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 フィーホが次の町への手紙などを受け取り、荷物の確認をしている間。

 セイは、ジョンを呼んだ。


「なんですか?」


「万が一にも俺がどうにかなったら、お前があの貴婦人二人を守れ。」


「はぁ」


 ジョンは、なにを突然に言い出すんだこのおっさん、という顔をした。


「いいか?

 それこそ、命にかえても二人を守れ。

 できるな?」


「……特別な事情を抱えているんですか、あの二人?」


 ジョンが当然の疑問を投げた。


「事情を抱えていない人間なんていないさ。

 それと、マリアさんだが。

 体調が悪そうだったらすぐに報告してくれ」


「わかりました」


 そして、一行は村を出た。

 村を出て、今日、宿泊する予定の町までの道中。

 フィーホは、ふと気になってセイへ訊ねた。


「イーストウッドに着いたら、マリオン、いやアンタに倣ってジョンと呼ぶことにするか。

 ややこしいし。

 セイさんはジョンをどうするつもりなんだい?」


「どうするって?」


「脱獄した指名手配犯なんだろ?

 とても、そうには見えないが……。

 捕まえないのかい?」


「さて、ね」


 セイは短く返した。


「なら、このまま放置するのか?」


 他に話題も無いので、フィーホはこの話を続けることにした。

 フィーホから投げられた言葉に、セイは空を見上げる。

 憎らしいほどの晴天だ。


「……何も起きなければ」


 ぼんやりと空を見上げたまま、セイはそんなことを口にした。


「そう、何も起きずにイーストウッドまで行くことが出来たなら、それもありだな」


「放置するのか」


「いいや、捕まえて報奨金をもらう。

 なによりも、ジョンの安全を考えるならその方がいい」


「安全?」


「フィーホ、お前は、ヴァルマ一味の悪行はについて、どの程度知ってる?」


「……大物賞金首ってことくらいしか、知らないな」


 フィーホの返答に、セイは喉の奥でクククと笑った。


「強盗、殺人、婦女暴行等など。

 悪事の限りを文字通り尽くしてる連中だよ。

 数の暴力にも頼ってるから強い強い」


「あんたでも適わないか」


「無理だな。

 普通にやりあった場合、多勢に無勢だ。

 最初の方で多少抵抗出来ても、押し切られて殺されるのがオチだ。

 それはジョンも同じだ。

 だから、刑務所の中がジョンにとって一番安全なんだよ」


「………相変わらず、お節介だなセイさんも」


「自分の子供と同じ歳の子供が死にに行くのを、見過ごせないだけだ。

 あ、あと話が変わるんだが」


「うん?」


「次の町に着いたら、医者を探してもらえるか?」


「医者?」


「マリアさんの体調がどうにも気になる。

 もしかしたら、ってこともあるからな」


「あぁ、わかった。

 腕のいい医者を知ってる。

 着いたら連れてってやるよ」


 フィーホの言葉に、セイはホッと安堵の息を吐き出した。

 その次の瞬間だった。

 セイ達の馬車へ、無数の弓矢が降り注いだ。


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