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白狐姫2

 尻尾を1本失っても眉1つ動かさない五尾の白キツネ。


「させるかよ!」


 肝心の本人が尻尾に殴り飛ばされて五尾の白キツネを拘束していた魔法が解けた。

 ウィドウにトドメを刺そうと動き出した五尾の白キツネにリュードが飛びかかった。


 魔人化をしたリュードはニャロの支援を受けて左手を伸ばして五尾の白キツネの左腕を掴んだ。

 力一杯に五尾の白キツネを引き寄せてウィドウのお返しとばかりに顔を殴りつけた。


 地面を転がっていく五尾の白キツネ。

 鼻が折れるような感触があったので全くのノーダメージではないはずだ。


「リューちゃん!」


「心配かけてすまないな」


 聖者の治療はすごいものだとリュードは思った。

 完全に折れていた腕が繋がり、痛みすら微塵もなくなった。


 殴りつけても折れたところは全く痛まない。


「久々にあったまきた!」


 とんでもない不意打ちかまされて無様な姿晒した。

 女性の姿をしているので戦うのちょっとばかり嫌だなと思っていたけどそんな感情不意打ちと共に消し飛んだ。


 気づいたらウィドウもやられているし魔人化したためにウロコが急速に冷えていくような感覚があるが寒さを気にする場合じゃない。


「アルフォンス、ウィドウの治療に!


 ニャロはそのままリュードを、俺はルフォンを強化する」


「みんなフォロー頼むぜ!」


 ダリルは速さに欠けることを理解している。

 ここは無理に戦うのではなく速さのある人に任せるのが良いと判断する。


 尻尾を支えに起き上がる五尾の白キツネ。

 まるで人のように垂れる赤い鼻血を手の甲で拭う。


 頬にまで赤い血の線が拭いきれずに引かれる。

 鼻にシワを寄せ威嚇するように尖った歯を見せる。


 それぐらいで怯むか、怒ってるのはリュードたちだって同じである。


「こっちもいるかんね!」


 ラストが矢を放つ。

 ケフィズサンのメンバーも魔法で攻撃したり、距離をとりつつ後ろに回り込んだりと気を散らそうとする。


 五尾の白キツネが怒りの声を上げる。

 キツネの声にも、女性の声にも聞こえるような雄叫びをあげて五尾の白キツネの周りに青い炎が渦巻いた。


 矢や魔法を打ち消して、五尾の白キツネは炎の渦の中から飛び出してリュードを目がけた。

 尻尾の毛が逆立ってボワッと一回り大きくなる。


 やはり本能的に感じる魔力の大きさは五尾の白キツネにリュードを危険な相手だと認識させた。

 同時に何か惹かれるものをリュードに感じていた。


「多少のケガなら任せるにゃ!」


 リュードは剣を抜いて五尾の白キツネに応戦するが中々キツい相手だと思う。

 まるで何人も同時に相手をしているような手数の多さ。


 4本の尻尾と両手両足を使った猛攻は防ぐので精一杯。

 けれどリュードも1人ではない。


 ルフォンやケフィズサンのメンバーも邪魔にならないようにしながら攻撃を加える。

 五尾の白キツネはかわしたり尻尾を巧みに操って攻撃を防いだりしている。


 そんなわずかな隙にリュードは無理矢理反撃を繰り出す。

 そのためにかわしきれなくて爪が体を掠めていったりするけれどニャロはその度に強化をわずかに下げて回復に神聖力を回したりと上手く戦いを見て神聖力の扱いをコントロールしていた。


