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増える尻尾4

 二尾の白キツネがかき乱しながら外から火球を飛ばしてくる。

 当たっても多少痛いで済むスノーケイブの雪玉とは大違いで当たれば焼死の火球は気を使う。


「奴は私に任せろ!」


 戦いの中をウィドウが飛び出して三尾の白キツネに向かう。

 悠長に二尾の白キツネを倒してからよりも誰かが三尾の白キツネの気をひいた方がいいと判断した。


 三尾の白キツネは火球を放つ。


「黒い魔力……」


 火属性に耐性のある白キツネに火属性をまとった剣では効果が薄い。

 ウィドウの剣がまとった魔力が黒く変化をする。


 連続して放たれた火球をかわし、切って捨てる。

 リュードやルフォンは速さで無理やりついていっている感じだがウィドウは相手をよく見て先読みして白キツネの動きについていっている。


 逃げながら火球を放つがウィドウには通じない。

 熟練した戦い方。


 まだ二尾の白キツネも片付いていないのに参考になるなとリュードはウィドウの戦いに視線が向いてしまった。

 経験と確かな観察眼に裏打ちされた冷徹で無情な剣は見習うことが多い。


「楽な相手ではなくなったな」


 ケガ人もなく白キツネは倒したけれどかなり戦闘における余裕はなくなった。

 相手も遠距離攻撃を仕掛けてくることが分かったのでこれまでと戦い方も変えていかねばならない。


 消えない炎の方が厄介なので先に遠距離攻撃を倒したいという思いがある。

 けれども懸念はある。


「なあ、あの尻尾……どこまで増えると思う?」


 倒木を見つけたのでそこで休憩を取ることにした。

 倒れた木を切って薪木にして大きめに焚き火にする。


 ポツリとブレスがつぶやいた。

 ここまで白キツネの尻尾は1本から3本に増えた。


 尻尾が増えるたびに白キツネの戦闘力は増して3本になると魔法まで放つようになった。

 気にしているのは尻尾の本数よりもどこまで白キツネが強くなるかである。


 それともう1つ予想されることがある。

 もう白キツネの集団に一尾はいない。


 最初は一尾だけで二尾が混ざり、二尾だけになり、三尾が混ざりときている。

 となると三尾の白キツネだけになることも予想されるのだ。


 全部の白キツネがあの消えない炎を放ってくるととても面倒な相手になる。

 四尾、五尾と尻尾が増えていくとどうなるのか予想もつかない。


「案外ここで終わりとか?」


 ラストの楽観的な予想。

 希望でもあるかもしれない。


 三尾まで増えて次はボス。

 流れ的には悪くないので全然あり得る予想ではある。


 それなら全然戦える。


「9かな?」


「9!?


 そりゃあ辛いだろ」


 リュードの大胆予想。

 前世の記憶があるリュードにしてみると九尾の狐なんてイメージがあるのでもしかするともしかするかもしれない。


 今の強くなる速さで九尾まで増えたら1体相手にするだけでも無理になるかもしれないけど妄想するのは自由だ。


 みんな口々に9は無いと言う。

 中途半端な数字だしいないだろうというよりはそこまでいってほしくないのだ。


「今のやつの3倍だぞ?


