13話 静かな決意
誤解も解け落ち着きを取り戻しみんな椅子に座る。
そして男の子2人が自己紹介をした。
「さっきは悪かったな、俺はアイザってんだ。んでこっちがカシム。」
ぺこりと頭を下げるカシム。
「私はエイリアよ、昨日この街に来たばかりなの、よろしくね。」
「エイリアは何しにここに来たんだ?」
アイザが聞いた。
「ん〜?なんとなく?ただ、大通りでユラに会って一緒に肉串食べて楽しくお話し
てなんとなくここに案内してもらったの。」
「肉串って・・・ユラまさかまた屋台の近くうろうろしてたの?ダメって言ったよね
お店の人に迷惑かけるし、悪い人に攫われるかも知れないって。」
とがユラに怒った。
ユラは俯いて小さな声で「ごめんなさい」と言う。
「あんまりきつく怒らないで、そのおかげでユラと知り合えたし、こうして
みんなにも出会えたんだから。」
とユラをフォローするエイリア。
「所でみんなはどうやって暮らしてるの?大人は誰も
助けてくれないの?食事はどうしてるの?」
エイリアはみんなに聞くがみんなは暗い顔をしてうつむく。
「大人は誰も助けてくれないよ、大人達も余裕なんて無いんだろ。
以前は孤児院があったらしいけど前の領主様が無くしたんだって。
冒険者ギルドで冒険者登録すれば図鑑を見せて貰えて薬草とかも取れるかもしれないけど
登録料の銀貨1枚なんて大金はない。
食べ物は俺たちがたまにウサギとかを捕まえたりだけど、普段は食べられる草や木の実
を取ってきたりしてる。」
と、アイザが言う。
エイリアはみんなの顔を見渡す。
痩せている体、全員顔色は良くない、空腹で体力もないだろうし衛生状態も悪い、病気になったら
命に関わるかも知れない。
出会ったのだ、無視は出来ない。
地球に居た時も出会った子供たちは色々な理由で一時保護されていたのをみんな私が引き取った。
周りからはそんなにたくさんの子供を育てるのは無理だ!と反対された。
しかしあの時は少しだが仲間が居た、治安も良かった、行政の助けもあった。
そして何より子供達の助けもあった。
でもこの世界は治安など街の中でも無いようなもの、一歩壁の外に出れば
魔獣や盗賊だって居る、そんな世界で子供達を助けられるのだろうか。
マイア様は自由に生きろと言われた、だからこの子達を見捨てるのも自由、、、。
嫌だ、、、そんな事出来ない。
『子供は光だ、未来だ、希望だ。』
1人失えばこの世界の未来もひとつ失う。
出来るの?
この世界で。
いや・・・やるんだこの世界でも!
私は子供達を愛する。
『母』になるんだ。
しばらく目を瞑って考えていたエイリア。
目を開けるとユラが心配そうに見上げていた。
周りの子供達も少し不安げで見ている。
スクッと立ち上がり
「よしっ!」
と言うと、みんなに向かって
「ごめんね、色々考えてたんだ。とりあえずもうちょっと待っててね」
「何を待つの?お姉ちゃん。」
とユラが言う。
「ん〜・・・色々。」
エイリアは、にへら~と笑顔で答える。
「さてと、そうだ確か薪が無いんだっけ?」
「うん、最近枯れ枝が少なくて。」
とセレネが悲しそうにうなずく。
「よし、薪を作ろう!」おーっと拳をあげるエイリア。
「え?作るって・・・」
セレネがエイリアに問いかけるがエイリアはテクテクと歩き出し外に出る。
廃屋の周りは木が生い茂っている、枝が伸びて建物に引っかかってる木も何本かある。
とりあえず建物に邪魔な木を見つけてそこの前に立つエイリア。
後ろには子供達がゾロゾロ付いてきて不思議そうに見ている。
エイリアは後ろに振り向き
「危ないからちょっと下がっててね」
と言うと、母様から刷り込まれている身体強化の魔法を自分にかける。
『さすが母様、色んな事教えてくれている。』
そして次は木の根本を風の刃で切るイメージで指をシュッと振る。
すると木が豆腐を切るように簡単に切れた。
そして取れる前に両手で木を掴むとそのまま持ち上げ教会の雑草だらけの広場に置いた。
子供達はまさに目が点。
エイリアは腰に差してる薙刀を取ると地面に下ろした木の枝を切り落としていく。
全部切り落とすと今度は刃に魔力を流す、すると刃が青白く輝いた。
そして大きい丸太を30センチ間隔に輪切りにした。
更に切った丸太を薪に丁度いい大きさに切り、風の魔法で一ヶ所に集めた。
「エイリアさん、その木まだ乾いてないから薪としては使えないよ。」
とセレネが言うと
「あ、そうだったね、ちょっと待ってね。」
薪の山に向かって結界を張ると魔法でその中の水分を抜く。
結界を解いて薪を持ち、乾燥して軽くなってるのを確認すると、
「はい、薪出来たよ〜!」
とエイリアが笑顔で言うと
「「「「ええええええええええええええ!」」」」
と子供達の声が響いた。