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白狐姫1

 流れ的に言えば次の白キツネにはまた尻尾が増えているはずだ。

 ここまでで4本。


 次は5本になる。

 四尾でウィドウは安全のために闇魔法を出すことに決めた。


 五尾になるとどうなるのか誰にも予想ができなかった。


「あ、あれは……」


「場所もさることながら……人なのか?」


 白い世界における異様。

 誰もが明らかに違う雰囲気にとうとう白キツネのボスに辿り着いたのだと思った。


 森が開けた。

 まるでそこだけ春でもきたように円形に雪がなく草が茂っている。


 その真ん中に5本の尻尾を持つ白い女性が立っていた。

 真っ白な髪がたなびく頭には白いキツネミミが生えていて、見る人の目を奪うような美しい顔立ちをしている。


 白に染まったような容姿の中で目の縁に赤い隈取りが引いてある。

 衣装は真っ白な和服にも似た作りの服を着ていて全体的な世界観はこの世界で初めて見る感じだった。


 空を見上げる五尾の白キツネ。

 絵になりそうな幻想的な光景だが他と異なる異常な光景が広がる時は最高な時か、最悪な時と相場が決まっている。


 身を隠す場所もない不思議な円形の草原に足を踏み入れることを誰もがためらった。

 しかしやらねばならない。


 ガッチリと盾を構えたダリルを先頭にして草地に足を踏み入れる。

 しっかりと大地を踏みしめられる感覚が心地よいがそんなこと言ってられない。


 五尾の白キツネのミミがピクリと動く。

 音を聞いて侵入者に気がついたようだ。


 視線を空からリュードたち一行に移す。

 端から順に1人1人顔を見ていく。


「リュード!」


 五尾の白キツネの視線がリュードで止まった。

 パタリと五尾の白キツネの尻尾が振られて視線で射抜かれたリュードはとっさに腕を上げてガードした。


 ほとんど本能的な行動だった。

 腕が折れる音が聞こえた。


 後ろに飛ばされたリュードは草原の外にある木にぶつかって地面に倒れ込んだ。

 木から落ちる雪がリュードの姿を覆い隠して無事が確認できない。


「ぬう!」


「はっ!」


 ダリルとウィドウが突如としてリュードを殴りつけた五尾の白キツネに攻撃を仕掛ける。

 一瞬でリュードに距離を詰めてきた五尾の白キツネはウィドウですらギリギリ姿を捉えられるぐらいだった。


「ニャロ!」


「はいにゃ!」


 ニャロが走ってリュードのところに行く。

 ガードはしたので死んではいないはずだから治療さえすれば戦線に復帰できる。


 五尾の白キツネはダリルとウィドウの攻撃をかわして距離を取る。


「……速いな」


 これまでの白キツネも十分速かったがボスとまでなると1つ2つ格が違う。


「よくもリューちゃんを!」


 雪のない地面。

 しっかりと踏みしめられるならルフォンの速さも最大限に活かせる。


 ニャロがリュードの方に向かったので五尾の白キツネの気を引かなきゃいけない。

 最初にリュードを狙った理由は謎だけどまたリュードを狙わないとも限らない。


 五尾の白キツネはルフォンをナイフを見切ってかわしたが頬を浅く切り裂かれる。

 ルフォンの速さが想定よりも速かった。


「ルフォン避けて!」


 ラストの声が聞こえた。

 視界の端で五尾の白キツネの尻尾が一本動いているのが見えた。


 ルフォンの頭ほどの火球が尻尾の先に生み出されて打ち出される。

 のけぞりながら身をよじる。


 ルフォンの胸スレスレを火球が通り過ぎていく。

 ラストが声を出さなかったら気づけなかった。


「グァッ……!」


 火球に気を取られたルフォン。

 逆から尻尾がルフォンのことを叩き飛ばした。


「ルフォン、大丈夫!?」


「う、うん……」


「待ってください!


