表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

11話 孤児ユラ

屋台の多い広場へぶらぶら歩いていると、香ばしい香りがして香りの方を見ると

肉串のお店だった、昨日宿屋を紹介してくれたとお店とは違うお店で

良い匂いでふらふらと足が向いてしまうエイリアだった。


「おじさん~、一本頂戴。」


「はいよ!銅貨3枚な。」

と言うと串を差し出され、エイリアも小銭袋から支払う。


「ありがと~」

そう言うとお店を後にして、歩きながら食べようと「あ~ん」と大口開けた

その時、スカートの裾辺りを引っ張る感覚がして立ち止まり後ろを振り返った。

そこには薄汚れた服を着た小さな女の子がいた。

エイリアは屈んで女の子に話しかける。


「どうしたの?ママは?迷子かな?」

と言うが、女の子はその質問には反応せず肉串だけをじーっと見ている。

すると後ろからさっき買った屋台のおじさんがエイリアに言う。


「その子は孤児だよ、よく屋台の近くに来て客が食べ残した物を拾って食べてるんだよ。」

エイリアは肉串をじーっと見ている女の子に視線を移すと立ち上がり


「おじさん、もう1本頂戴。」

と言う。

すると屋台のおじさんは


「やめときな、一回限りの施しに勘違いして他の人にもそうやって近づいて

殴られるかもしれない。その子のためにやめときな。」

そう言われ女の子を見るエイリア。


「忠告ありがとう。それでも無視は出来ません。」


屋台のおじさんはため息をつき


「わかったよ、ほらこれ失敗したやつだ。タダでいいよ。」

と、とても失敗したように見えない美味しそうな肉串を

渡され笑顔でお礼を言うエイリア。


「一緒にお姉ちゃんと食べようか。あっちに椅子があるからあそこで食べよう~。」

と言うと女の子は小さくうなずき、エイリアのスカートの裾をつかんだまま

一緒に椅子のある場所へ向かうのだった。

大通りにある休憩用の長椅子、その一つにエイリアと女の子は座る。

女の子はじーっと肉串を見つめてるが決して自分から手は出さない。

エイリアは、はいっと持ってる肉串を差し出すと女の子はエイリアと肉串の交互に

見てるが、まだ手を出さない。


「いいんだよ、これはあなたの物だから。」

優しくそう言うと、こくっとうなずき恐る恐るやっと手に持った。


「じゃぁ、食べよっか。いただきます!」

エイリアがそう言うと女の子も小さい声で


「マイア様ありがとうございます」

と言った。

マイアと言う名前に少しびっくりしたがこの世界は食事をするとき

マイア様に感謝の言葉を言うのが普通らしい。

刷り込みがあったのを思い出した。

女の子は小さい口で肉串をモグモグ食べてる。

その姿を見て微笑んでエイリアも肉串を食べ始める。

女の子は少し焦って食べたのか、ちょっと咳き込んだ。

エイリアはマイアがアイテムボックスの中に色々と必需品を入れておいてくれたのを

思いだし、鞄から出すふりをしてアイテムボックスから木のコップを取り出した。

そしてそのコップに魔法で水を出し、女の子に渡す。

女の子は魔法に少しびっくりしたがコップを受け取りコクコクと水を飲んだ。

そしてまた肉串を食べ始める。


しばらくしてやっと全部食べ終わりコップをエイリアに渡すと

椅子から降りてエイリアの前に来てペコリとお辞儀をしたのだった。

エイリアをまっすぐな瞳で見つめる女の子、顔に生気はあまりないが

その瞳の奥は力強かった。


「少しお姉ちゃんとお話ししようか。」

エイリアがそう言うと、こくっとうなずく。

椅子に手をぽんぽんと叩いて座るように促すうながす。

そしてまた隣に座るとエイリアの顔を見た。


「初めまして、私はエイリアといいます。あなたのお名前は?」


「ユラ」


「ユラちゃんか、良い名前だね。いつもあそこに居るの?」


「決まった場所は無い、屋台に人が居たらそこに行ってるの。」


「そっかぁ、普段はどこで暮らしているの?孤児院ってあるのかな?」


「向こうの廃屋でみんなと暮らしてる。」


「え?子供達だけで暮らしてるの?誰も大人はいないの?」


「居ない、カシムお兄ちゃんとメアリお姉ちゃんがみんなを見てるの。」


少し考えるエイリア。


『この街には孤児院は無い、面倒見てる大人もいない。カシムとメアリも多分孤児だろう

その二人が複数の子供の面倒を見ている・・・』

考えてる顔が怖かったのかユラは少し不安げな顔をする。

エイリアはユラに向き直り


「今からお家行ってみんなを紹介してくれないかな?」

そう言うと、少し考えた後コクッとうなずいた。


「ありがとう。」

とニッコリ微笑むと椅子から立ち上がり、ユラに手を出す。

エイリアの綺麗な細い手に触るのを少しためらうが、そーっと小さな手を差し出し

手を取る。

椅子から降りて二人手をつないで歩き出した。

恥ずかしそうに下を向いて歩くユラ、さっきまで無表情な顔だったが今は

少し嬉しそうな表情をしている。


そんな微妙な変化に気がついて微笑むエイリアだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