ファーストコンタクト(私)
男が降ってきた。
なぜ?
いつも通り、食料の野草を取りに来ただけなのに。
なぜ目の前に人間の男が現れる?
剣のような物と盾のようなものを持つ人間。
攻撃されると困る。
これは貰っておく。
身長は私よりも頭一つ高い。
黒髪の短髪で、髪の毛は中央で分けていた。
見たことも無い服を着ている。
私は男にレイピアを突き付けた。
静かになる男。
私は男を近くにあった蔓で男を縛る。
いつもなら殺して埋めていたはず……なぜ?
男を立たせると、男が持っていたものを持ち、私は小屋に戻ろうとした。
「ぐおぉぉぉぉ」
低い呻き声と共に目の前に私たちの前にドグロスが現れる。
森の上位種であるドグロス。
果たして私で勝てるかどうか……。
「早く逃げろ」
私は男の蔓を切ると、早く行けと手をふる。
言葉がわからないのか男は唖然としていた。
チイッ
私は舌打ちすると、ドグロスと男の間に立ち、ドグロスの注意を引き、近寄ってきたドグロスと戦い始めた。
レイピアを抜きドグロスを素早さで翻弄する。
当たりそうで当たらない……それでも当たれば一瞬で死ぬ……そんな世界で私は戦った。
苛立ち始めたドグロスの攻撃が大降りになる。
ドグロスが腕を振り切ったその時に私は魔法を使う。
植物を操る魔法。
ドグロスの体に蔓が絡みつき動きが止まる。
その瞬間に私は飛び上がり頭にレイピアを叩きつけた。
勝った!
と思った瞬間に「パキン」という音がする。
折れたレイピアが男の方に飛んでいった。
ブチブチという何かが千切れる音がした瞬間ドグロスの右腕が私に埋まるのが見える。
ドグロスの爪が私の腹を引き裂き。吹き飛ばされる。
痛くはなかった。
自分の内臓と血を見た時「死ぬんだな」と思っただけ。
「誰も居ない小屋に戻るよりも良いかな」とも思った。
意識が遠のく中、ものすごい勢いで男が走ってくる。
すると私の傍にしゃがみ込み左胸を鷲掴みにして、凄い量の魔力を通した。
えっ?
何?
温かい魔力が私に流れると、みるみるうちに私の引き裂かれた腹が治り、失いそうになっていた意識が戻る。
そして、気付くと私の胸を掴む感触だけが残った。
私の女の部分がそれを否定し、身をよじって男から体を外す。
「ありがとう……」
そう私は言ったつもりだったが、言葉がわからないのか男はキョトンとしていた。
私は引き裂かれたままの服で立ち上がり、ドグロスが居た方を見ると、巨体が倒れている。
「凄いな、あれはお前が倒したのか?」
私はそう言った……いや、言ったつもりだった。
しかし男は熊を持ち上げて背負う。
私が「運べ」と命令したように感じた?。
私そんなつもりじゃない……。
でもそれを伝える手段が無い。
私は諦めると「来て」と手振りで表し、それを理解した男と共に小屋に帰るのだった。
帰る途中、自分を指差し「ドリス」というと、意図を察したのか男は「アキト」と言った。
「アキト」
私を助けてくれた人の名。
その日からアキトは私と小さな小屋で住むことになった。