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白き姫を取り戻せ6

 雪が舞い、砕けた氷が飛び散る。

 飛んできた氷の破片がリュードの頬をかすめて浅く切り裂く。


 飛び上がったリュードは投げて壁に刺さった剣の上に着地する。

 抱きかかえたラストに覆いかぶさるようにして氷の破片から守る。


「……ダ、ダリル!」


 逃げるのに必死でダリルの方まで気が回らなかった。

 ようやく轟音が止んで振り返るとそこには砕けた氷壁が山となっていた。


 リュードたちがいる位置よりも下では氷と雪の煙がまだ状況を隠している。

 少しばかり無理矢理過ぎた。


 まさか上部全体が崩壊するだなんて思いもしない。

 ようやく晴れて来たけれど見えるのは氷の山でダリルの姿はない。


「そんな……ダリル…………」


 こんな大量の氷の下敷きになったら助からない。

 万が一命があっても見つけ出すことは不可能に近い。


 リュードの顔から血の気がひく。

 こんなところで死んでいい人ではないのに。


 みんなになんと説明したらいいのだ。


 地面に降りてラストを下ろす。

 ラストも同じようなことを考えているのか泣きそうな顔をしている。


「ぬうわあっ!」


 氷の山の一部が爆発する。


「ぬおおおっ!」


「ダリル……!」


「リュード、行こう!」


 一瞬氷が吹き飛ぶがすぐに崩れて来てそこが埋まってしまう。

 リュードとラストは爆発が起きたところを掘る。


「ぐぬぬ……しゃらくせえ!」


 この際魔力の残量など気にしてられない。

 火属性はあんまり得意じゃないけど魔力量だけならある。


 リュードはとにかく熱を重視して火を起こす。


「うおおおっ!」


「私もやるよー!」


 ラストも魔法で火を起こす。

 基礎の基礎として火を起こすぐらいのことはラストも習っている。


 2人で氷を溶かしていく。

 想像していたよりも解けるのに時間がかかりダリルのことが心配になる。


「待ってろダリルー!」


 ーーーーー


「ふっ……助かったよリュード。


 よくテレサに言われたものだ、もう少し考えて力を使いなさいとね。


 今ようやくその意味がわかった気がするよ」


 こんな二次災害はリュードとて予想できなかった。

 さらに三次災害としてビッシャビシャになったダリル。


 上から氷を溶かしたために下にいたダリルは溶けた氷水を全て浴びた。

 その甲斐あって助けられたのだけど少しだけ溺れかけた。


「体を拭きながらでも早くここを移動しよう」


 穴を開けた上部だけが今は崩壊しているが他のところも崩壊しないとも限らない。

 体を乾かすにしてもここにいては危険である。


 もう一度生き埋めになったらそれこそ助からない。

 ちなみにダリルは神聖力による防御魔法を咄嗟に張ってなんとか氷に潰されずに済んでいた。


 リュードの声かけがなかったらそのまま生き埋めだっただろう。


「すまないな……」


 神聖力も魔力も脱出のために使い果たしたダリル。

 あと少し助けるのが遅かったら危険であった。


 リュードに肩を抱えられて氷の山を登っていく。


「誰かに肩を貸してもらうことなど長らく記憶にないな」


 滑らないように気をつけて氷の山の頂点を過ぎて降りていく。

 これでようやく氷壁に囲まれたところから抜け出せた。


「リューちゃーん!」


「この声は……ルフォン!」


 氷の山を降りたところで離れたところにルフォンたちの姿が見えた。

 無事に帰って来たリュードやラストの姿を見て嬉しそうにルフォンが走ってくる。


「ダリルさん大丈夫?」


 唯一無事でなさそうなのはダリルに見えた。

 ルフォンがサッとリュードとは逆に回って肩をかす。


「力を使い果たしてしまった。


 少し休めば大丈夫だろう」


 リュードたちはウィドウたちと合流する。

 どうやらみんなの方も無事なようでリュードはホッと一安心した。


「よほど激しい戦いだったのですね……」


「いや……これは……」


「はい、激しい戦いでした」


 ダリルの言葉を遮ってリュードがにこりと笑う。

 考え甘く氷壁に穴を空けようとして生き埋めになって死にかけましたなんて言えない。


「神聖力を使い果たしてしまったのですね。


 ならば休息を取るしかありません」


 魔力や体のケガと違って神聖力を回復する手立ては自然回復しかない。


「リュードも無事で何よりだ」


「そちらの方もご無事で」


「ああ、むしろスノーケイブキングが抜けたことで楽になったよ。


 ヤツが精神的支柱でありリーダーとして指揮を取っていたんだろう。

 いきなりリーダーがいなくなってスノーケイブは動揺してしまってな。


 数はいたんで大変だったが倒すことはできたよ」


 スノーケイブキングのあの行動はスノーケイブたちにとってはいきなりリーダーが離脱したことに他ならない。

 引くべきか闘うべきかの判断も勝手に下せないスノーケイブたちには動揺が広がり混乱していたのでその隙をついて倒すことができた。


 スノーケイブを倒したウィドウたちは荷物を片付けてリュードたちを探しに来たのであった。

 待つよりも向かった方向に探しに行ったほうがいい。


 まるでスノーケイブの襲撃に合わせたような吹雪もいつの間にか止んでいたのでリスクも承知で探していたのだ。


 その時にとんでもない轟音が聞こえてきた。

 なんの音かは分からないけど何かがあったことは明らか。


 音のした方に向かって来たらリュードたちがいたのであった。


「ルフォン〜!」


「大丈夫?」


「だいじょばないよぉ!」


 ルフォンにも抱きしめてもらうラスト。

 なんとかかんとかスノーケイブキングを討伐することに成功したのであった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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