「クッ!」


 五尾の白キツネの攻撃も打撃や爪だけじゃない。

 尻尾に魔力を込めて突き刺そうとしたり消えない火球を近距離で打ち出してきたりもする。


 一瞬も油断できない接近戦闘が続く。

 たった1本でも尻尾が無くなっていて助かったと思う。


 5本満足にあったら相当厳しい戦いになっていた。


「う……負けるか!」


 蹴りが脇腹に当たり、突き抜けるような衝撃がリュードを襲う。

 リュードは踏ん張って五尾の白キツネの足に腕を回してホールドする。


「やあああっ!」


「待たせたな!」


 リュードには五尾の白キツネの後ろでルフォンとウィドウが機会を伺っているのが見えていた。

 足を掴んだ隙に2人が一斉に切りかかる。


「なっ!」


「クゥッ!」


「2人とも……グッ!」


 真後ろからの攻撃。

 見えてないはずなのに五尾の白キツネはルフォンとウィドウの攻撃をそれぞれ1本の尻尾でふわりと受け止めた。


 そして残る1本ずつで2人を殴り、押さえられていない足でリュードのアゴを蹴り上げて縦に一回転して華麗に着地してみせた。


「後ろに目でもついてるのか……」


「ま、これで仕切り直しだ」


 リュードもウィドウも回復した。

 こちらもとしてはフルメンバー。


 一方で五尾の白キツネは尻尾を1本失っている。

 ややこちらが有利な仕切り直しとなった。


 純粋に能力が高い五尾の白キツネ。

 こちらが勝つためには相手を上回らなければいけない。


 だがしかしリュードだってまだ全力を出し切ったわけじゃない。


 (集中だ……もっと集中するんだ!)


 リュードは戦いの中で感覚を研ぎ澄ませていく。

 剣がまとう魔力から無駄がなくなっていき刃に沿うように均一になっていく。


 リュードたちは完全に五尾の白キツネを囲むようにして戦っている。

 服を着替えたブレスも戻ってきていて様々な方向から攻撃をする。


 それでも五尾の白キツネは尻尾を使って攻撃をいなす。

 時に防ぎ、時にかわす。


 尻尾を使って急な方向転換もお手のもので中々ちゃんと五尾の白キツネを捉えられない。

 リュードはルフォンとラストに視線を送った。


 それだけで伝わる。


 ラストが矢を放つ。

 五尾の白キツネの足元に刺さった矢は全く気にされていなかったけれど魔力が大きく爆発した。


 突然足元で起きた爆発にバランスを崩す。

 隙をついてルフォンが接近してナイフを振る。


「影が道をつなぐ」


 何かをしようとしている。

 それを察したウィドウは闇魔法で五尾の白キツネの後ろに回り込んでさらに気を引こうとする。


 それだけしても五尾の白キツネには傷もつけられない。

 ただ周りも戦いのベテランたち。


 すぐに意図を汲み取って魔法や攻撃を加え始める。

 五尾の白キツネも防御に余裕がなくなる。


「集中……」


 リュードは低めに構えた剣の先を見つめて集中力を高めていた。

 剣に込める魔力は大きく、それでいながら勝手気ままに拡散しないようにコントロールする。


 全体を美しく均一に剣に魔力のメッキでも施すように魔力を圧縮して薄くまとわせていく。

 どこかを均一にするとどこかが乱れる。


 それでも集中が高まるに連れて魔力が凪いだ水面のように滑らかに剣と一体になっていく。


「リューちゃん!」


 戦いに参加していないリュードに五尾の白キツネが気づいた。

 異様な雰囲気に危険を察知してリュードを倒さねばやられると本能的に感じる。


 ただ今のリュードは危険な雰囲気がありながらも集中するためにただ突っ立っているだけ。

 五尾の白キツネは尻尾の先を1つに集めた。


 三尾の時にやっていたように力を集中させて火球を作り出す。

 リュードの身長ほどもある大きな火球が作り出されて、すぐさま打ち出された。


 集中しているリュードはそれに気づいていない。


「闇が魔を捉える!」


 最悪の未来を予想したのはウィドウ以外の全員。

 ただ1人、ウィドウだけが動いていた。


 リュードの影が地面から離れて立体的に盛り上がった。

 人型の影は風呂敷のように広がってリュードに向かって飛ぶ火球を包み込む。


「くっ……なんで力だ……」


 本来なら魔法を捉えて消滅させる防御魔法。

 しかし包み込んだ火球は込められた魔力が多くて威力が高く消滅させられない。


「俺だってSランクとしての矜持がある!」


 もはや火球を捉えておくことすら限界。

 ウィドウは考え方を変えた。


 闇の中から火球が飛び出して魔法が破られてしまった。


「リュードは傷付けさせぬぞ!」


 防げなくともリュードに当たらなければいい。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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