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白狐姫3

 無力化出来ればベストだったが出来なくてもただ諦めることなんてしない。

 これ以上魔法が持たないと感じたウィドウは作戦を変えた。


 五尾の白キツネの火球は影を破って飛び出した。

 しかし火球はリュードに当たらず横を通り過ぎていった。


 防ぎ切るのは無理でも軌道を変えるくらいなら出来る。

 ウィドウは影から出た火球の軌道をリュードから逸らして出したのだ。


「この!


 リューちゃんばっかり狙って!」


 最初の不意打ちもリュードに対してだった。

 リュードに対しての当たりがなんだかすごく強い。


 両手に持ったナイフを振るい、五尾の白キツネに襲いかかる。

 右手のナイフ、そして左手のナイフ。


 それぞれ尻尾で防ぐ五尾の白キツネ。


「くらえ!」


 そしてルフォンはちょっと体をねじって尻尾を繰り出す。

 予想外の攻撃に腕を上げて尻尾を防ぐ五尾の白キツネだけど腕に衝撃はなく、ポフっと優しく尻尾が触れただけだった。


 五尾の白キツネのような攻撃力はルフォンの尻尾にありはしない。

 もしかしたら魔人化して魔力を込めて、かなり練習したら使えるかもしれないけどそんな練習したこともない。


 ただ五尾の白キツネ基準では自分と同じく武器になり得ると思ったので防いだ。

 ルフォンは当然尻尾で攻撃してやるつもりなんてない。


 一瞬気をひければ良いと思っていた。


「こっちが本命!」


 ルフォンの蹴りが五尾の白キツネの腹部にモロに決まる。

 大きく怯んだ五尾の白キツネだったけれどその目はルフォンではなくリュードに向いていた。


 五尾の白キツネから見た時、リュードの周りには魔力が渦巻いているように見えていた。

 強い魔力をある程度コントロールしているものの溢れ出ている魔力の全てを完全には抑えられていない。


 そんな魔力がピタリと凪いでいた。

 剣だけじゃない。


 まるで膜のようにリュードの体を魔力が薄く覆っている。

 リュードの黒い瞳が五尾の白キツネを捉えた。


「ほお?


 あれは……」


 表現するならゾーンに入ったとでも言ったらいいのか。

 リュードは一瞬で五尾の白キツネと距離を詰めた。


 ゾワッと全身の毛が逆立つ感覚。

 危険と恐怖を感じ、五尾の白キツネは尻尾を前に出してとりあえず何が来てもいいように防御しようとした。


 白い塊にも見えるようになった五尾の白キツネ。

 リュードは剣を大きく振り上げて剣に込められた魔力を雷属性に変化させる。


「若い世代の台頭は喜ばしいものだな」


 縦に真っ直ぐ閃光が走ったようだった。

 ほんの一瞬遅れて雷鳴の音が轟き、五尾の白キツネは体に広がる電撃にビクビクと体を震わせた。


「良いところは貰おう。


 年寄りの強かさも戦いには必要だ」


 五尾の白キツネは全ての尻尾と引き換えにリュードの斬撃を防いだ。

 全てを込めた一撃だったが倒せなかった。


 痛みと怒りに歪んだ表情を浮かべた五尾の白キツネだったがすぐに驚愕の表情に変わった。

 どこまでも冷静なウィドウ。


 リュードの攻撃がどこまで通じるにしてもその先を引き取るつもりで動いていた。

 倒せれば良いし、倒せなくても大きな隙ができることは間違い無いと思っていた。


 ウィドウが突き出した剣は五尾の白キツネの胸を突き抜けていた。


「あ……あっ」


 大きく目を見開いた五尾の白キツネ。

 ウィドウが剣を抜くと胸から血が流れる。


 何を思ったのか知ることはない。

 五尾の白キツネはゆっくりとリュードに手を伸ばして倒れながら魔力の粒子となって消えていった。


 何かを言おうとしていたようにも見えなくもなかった。


「勝利だ!」


 ウィドウが剣を振り上げる。

 分かりやすく魔力となって消えたがみんながそれぞれ様子を伺うようにしているのできっかけを与える。


「やった!」


 激戦だった。

 誰が死んでもおかしくない戦いであった。


 五尾の白キツネを倒した喜びと安堵に包まれる。

 まだ完全な確認は取れていないけれどアレがボスじゃなかったらもう攻略は諦める。


 体が力が抜けてリュードは地面にへたり込む。


「な、なんだ!?」


 なんならこれでダンジョンの魔物の攻略も終わりだと思ったらダンジョンが大きく揺れた。

 立っていられないほどの強い揺れ。


 身動きを取るのも難しいほどの揺れだけどリュードはなんとか這うように移動してルフォンとラストのところまで移動する。


「あ、あれ!」


「何が起きてるんだ?」


 ラストが空を指差した。

 魔力の粒子が集まってきている。


 どこからか大量の魔力の粒子が集まって1つの塊となる。


「聖壁を展開するぞ!」


 ダリルが叫ぶ。

 何が起ころうと備えておいて損はない。


 聖職者たちが一斉に神聖力を使ってみんなを壁で覆う。


「うわっ!」


「クッ!」


 爆発のような強い光が魔力の粒子の塊から放たれて誰も目を開けていられなかった。

 衝撃もなくただの閃光は聖壁では防げない。


「……みんな無事か?」


 ウィドウが眩んだ目をうっすらと開けるがまだよく見えない。


「大丈夫です」

 

「ちょっと目が痛いにゃ……」


「目以外は無事だな」


 強い光に目が眩んだ以外にダメージを負った人はいない。

 無事の返事が聞こえてきてホッと安心する。


 聖壁にも強い力はかかっていないので安全ではある。


「ちょっと待つにゃ……」


 ゆらゆらと手を伸ばして触れた相手の目を神聖力で治すニャロ。


「終わりじゃなかったのか……」


 たまたまその相手はリュードだった。

 眩んだ目が治ったリュード。


 その目には巨大な扉が映っていた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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