 3倍強くなるわけじゃないけどそこまでいったら本当に攻略不可になっちまう」


「そうだにゃ……いっても5ぐらいかにゃ?」


「それでも多いが妥当なとこかな。


 あんまり増えないでほしいけどさ」


 どこが終わりか分からない。

 どこまで戦い、どこで退くか、どれほど力を温存し、どれほど力を出すか。


 先の見えない戦いにペース配分すらもままならない。

 けれど温存して戦うのも辛くはなってきてしまった。


 仮にリュードの言うように9まであるとしたら多少の余力を残しておかないとその前に力尽きてしまう。

 難しい選択を迫られている。


 幸いなことに休んでいる最中に白キツネの襲撃はなかった。

 外のような環境ではあるがダンジョンの中。


 一定程度進むと次の魔物が出てくるウェーブタイプの出現パターンなのではないかとウィドウは言っていた。

 レッドットベアは何ヶ所かにあるリスポーンポイントにランダムに出現するタイプ。


 スノーケイブは向こうのほうから襲撃してくるタイプ。

 よくみるとパターンというか、ルールのようなものがある。


 一応ダンジョンなんだな。


 休憩のつもりだったけれどそのままそこに泊まることにした。

 ダリルも完全な本調子ではないし休めるタイミングで休んでおく。


 白キツネの襲撃が本当に進むと出てくるウェーブタイプなら一戦ごとに休んでもいい。

 ルフォンのご飯を食べてしっかりとテントの中を温めて眠る。


 常に緊張状態あった中でこうして一度ゆるりと休めるとかなり体の調子が回復した気がした。


「前方……全部三尾だ」


 7体の白キツネ。

 その全てが三尾だった。


 数が多すぎないのがせめてもの救いだが全部が三尾になった時にどう戦ってくるのかみんな待ち構える。

 走りながら尻尾を寄せて火球を生み出す。


 魔法は大きくなれば大きくなるほど止まって集中する必要があるが白キツネの火球は走りながらでも放つことに問題はない。

 1体につき1個の火球が放たれる。


 回避したり魔法で相殺したりする間に三尾の白キツネは目前まで迫っていた。

 3体の白キツネは速さを緩め、4体が前に出る。


 役割を分けている。


「へへーん!」


「強みが仇となったな!」


 あえて火の魔法を放ったブレス。

 火属性に耐性のある白キツネはなんの躊躇いもなく魔法に突っ込んでいったが効かないことなんて分かっている。


 魔法を突き破った三尾の白キツネの額に矢が刺さった。

 ラストとブレスの連携。


 ブレスの魔法の直後にラストは矢を放った。

 火の魔法が目隠しとなり白キツネは矢に気づかず、しかもこれまでと同じく火の魔法をそのまま頭から突っ込んで消してくれた。


 防御は尻尾が増えようとあまり変わらない。

 容易く頭に矢が刺さって1体倒すことができた。


「ラスト危ない!」


「グエッ!」


 リュードがラストを引っ張る。

 火球がラストめがけて飛んできていたのだ。


「知恵もつけているな」


 相手の隙を見ている。

 火球を放つ三尾の白キツネはやや散開するようにして色々な方向から狙ってきている。


「ふん、こっちだって知恵はあるんだよ!


 アイスウォール!」


 ブレスが氷で壁を作る。

 下がって火球を放つ隙を伺う白キツネを遮断する。


「へん!


 バーカ!」


 離れて戦うなら分断してしまえばいい。

 多少魔力の消耗は激しいが安全に戦う。


「えっ、ちょっと待てよ!」


 しかし氷の壁が炎で燃え出す。

 これならもっと魔力の消費は激しくても土壁方が良かったかとブレスは舌打ちする。


「まあ、十分だ!」


 けれど氷の壁が溶けて向こうの白キツネが来るまでには少し時間がある。

 その間に集中して三尾の白キツネを倒す。


「消すぞ!」


 接近してきた三尾の白キツネを倒してリュードたちは壁近くまで行く。

 ブレスが氷の壁を消すと三尾の白キツネたちからするとすぐ近くにいきなりリュードたちがいることになる。


 驚く白キツネに一斉に攻撃を仕掛ける。


「賢いんだから賢くないんだか分からないにゃ」


 役割分担なんかの知恵はあるがあっさりと分断されたり火の魔法の後ろの矢に気づかなかったりと半端な賢さがある。


「すまないな、アルフォンス」


「いえいえ。


 みなさんを守ってのケガですので」


 ダリルは浅く腕に切り傷をつけられた。

 無傷での完勝も難しくなってきた。


 時間はかかるがしっかりと息を整えて先に進むことにする。

 全部が三尾になった。


 そうなると次はラストの言うようにボスか、それとも尻尾が増えるのか。

 やや緊張した面持ちで一行は歩みを進める。


「あー……尻尾が4本が2体……」


「まーだ増えるのか……」


 三尾上限説は早くも崩れ去った。

 今度は尻尾が4本に分かれた白キツネが三尾の白キツネに混じって走ってきていた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ニートに成る為にダンジョンを造り出した神器の「働きたく無いでゴザル」と言う防衛反応(白血球的な)に見えてきた。
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