 今治しますので」


 アルフォンスがルフォンの治療をする。

 尻尾が五尾の白キツネの武器。


 魔法も放てるし普通に攻撃もできる。

 これまでの白キツネは攻撃するか魔法を使うかだったけれど魔法を使いながら攻撃もすることができた。


「人化した魔物がボスとはな……


 出し惜しみもできないな!」


 人化した魔物は大きな脅威だ。

 このダンジョンのボスというだけでも強いだろうにこのような魔物の強さは計り知れない。


 幸いにして取り巻きの魔物はいない。

 五尾の白キツネに集中はできる。


 裏を返せば1体で十分強いとも言えるのだけど。


 速さを活かした相手ならそうさせないのが定石。

 五尾の白キツネを取り囲むようにして布陣する。


「ブレス、危険だ!」


「うわっ、くっ、た、助けてくれ!」


 ルフォンを中心にして攻撃を仕掛けていたが五尾の白キツネはなんと攻撃を掻い潜ってブレスを狙った。

 流石にゴールド+ランクの冒険者、前衛職でないからと言ってただ仲間に守られているのを期待してるだけではない。


 腹部を突き刺そうとした五尾の白キツネの尻尾をかわしたブレス。

 しかし自在に動く5本の尻尾は魔法使いであるブレスに対処するのは難しい。


 尻尾だけでなくさらに爪まで繰り出されてブレスは何とか回避をする。

 けれど視界の外に回り込むように伸ばされた尻尾から打ち出された火球に対して反応が遅れた。


 直撃は避けたが脇腹を掠め、服に火がついた。

 消えない炎、ブレスの顔から血の気がひく。


「すまない、ブレス!」


 ダリルがメイスと盾を投げ捨てる。

 両手が光に包まれる。


 聖壁の応用で両手を防御魔法で包み込んで炎を防いでブレスの服を力一杯に引き裂いて捨てる。

 情けなく服を破り捨てられたブレス。


 恥ずかしくはあるだろうが恥ずかしさを感じられるのも生きてこそだ。


「消えない火……やはり聖火なのか?」


「そうかもしれません。


 あのキツネ……神聖力を感じます」


 消えない性質を持つ特殊な火といえば聖火である。

 神聖力があるうちは消えないで燃え続ける不思議なものでウィドウはずっと魔物がそのような火を魔物が扱えることに疑問を感じていた。


 ここにきて五尾の白キツネからわずかに神聖力を感じる。


「いや、これは神性かもしれません」


「なんだと!」


「聖火……それに神性。


 もしかしたら神物が近いのかもしれません!」


「さ、寒い……」


 とんでもないことに気づいた一行の中で震えるブレス。

 雪がなくとも空気の冷たさは健在だ。


 下着一枚では寒さも防げない。

 みんなでフォローしないながらブレスは下がる。


 女性のみてくれをしているのでためらいを最初は感じていたダリルだったけれどためらっていると誰かがケガをする。


「ふぅん!」


 横殴りの尻尾を体で受けながら掴む。

 体の芯に響くような衝撃があるがなんとか1本尻尾を押さえる。


 これで相手も動けないはず。


「ぬわああ!」


 そのまま動きを制限してやろうと思ったダリルだったが甘かった。

 相手は魔物。

 

 四尾の白キツネだってパワーでいくと相当なものだった。

 五尾になり人化して、さらにボスにまでなるとパワーだって人を遥かに上回る。


 尻尾を縦に振った五尾の白キツネ。

 ダリルがブンと空中に投げ出されて地面に落ちる。


「君の犠牲は忘れない」


 五尾の白キツネの背後にウィドウが迫る。

 逃げようとした五尾の白キツネは何かに引っ張れたように動けないことに気づいた。


 足元の影にはウィドウの黒い魔力をまとったナイフが刺さっている。

 逃げられないように闇魔法で移動を制限していた。


 これまでの白キツネも防御は低かった。

 一撃で終わらせる。


 そのつもりで刃が見えなくなるほど真っ黒な魔力を剣に込め横一閃に剣を振った。


「ウィドウ!」


 尻尾でウィドウの剣を防ごうとしているのは見えた。

 同時に何か白いものが迫ってきてウィドウの顔を殴りつけた。


 五尾の白キツネは肉を切らせて骨を断ってきた。

 尻尾の1本は切り落とせた。


 しかしそのかわり他の尻尾でウィドウの顔面を殴りつけたのであった。

 殴られて剣を振り切れなかった。


 攻撃は最大の防御という言葉もある。

 攻撃を中断させるのに攻撃するという荒技で対抗してきたのであった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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