12話 孤児たち
二人で店と店の間の暗い路地に入っていく。
先ほどまでの大通りと違い足下にはゴミなど散らばり匂いもくさい。
そんな道を右に左にと進んでいくと少し開けた場所に出た。
道の両側には木が生い茂り昼間なのにうっすら暗い。
少し進むと確かに家らしき建物が見えてきた。
そしてユラはボロボロの家を指さして
「あそこ」
と言った。
あちこち壁が崩れていて長い事放置されてる雰囲気の建物に見える。
敷地内は雑草が生い茂り、地面にはあちこち石も転がっている。
呆然と見ていると家から1人の女の子が出て来た。
年は14~5歳くらいだろうか、ユラを見て小走りにこちらへ来た。
「はぁはぁ、、、ユラどこ行ってたの?探してたのよ。それとこの人は誰?」
少し不安げにエイリアを見る。
目線を合わせるように少し屈んで挨拶をする。
「はじめまして、エイリアと言います。ユラちゃんとはそこの大通りで会って
少しお話しして、こちらに案内して貰ったの。」
と言うと女の子はお辞儀をし
「わざわざ連れてきてありがとうございます、ご迷惑かけてすみませんでした。」
と不安げな顔でこちらを見てくる。
『ん〜、やっぱり警戒されているよね、仕方ないか』
「私昨日この街に来たばかりで友達誰も居なくて、ぶらぶら歩いていたら
ユラちゃんに会ってお話相手して貰ったの。」
エイリアがそう言い女の子はユラを見ると、頬を赤くして俯いていた、そして
今もしっかりと手を繋いでいる。
「こんな場所で立ち話しはなんですから中に入りませんか?」
と女の子は言うと
「そうね、お邪魔させてもらおうかな。」
そして女の子の後についていくエイリア、もちろんユラはまだしっかりと
手を握っている。
少しガタついてる大きい扉を開けて中に入っていく、平屋建ての小さい家で掃除など
されていないのか埃っぽく、壁のあちこちに穴が開いてて外が見える。
そこには子供達が3人ほど居た。
子供達は突然入ってきた銀髪のエルフに驚いて固まっている。
そんな子供達にエイリアは
「こんにちわ〜。」と明るく挨拶する。
案内してくれた女の子に椅子を勧められ、座るとユラも隣に座り
女の子は対面に座った。
「あらためまして、私はエイリアと言います。よろしくね。」
「あ、、、すいません。私はメアリと言います。今日はユラを送り届けて
くれてありがとうございます。」
「あ〜、そんなかしこまらないで。いつも通りでいいよ。」
「は、はい。」
「さっきも言ったけど、私は昨日この街に来たばかりで友達も居なかった
から、ユラちゃんと話せて楽しかったわ。ね〜。」
と隣に居るユラに顔を向けると恥ずかしそうに俯いてる。
メアリはそんなユラに微笑むとエイリアに向き直ってポツポツと話し出した。
「エイリアさんもわかるように私達は孤児です。みんな親に捨てられたり死別したり
して頼れる大人も居ないので私達子供だけでなんとか生きているんです。」
段々声が小さくなり俯くセレネ。
少し肩が震えている。
「そっか。」
2人の会話を聞いていた子供達も不安そうな顔でこちらを見ている。
部屋に重い空気が漂っているとエイリアは
「喉渇いたね、お水ある?」
「あ、、、すいません何も出さなくて。裏に井戸はあるんですが今薪が
無くて、、、。」
「じゃぁ、みんな自分のコップある?」
とエイリアが言い鞄から出すふりしてアイテムボックスからコップを出す。
意味がわからずセレネも子供達も首を傾げた。
するとユラが椅子から降りて奥の部屋に小走りに行きすぐに
コップを手に戻ってきてエイリアに渡す。
ありがとうと言ってコップを受け取ると
コップに手を被せて魔法を使い水を注ぎ、氷も出した。
そしてユラに「はい」と渡すと軽く微笑んで
「ありがとう」と言い水をコクコクと飲んだ。
「冷たくて美味しい。」
と言うとそれを見ていた子供達も奥の部屋に行きコップを持ってきて
エイリアの前に並ぶ。
コップを受け取ると
「私はエイリアと言うの、よろしくね」
と言い水と氷を出して子供に渡す。
すると、
「僕はダル。」
と言いニッコリ笑ってコップを受け取る。
そして次々と
「私はセレネ」
「私はルカ」
と全員自己紹介して氷入りの水を貰った。
ユラがメアリのコップも持ってくるとそれをメアリに渡す。
少し恥ずかしそうにエイリアに渡すと水と氷を入れて渡した。
「美味しい、、、」
そう言うメアリの顔が少し明るくなった。
みんなでワイワイと話していると扉の方から音がした。
すると、男の子2人が入ってくる。
「みんな今日はウサギが獲れたぞ!」
わぁ〜っと喜んでいる子供達、その中にエイリアの姿を見た男の子2人が
びっくりして身構える。
「誰だ?おまえは。」
そういった男の子の後ろの男の子も身構えこちらに敵意を向ける。
エイリアは落ち着いて
「初めまして、エイリアと言います。大通りでユラちゃんに会ってお話ししてこの
お家に連れてきて貰ったの。」
すると
「何が目的だ!俺たちを攫って売るつもりなのか?」
と敵意は消えない。
「やめてカシム、この人はそんな人じゃ無いわ。ユラをここまで連れてきてくれただけよ。」
とセレネがなんとかアイザをなだめようとする。
「みんなこっちへ来い!」
と言うと腰に差してた短いナイフに手をかける。
エイリアはカシム達を一旦落ち着かせるために魔法を発動させようとしたその時。
目の前にユラが両腕を広げてエイリアを守るように立ち塞がった。
「おねえちゃんは・・・悪い人じゃない・・・そんなこと言う・・・カシム嫌い。」
と目に涙をためて強い瞳でカシムに言った。
肩をふるわせて一所懸命エイリアを守ろうとするユラ。
その姿を見てハッとしナイフの柄から手を離し緊張を解く、後ろの男の子も同様に
身構えをといた。
「わかったよ。ユナを信じるよ。」
エイリアもホッとして息を吐き
「ありがとう、みんなを守ろうとしてたんだよね。」
と前にいる二人の男の子に微笑んだ。
今も一所懸命両手を広げて守ろうとしているユラに
エイリアは後ろからそっと抱きしめ
「ありがとう」
と言い、頬に軽くキスをした。
ユラは
「あ・・あぅ~・・・」
と声にならない声で顔を真っ赤にして腕をパタパタさせていた。