表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

 雨あられのように、弓矢が馬車へ降り注ぐ。

 しかし、それは馬車にも、そして御者台にいる二人にも届かない。

 まるで見えない壁があるかのように、弾かれてしまう。


「止めるな!!

 走らせろ!!」


 セイの声が鋭く飛ぶ。

 フィーホは手網を握り、鞭を振るい、馬車の速度を上げる。


「なんなんだよ、もう!!」


 フィーホが、泣きそうな声を上げる。


「盗賊だろ!」


 言い返しつつ、セイが魔法杖を取り出す。

 それを指揮者のように振るう。

 同時に口から呪文が流れ出る。


「煌めくは天の星々。

 我が意に従いて、敵を撃て!!」


 馬車を取り囲むように、蛍のような小さな光の玉が現れる。

 それらが、一気に散る。

 かと思ったら、左右と後方、それなりに距離のある場所で爆発が起きた。


「囲まれてたか」


 舌打ちをして、セイは馬車の中へ声をかける。


「一気に突っ切る。

 しっかり掴まってろ!!」


 返事は待たない。

 セイは視線を、馬へやる。

 そして、身体強化系の魔法と回復魔法をかけてやる。


「セイさん!セイさん、前!!」


 フィーホが悲鳴じみた声を上げた。

 セイは、馬から前方へ視線をやる。

 馬に跨った盗賊たちが雄叫びをあげ、こちらに向かってくるのが見えた。


「チッ」


 舌打ちして、また杖を振るう。

 呪文を唱える。


「我らが前に立ち塞がりし敵を喰らい尽くせ!!」


 杖の先に、人の頭程の大きさの青白い光球が現れる。

 思い切り、セイは杖を持った手を振り上げ、勢いよく振り下ろす。


 光球が真っ直ぐ賊たちに向かっていく。

 盗賊たちの中には、すれ違いざまに向かってくる光球を持っている槍や剣で攻撃する者がいた。

 避ける者もいた。

 しかし、そんなことは無駄だった。

 無意味だった。

 なぜなら。


 光球は、襲ってきた盗賊全てを吸い込んだ。

 文字通り、吸い込んだのだ。

 悲鳴が上がるが、その悲鳴や怒号すら吸い込む。


 混乱の中を、馬車が疾走する。


 そして、盗賊の群れの中を駆け抜けた。

 セイは後方を振り返る。

 そこには、何も無かった。

 襲ってきていたはずの盗賊たちの痕跡が、欠片もなかった。

 まるで、最初から存在していなかったかのように、荒野が広がっている。


「は、ははは!!

 相変わらずいい腕してるな、セイさん!!

 アンタを雇って正解だった!!」


 フィーホが変な笑いをしつつ、叫ぶように言う。


「そりゃどーも」


 馬の様子を見る。

 パニックにはなっていない。

 身体強化と回復魔法の効果も、まだ続いていた。


「よし、このまま一気に」


 フィーホのその言葉が遮られる。

 遮ったのは、リーンだった。


「セイさん!

 大変、マリアさんが、マリアさんが!!」


「どうした?!」


「急にお腹が痛くなったみたいで!!」


 リーンの言葉に、セイはすぐ全てを察した。


「始まったか。

 おい、フィーホこの近くに開拓村はあるか?!」


「え、あ、たしか農場があったはずだ!

 でも、それが?」


「マリアさんが産気づいた!」


「は、はぁぁああ!!??」


「とにかく農場に行け!

 家もあるんだろ?!」


「わ、わかった!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