにリュードの顔を覗き込んでいた。


「あ、あぁ……ごめん」


 リュードは神物を持ったままの体勢であった。

 持った瞬間に神の世界に連れていたのだから当然と言えば当然。


 周りからすると急にリュードがぼんやりと突っ立ったままになったのだから心配もする。

 そこは全く時間が経っていないとはいかない弊害があった。


 そんなに長い時間じゃなかったけどものがものだけにみな不安そうにしていた。

 でもケーフィスに会ってたなんて言えないので笑ってごまかす。


「まさか神様に呼ばれてた、なんてことはないよな」


「えっ?


 いや、そんなわけ」


「ほぉーう?」


 ほんの冗談のつもりのウィドウの言葉がドンピシャすぎて一瞬動揺を隠しきれなかったリュード。

 他の人はごまかせてもウィドウはごまかせない。


「神様に呼ばれました……」


 ここは変にごまかすよりも素直に認めた方が早い。

 リュードはしぶしぶうなずいた。


 もうここにいるみんなは共に死線を乗り越えた戦友だ。

 多少のことはバレても平気なはず。


「なんてことにゃ!


 それは……羨ましいにゃ!」


 聖職者の面々もケフィズサンのみんなも驚いている。

 ウィドウもだ。


 リュードが言いにくいなら追及もしないつもりだったのにあっさりと認めてしまった。

 信用してくれていると考えると嬉しいが本当に神様に呼ばれていたなんて驚きの話である。


「神様のお声を聞くことができるやつは世界広しと言えどそうはいない。


 貴重な経験をしたな、リュード」


 先に神物に触れておけばよかったかななんて軽く冗談を言いながらリュードの肩に手を回すウィドウ。

 その際にちょっと神物に触ってみるけど神様に呼ばれることはない。


「お……おっ?」


 その時地面が揺れ出した。

 最初は小さな揺れだったのが大きくなっていき、立ってもいられなくなる。


 さらに揺れは激しくなり神殿の一部が崩れ出す。


「このままじゃ危ないな」


 ウィドウは魔法を使ってダリルの側に移動する。

 ダリルを引きずって地面を這うように移動してみんなのところに連れてくる。


 分かりやすい目印として神物を持つリュードのところにみんな少しずつ移動して集まる。


「くっ……ニャロ、ハルヴァイ!」


「りょりょ、了解にゃ!」


「分かった!」


「聖壁展開!」


 ニャロ、アルフォンス、ハルヴァイで聖壁を張る。

 神殿の柱が崩れ天井が崩落し始めている。


 誰も気づいていなかったが入ってきた大きな扉はいつの間にか無くなっていたので出られる場所もなかったのである。


「天井が!」


「うわああああ!」


 とうとう大きく天井が崩壊して振ってきた。

 みんなが体を寄せてなぜなのか視界が真っ白になった。


 ーーーーー


「うわああああ!」


 なぜなのか浮遊感。

 ギュンと体が長い距離をぶっ飛んだような気がした。


 極寒のダンジョンの扉が勢いよく開いた。

 そしてその中からリュードたちが飛び出してきた。


 下が分厚い雪で助かった。

 それぞれ雪に埋まるように着地したリュードたち。


 相当な勢いで扉から放り出されたけれど体は無傷であった。


「いでで……」


 傷はないけど雪に埋まるほどの勢いだと多少の痛みというか、痛いような感じはある。


「おーい!


 みんな無事かー?」


 ウィドウの声が聞こえる。


「無事でーす!」


「無事にゃー」


 それぞれの返事も聞こえる。

 どうやらみんないるみたいだ。


「雪に埋まって動けそうにない。


 誰か動けるか?」


「無理でーす」


「ちょっと厳しい」


 みんなも同じく雪に埋まっていた。

 リュードも体を動かそうとしてみるが雪が密着して身動きが取れない。


「ちょーとまってろ!」


 この声はブレアだ。


「ヒャッ!


 背中に雪入っちまった!


