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101回目の失恋日、空から隕石が降ってきた。  作者: のれんにうでおし
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恋心は召喚される

突然脳内に「101回目の〇〇〇ーズ」の単語が出て来たので勢い余って書いてみた。

キャラが全体的にぶれぶれしてるのはご愛敬でお願いします。

 あぁ、今日は記念すべき日だ。

 きっと一生忘れられない。


 そもそも思い出すこともないだろうけど。


 今日は101回目の失恋日。


 失恋したのはいい。

 いつもの事だし?

 今日で101回目だし?

 告白した彼らが揃いも揃って、「好きな子に告白する勇気を持てた。ありがとう」とか毎回感謝してくれるし?

 ただちょっと、ヤケ食いの為に予約した人気店のデザートバイキングに行けないことだけが本当に心残りだけどもそれ以外はもう別にどうでも良いし?


 失恋した様式美として一人黄昏るために、事前に目星をつけていた場所に向かう道すがら、そんなとりとめもないことを思いながら歩いていた。


 一体誰が想像出来ただろう。


 一瞬空が赤らんだことを不思議に思って空を見たら、凄い音と熱量を持ったお星様が堕ちて来るなんて。


「は…?」


 人間、突然の出来事には時間が止まってしまうらしい。

 死の恐怖よりも先に、私は隕石を受け止めていた。


 なんということでしょう。


 きっと大々的にニュースで取り上げられて、私は一躍時の人となって、取材とかテレビ出演とかが殺到して、おまけにテレビでしか見ないような美男美女と共演しちゃったりなんかして、そんで色んな人にチヤホヤされちゃって、「私の為に争わないで」的な人生最大のモテ期がくることになるはず、間違いない。


 うん、まぁ。生きてさえいればね。


 隕石がぶつかって生きてる人間なんかまず居ないだろう。

 居たら余程神様に愛されているはずだ。

 少なくとも失恋を101回も経験するような私にはありえない。

 いや、ワンチャン神様が私を溺愛し過ぎて誰とも結ばれないようにしている可能性だって捨てられない。

「お前を殺して俺も死んでやる!!」的なアレかもしれない。

 いやぁ、愛が重いぜ神様、うぇっへっへ。


 そんなことを考えていたせいだろうか。

 突然凄い力に引っ張られる感覚に驚く。


 違うんです神様ぁああ!


 別に貴方様をバカにした訳ではなく、我が身の不幸を嘆いて落ち込むより笑いに変えるのが私のポリスィーってだけで…っ


「ぎよええええええっ?!!!!!」


 私の弁解の声など聞き入れられるはずもなく。

 乙女としては残念な部類に入る悲鳴を上げてどこかへ引っ張られていく感覚にすべてが持っていかれる。



 そして何もかもが消えていった。




 ◆  ◆  ◆




 柱も床も天井も、すべてが白一色に染められたどこか神秘的な雰囲気を感じる室内に、不釣り合いなざわめきが広がっていた。

 興奮したような声を上げる人々は皆、中央の高く作られた場所をひたすら見つめながら、その時が来るのを今か今かと待ち構えていた。

 日本人にわかりやすく例えるなら、相撲を取る場所のように、一段高く作られた白い床に魔方陣らしきものが描かれている。その魔方陣は先ほどから発光しており、もうすぐ何か出ますよ、的な雰囲気を醸し出していたから無理もない。


 魔方陣が光る場所の一番近くには、行司もとい神官らしき人物と、一目見ただけで「私王様ですよ」とわかるいで立ちの壮年の男性が並び、期待に目を輝かせていた。


 しかし中々結果が出てこない。


 5分経ち、10分経った頃には場が白け始めた。

 神官も王様も若干目が死に始めた所、魔方陣がようやく明滅を繰り返した。


「「「おお…!」」」


 再び高まる期待。


 これだけ時間がかかるのだから、それはもう凄い何かが出て来るだろう、と皆が固唾をのんで見守る中、それは起こった。


 完全に人の目を潰しに行った光が場を満たす。

 その場に居た人々は咄嗟に目をかばい、固く目をつぶる。

 歴史に残るような出来事を見られないのは残念だが、きっと目を開けなくて正解だった。


 誰かが見るより早く、誰もの耳に入った。


 目つぶし光線とともに、この世の者とは思えない叫びがつんざく。


「ぎよええええええっ?!!!!!」


 およそ人が発するものとは思えない産声を上げ、白目を剥いた少女がそこに居た。


 彼女の名前は不叶恋心(かなずこいこ)


 まだましな部類に入るキラキラネームを付けられたが、漢字の意味を知った瞬間に両親にブチ切れた失恋少女。


 両親に詰め寄った結果、「強くなれるように剛とか、名前にちなむと絶対に叶わない」という法則(妄想)を信じ、心を鬼にして、敢えてそう名付けたのだとのたまった、両親、(すぐる)と優子に、己の人生が詰んだのを理解した失恋少女恋心。


 彼女は白目を剥きながら思い返していた。


 幼き日に決意したあの日を。


 名前はちなむんだと言うことを両親に教えてやろう、と。

 私の人生のすべてを懸けて、と。

 たとえ世界が終ろうとも、と。


 しかしさすがに、恋心も予想すらできなかった。


 まさか志半ばで異世界召喚されるとは。




 

お読みいただきありがとうございました。

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