サラッと中ボス倒し
食材になる。
しかも美味い。
うっとおしく思っていたレッドットベアだがルフォンの手によって美味しい料理に変わると分かった今意欲的に倒すこともできた。
時折ドロップするお肉はみんなのお腹を満たすありがたい食材に早変わりである。
「あれは……ボスなのか?」
デカいとウィドウは思った。
距離があるはずなのにかなり大きく見えている。
横にいるレッドットベアと比べても2倍は大きい。
考えられるのはいわゆるボス。
他の魔物がいる情報もあるので中ボスということだろうか。
大きなレッドットベアがリュードたちに気づいて咆哮する。
距離があるのに体に響く。
「総員戦闘準備!
リュードたちは周りのレッドットベアを頼む。
俺たちがあのデカいレッドットベアをやる!」
「分かりました!」
ボスレッドットベアは3体のレッドットベアを連れている。
近づいてきてようやく分かった。
ボスレッドットベアがデカくて分かりにくかったがボスレッドットベアの周りにいるレッドットベアも一回りほど体が大きい。
「はははっ、俺とやろうか!」
ニャロの強化を受けたダリルが飛び出していく。
レッドットベアの1体が前に出てダリルを行かせまいとするがダリルの目的はレッドットベアの方なので好都合である。
雪の上での戦いもだいぶ慣れてきた。
最初は中々踏ん張りも効かずに苦労したけれど今はしっかりと力を加えることができる。
風切る前足をかわしてレッドットベアの腹部をメイスで横殴りにする。
軽く飛んでいくレッドットベアとダリルの横をすり抜けてハルヴァイが前に出る。
相手もさらに1体レッドットベアが前に出てくる。
アルフォンスの強化を受けてほんのりと輝くハルヴァイは真っ直ぐにレッドットベアの懐に入り込み、消えた。
それはレッドットベアから見てであり、ハルヴァイは一瞬で後ろに回り込んでいた。
回転しながら双剣を振るい、レッドットベアの膝裏を切りつける。
多少サイズが変わろうともレッドットベアに変わりはない。
デカくなった分パワーは上がるかもしれないが基本的な能力や戦い方に変化はない。
膝裏を切られてレッドットベアがガクンと膝をつく。
ハルヴァイは考えていた。
ルフォンがレッドットベア肉で作ってくれは『はんばーぐ』なる料理は美味かった。
コイツを倒して肉がドロップしたらまた作ってもらおう。
「ルフォン、ラスト、行くぞ!」
最後のレッドットベアをリュードたちが相手取る。
強化支援はないけれどなくても倒せる自信はあった。
美味い飯も食えるようになった。
ダンジョンの環境は過酷でリュードにとっては辛いが魔力で満ちているためか不思議と体の回復は早かった。
つまり消耗しても大丈夫ってこと。
「雷よ!」
それにダンジョンなら力を出しても周りに被害が及ばない。
魔物を消し飛ばすことになっても最後にはドロップする時はするししない時はしないので消し飛ばしても構わない。
レッドットベアに雷が落ちる。
轟音轟き、跳ね飛びそうなほどレッドットベアの体が大きくビクつく。
流石に消し飛ばせはしなかった。
黒い煙を吐き出しながらレッドットベアは立ち尽くす。
「ほっ!」
ルフォンが飛び上がる。
魔力を込め、大きく振り上げたナイフをレッドットベアの頭に突き立てる。
「とーどーめー!」
ナイフを抜いて飛び退くルフォンと入れ替わりでラストが矢を放つ。
ルフォンがナイフで開けた頭の傷口に狙いすました矢が刺さる。
リュードが派手にやったのだ。
ラストもやったると思った。
矢の1本ぐらいは犠牲になってもしょうがない。
魔力の込められた矢が爆発する。
これまでは矢が壊れないぐらいに爆発させていたけれど矢の限界を超えて魔力を爆発させた。
頭の中で爆発して衝撃の逃げ場がなかった。
頭が破裂して瀕死だったレッドットベアは完全にトドメを刺されることになった。
「まずは1体」
「よくやった!」
グロテスクに頭を失ったレッドットベアの横を抜けてケフィズサンがボスレッドットベアに向かった。
「俺たちはレッドットベアを片付けるぞ」
「ふふん、らっくしょーだね」
「リューちゃんの魔法はすごいねぇ」