 ツメテェ!」


 なんだかガサゴソ音が聞こえる。

 雪から脱出しようとしているみたいだ。


 魔法で雪を溶かして体を動かすスペースを作っていたブレア。

 程なくしてザクザクと雪の上を歩く音が聞こえてくる。


「えーと近いのは……


 おい、なんだか快適そうだな?」


 ブレアの近くに埋まっていたのはリュードだった。

 ふっと暗くなりブレアが上から埋まったリュードを覗き込む。

 

 雪の中にいると思いの外暖かい。

 することもないし神物を抱えたまま青い空を見ているとなんだか眠気が襲ってくるのだ。


「ほら、掴まれ」


「悪いな」


 ブレアの手を取って雪から脱出するリュード。

 そうして他のみんなも穴から救出する。


「全員いるな……ブレア?」


 サッと見た限り全員いる。

 みんな大丈夫そうだと思っているとブレアがまだ雪に空いた穴に近づく。


 全員助けたと気づいていないブレアはまだ埋まっている人がいるかもと穴を覗き込んだ。

 

「えっ?


 ……お、おいっ!


 みんな、ちょっと来てくれよ!」


 すでにみんないるのに何を見つけたというのか。

 ひどく慌てるブレアのところにみんな集まる。


「どうした?」


「こ、これは……」


「なになになににゃ?」


「ええっ!?」


 穴を覗き込んだみんなが1人残らず驚いた。


「ん」


 白い髪をした頭にフワフワの白い毛のケモミミ。

 それに腰の辺りに見えるのはこれまたフワフワした尻尾。


 しかも5本。


「わぁ……でもかわいいにゃあ〜」


 助けてくれと手を伸ばすそれは少女だった。


「ダンジョンのボス……」


「にしてはちっちゃいな」


 ダンジョンのボスであった五尾の白キツネのミニ版、子供版といったところ。

 みんなの頭にハテナマークが浮かぶ。


 これはどういうことだろうかと。


 ダンジョンの中では大人の姿であった五尾の白キツネが子供姿になってダンジョンの外にいる。


「と、とりあえず助けてあげようか……」


 このままにしておくのもかわいそう。

 攻撃してくるわけでもないしルフォンが助けようと手を伸ばす。


「なんで?」


 白キツネ少女も手を伸ばし、ルフォンを手を伸ばす。

 届く距離に手があるのに白キツネ少女はルフォンの手を取らない。


「どうやらお前をご指名だぞ、リュード」


「えっ、俺?」


「多分な」


 ウィドウは白キツネ少女の視線を辿る。

 その先にはリュードがいる。


 もしかしてと思う。


 リュードが顔を覗かせると白キツネ少女の目が少し輝く。


「……パパ!」


「ぱ……パパァ?」


 伸ばしたリュードの手を取る白キツネ少女。


「え、えええっ!?」


「リュード、いつの間に子供を!?」


「い、いやいやいや!


 変なこと言うなよ!


 子供なんていないって!」


 リュードの手を握ったまま穴から出てこずリュードをジッと見つめる白キツネ少女。


「ひとまず出してやれよ」


「いや……あっちが力をっ!」


「リューちゃん!」


 白キツネ少女の方が脱出しようとしてこないから無理だと言おうとしたリュードが穴に落ちた。

 白キツネ少女が急にリュードを引っ張ったのだ。


 やはり敵だったかとみんなが慌てて穴を覗き込むとリュードは無事だった。


「パパァ〜」


「な、なんなんだよ……」


 穴の中でリュードは白キツネ少女に抱きつかれて頬を擦り寄せられていた。


「大……丈夫そうだな」


 襲われたのだと焦った。

 ある意味では襲われているけど平和的な襲われだ。


 ーーーーー


 リュード命名コユキ。

 白キツネ少女の名前だ。


 極寒のダンジョンの扉は消えてしまい、コユキだけが残された。

 敵意は無くリュードのことをパパと呼んで懐いている。


「パパ!」


「ダーメ、ママがいるでしょ?」


「むう、ママ……」


 そして今はルフォンのことをママと呼んでいる。

 どうにも頭にあるミミが同じことからママと認識したようだ。


 なんだか色々あったけどとりあえず極寒のダンジョンはクリアして神物を取り戻すことには成功した。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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