塩の取り方、こっち風。
抱き合った翌朝。
俺は目を覚ました。
毛皮をかけただけの入り口。
声は駄々洩れだっただろう。
まあ、聞いて悶々するような人が居る訳でもなく……。
満足げに眠るドリスの頬にかかった髪を指で後ろに流した。
そのせいで目を覚ますと切れ長の目で俺を見るドリス。
そして、パッと抱き着く。
「凄かった。
とにかく凄かった」
ドリスが興奮気味だ。
俺も目を見ながら真剣に言われると恥ずかしい。
「私、良かった?」
首を傾げるドリス。
ウンウンと俺が頷くと、不意を突いてドリスが頬にキスをして来た。
「朝、どうする?」
ドリスが聞くので
「塩水できた。
焼肉する」
と言っておく。
囲炉裏のようなところで石を焼く。
そして、台所のようなところにある肉を削ぎ、その肉を石の上で焼いた。
いまだに食べるドグロス(クマ)の肉。
「ドグロス、大きい魔物。
魔力多い。
腐敗しない」
とドリスは言っていた。
まあ、俺も生で食う気はない。
焼けた肉に軽く塩水を振って、香草で巻く。
パクリと食べると油と塩の味。
ああ……美味い。
塩分控えめだった体に塩が染み込む。
気になったのか、ドリスが俺の後ろに来ていた。
焼いた肉をドリスに食べさせる。
「?!
美味しい」
「ああ、塩は味覚の基本。
美味しいと言われてよかった」
「これは私に?」
「俺にだ」
「ぶー」
自分のためだと思っていたようだ。
ドリスの頬が膨れた。
外に出て前日に溶かした岩塩の上澄みを掬って別のツボに入れる。
そして、太陽光にさらそうとした時、
「アキト、何でそんな面倒なことをする?」
とドリスが言った。
そして、
「こうすればいい」
ドリスの右手が光るとツボの中から水の塊が出てきた。
「水だけ抜く。
私より魔力ある。
アキトならできる」
魔力を使った抽出方法。
こりゃ、こっち風って奴か……。
「わかった」
水分だけを手にまとわせれば……。
ツボの中に白い結晶が残った。
ん?
ならば最初っから岩塩の層から塩だけも取れるか?
今度やってみようと思う。