表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コント・勇者の旅立ち前日

作者: きげん

 場所……お城の謁見の間

 役……ツッコミ:王様  ボケ:勇者の母



 王「もう明日には、勇者の旅立ちじゃな。よくぞ、ここまで勇者を育ててくれた」


 母「王様、ちょっと待ってください!」


 王「む? どうしたのじゃ母君よ?」


 母「どうしてウチの子が行かなくちゃいけないんですか?」


 王「何故、前日になって言うのじゃ……」


 母「何か言いました?」


 王「いや、何もない! しかし、勇者が旅立ってくれねばこの世界が……」


 母「世界の危機でなんであの子だけが危ない目に合わないといけないんです?」


 王「それは、勇者だから……」


 母「出た、『勇者だから』。何ですか、それ? 一体誰がウチの子を勇者って決めたんです? 勇者には人権はないんですか?」


 王「ワシのせいなの?」


 母「王様なんだから、ちゃんと責任持つべきじゃないですか? いつも椅子に座ってふんぞり反ってるくせに責任も持てないんですか? 何よ、ダサい王冠なんて被って?」


 王「ワシにも人権が欲しい……」


 母「そもそも、世界を救おうとしてる勇者に資金も何も持たせずに旅立たせるって、どうなんですか? ここの兵士の方がまともな装備じゃないですか!」


 王「それはやっぱり苦難が勇者を強くさせると言うか、勇者を強くするには必要な事かと……」


 母「あの子、装備なしだから、服も着てないんですよ!?」


 王「何故じゃ?! それは家庭の問題じゃないのか?! 服くらいは着せてやってくれ!」


 母「勇者だからといって、特に訓練もさせないから、家に引き込もってゲームばかりして、一人で生きていけないわ!」


 王「どうしてそうなった!? 家の教育はどうなっておるのじゃ!?」


 母「勇者に決まってから、何かしらのカリキュラムがあるのかと思って、ずっと待ってたけど、一切無かったからいつの間にか引きこもりになっちゃったのよ!」


 王「それはこちらにも多少の非があったのは認めるが、過保護過ぎやせんか?」


 母「私が悪いって言うんですか? 自分だって、何もせずに似合ってもない髭を蓄えてただけじゃないですか? 威厳でも出そうとしてたんですか?」


 王「ちょくちょくワシをディスるの止めてくれない?」


 母「自慢じゃありませんが、ウチの子、スライム一匹倒せる自信なんてありませんから!」


 王「本当に自慢じゃないのぉ!」


 母「外は寒いし恥ずかしいからって一歩も出歩こうとしないんですよ!」


 王「服着ておらんからのぉ!! 頼む! 服は支給するから、着せてやってくれ!」


 母「いいえ、最上級の装備とあの子の護衛に十人程屈強な兵士と、あの子をお世話する従者を連れていかせてください」


 王「もはや勇者の存在が必要か怪しいぞ! 何故、もっと早くに相談しに来てくれなかったのじゃ!」


 母「だって、ここの村人や兵士、話し掛けても同じ事しか喋らないんですもん!」


 王「そんなシステムだけは適応されとるのに、何故勇者の母は過保護になっておるんじゃ!」


 母「大体、他の国と協力すれば済む話じゃないんですか? いがみ合ってるから、そこをつけ込んで魔王が襲ってくるんでしょ? 本当に世界を救いたいと願うなら、戦争なんてくだらない事は止めるべきです!」


 王「むぅ……そこに関しては正論過ぎて、ぐうの音も出んわ。その熱き想いを何故息子の教育へと向けられなかったのか」


 母「どうせ、冒険の後半に出てくる人達は最初から強いんだから、今から息子が旅に出て強くなるより、その人達が頑張って強くなった方が効率が良いわ」


 王「それ以上言ってはならん! 物語が成立しなくなる!」


 母「酒場の人達にでも頼めば良いじゃない。勇者より強いんじゃない? って思える仲間って多いのよ?」


 王「さては母君も一緒にゲームをしておったな?!」


 母「ウチの子はゲームだけなら、百回以上世界を救っておりますわ」


 王「勇者もその熱意を現実に向けてもらいたかったぞ……」


 母「最近では、オンラインでカタカナで『マオウ』って名乗る人と仲良く冒険してますわ」


 王「それ絶対に魔王じゃ! もう復活しておったのか!?」


 母「まぁ、昨日やった対戦ゲームではウチの子が圧勝してますけどね」


 王「ゲームで魔王に勝っておる!?」


 母「チャットで怒って『もうこんな世界ぶっ壊してやるからな!』とか言っちゃって、器の小さい子よね」


 王「なに魔王を怒らせとるんじゃ!? もう猶予はない! 母君の言う通り、兵士も従者も最上級の装備もつける! じゃから、勇者を旅立たせてくれ!」


 母「それは出来ません!」


 王「何故じゃ?!」


 母「明日新作のゲームを一緒にやる約束をしちゃったの」


 王「もう世界はおしまいじゃ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お約束の踏襲、ボケ側のいい具合のズレっぷり。 安定して楽しめる短編でした。 [一言] あけましておめでとうございます。 お久しぶりです。ご壮健で何よりです。 最近は色々忙しかったのであま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