「2人だって連携完璧じゃないか」
「私は優秀だからね!」
「そうだな。
ルフォンとラストはハルヴァイを。
俺はダリルの方に行く」
「りょーかい!」
「分かった!」
リュードはダリルの支援に向かう。
やはり打撃攻撃だけではやや分が悪いのかダリルの方はこう着状態であった。
途端に軽くなる体。
広く状況を見ていたニャロが参戦したリュードに強化を開始した。
リュードが来ている。
ダリルも視界の端でリュードが見えていた。
運良く位置関係からレッドットベアはまだリュードに気づいていない。
ダリルは盾とメイスを打ち鳴らしてレッドットベアの気をひく。
レッドットベアの攻撃を盾で受け流し顔を殴りつける。
ダメージは少ないが不快で苛立ちを覚えることだろう。
大きく口を開けてダリルの頭を噛み砕こうと迫ったレッドットベア。
「所詮はケモノ……」
しかしレッドットベアの牙はダリルに届くことはなかった。
口から剣が飛び出して来て勢いのままに雪に頭を突っ込んで動かなくなる。
「大丈夫か、ダリル?」
「もちろん。
大きくなってもレッドットベアだ、リュードにとっては相手にもならないな」
「ダリルが気をひいてくれたからさ」
正直ダリルの言う通りだと思う。
環境や戦い方に慣れてしまえばレッドットベアも大きな脅威じゃない。
討伐隊が討伐して回るぐらいなのでしっかり戦えばそんなに厄介じゃない。
「大きいのは厄介ですね……」
ハルヴァイはレッドットベアの前足を難なくかわす。
レッドットベアは体の何ヶ所も切り付けられ、白い毛皮が赤く染まっている。
ただ倒すためには致命傷が必要で致命傷を与えるにはやはり頭や喉、心臓を狙う必要がある。
だけど普通のレッドットベアも大きくハルヴァイでは剣が届くギリギリであった。
目の前のさらに一回り大きいレッドットベアでは相当深く踏み込まないと致命傷を与えられない。
「ん?」
レッドットベアの動きが一瞬止まり、ハルヴァイはその間に双剣で切りつける。
レッドットベアの肩に矢が刺さっている。
ラストの支援だ。
チクリとした痛みにほんの一瞬怯んだのだ。
「こっちにもいるよ!」
最初に傷付けた膝裏はすでに傷が塞がりかけていた。
後ろに回っていたルフォンがそこを狙って切りつける。
「ナイスタイミング!」
攻めあぐねていたので来てくれて助かった。
3人で囲むようにしてレッドットベアと戦う。
まずは機動力と致命傷を与えるために足を狙う。
ルフォンとハルヴァイで入れ替わり立ち替わり前に出て、ラストが隙を見て矢を放つ。
このレッドットベア微妙に賢いのが目を狙うとガードしてくる。
体に刺さる矢は無視してルフォンやハルヴァイの相手を優先している。
「あっそ!」
無視するならこっちだってやってやる。
思い切り弓を引き矢に魔力を込める。
ドワーフ特製の弓矢の威力を甘く見た罰を受けてみろ。
レッドットベアの足を射抜いた。
ルフォンが傷つけたのと逆の足。
倒れるレッドットベアは想定外の痛みに声を上げた。
軽く突き刺さるだけだった今までの矢と違って足の矢は足を完全に貫通した。
控えめの威力で撃っていたので侮っていた。
本気を出せば油断しているレッドットベアなど容易く撃ち抜けるのである。
「お任せください!」
雪を巻き上げながら勢いをつけてハルヴァイが飛ぶ。
腕をクロスし神聖力を混ぜた白い魔力が剣を包み込む。
腕を引いて剣で挟み込むように切りつけてレッドットベアの首を刎ね飛ばす。
「ナイッスー!」
剣が届くところまで来ればあとはただのレッドットベア。
くせでヒュンと剣を振って血を払うがもうすでに血もレッドットベアも魔力となって消えていた。
「そっちも終わったか」
見るとリュードの方も終わっていた。
「あとは見学だな」
手助けは必要なさそうだ。
リュードは壁のようにデカいボスレッドットベアを見る。
すでに片前足を失っているボスレッドットベア。
完璧な連携で危なげなくボスレッドットベアを追い詰めていくケフィズサン。
勝負はもう見えているようなものだった。
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