ファーストコンタクト(オレゴル)
我はオレゴル。この森を取り仕切る獣神。
この体と長い尻尾が我が誇り。
いつもの狩場で待っていると、一人の人間とエルフ。
「何じゃ、こいつ等」
人間は男でエルフは女。
狩場の動物を見ていた。
男は大声を上げて壁に向かって走る。
そりゃ、臆病な草食獣は逃げるじゃろう。
我は二人がすることを見ていた。
じっと私を見る男。
そして、威圧を放った。
尻尾が下がる我。
無意識に体が怯えた……。
えっ、我より強いのか?
我ははひょいと木の上から飛び降り、男の前で頭を下げる。
エルフは我を見て、驚いたようじゃ。
我は我より強い男にすり寄ってみた。
男の体から魔力が流れてくる。
何なのじゃこれは!
我は我を忘れ、男に体を擦り付けてしもうた。
我はここに居てもいいのじゃろうか?
我の主人になってくれるのじゃろうか?
男の近くで丸くなると毛づくろいをしてみた。
不思議そうにする男。
エルフはわかっていたのか、
「アキトの威圧のせいでオレゴルがアキトの下に付いた。
オレゴルはアキトを主人にした」
男に説明する。
アキトという名なのか……。
我は今の姿では言葉が出ん。
魔力が足りなさすぎる。
しかし、何となくエルフが男に近づくのは嫌で、エルフの前に立ちはだかってしもうた。
アキトが、
「コラ!」
と言って怒る。
何でじゃ? 強いアキトに従うのはいかんのか?
そして、
「ちょっと来い」
と、呼んだ。
我は耳を伏せ、頭としっぽを下げてアキトのところに行く。
怒られるのかの?
すると、アキトはおもむろに我の喉を、コリコリと撫でたのじゃ。
何というコリコリ。
強くもなく弱くもなく……絶妙な力加減。
指先から流れる魔力。
これでもう我はアキトの虜になってしもうた。
我の体がフルフルと震えた。
そして、我の弱い所を知っているかのように耳裏と背中を撫でると、我は意識を失った。
それが我のアキトとの出会い。