表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/31

本当にあった怖い話

怪談を子供だましと一笑にふし、自分はもっと怖い話をできると豪語。

A:怖い話って一定の人気がありますよね。

B:なんででしょうね。くすりとも笑えないのに。

A:そういう趣旨のやつじゃないから。怖がるのが目的なの。

B:意味がわからない。なにがおもしろいのか。おばけ屋敷とかも一回も入ったことありませんし。

A:あ、もしかして怖がりだったりします?

B:全然。裏方でバイトの人が時給いくら、何時から何時、週何日でシフトに入って動かし、整備担当が毎日機器の動作チェックやメンテナンスを、メーカーなどの業者が定期的に点検してる設備。いったいなにを怖がればいいのかと。

A:そこまで現実的に言われると怖さ半減ですね。

B:あんなものリアルな視点でとらえれば子供だましもいいところですよ。

A:子供だましといえば「わんぱくおばけやしき事件」。

B:ギクッ。

A:僕ときみの共通の友人、山田くんの情報なんですけど。

B:やめろおっ! それ以上はよせ!

A:中学のとき、子供用のおばけ屋敷で泣きじゃくったそうで。

B:そ、それはあれだ、でたらめ。あいつ超嘘つきだし。

A:目が泳いでますよ。ほかの友達にも確認したところ「たしかに泣いてた」「ネタで入ってみんな笑ってたのにひとりだけ悲鳴を連発」「腰抜かしたので肩を貸したの覚えてる」と。

B:そ、そいつらもあれ、なんかすげえ嘘つきって有名だし。

A:事件の火消しを図ってあることないこと触れまわり、オオカミ少年としても有名人だった、との証言もとれていますが。

B:おばけ屋敷はだから大嫌いなんだよ!

A:あー、ひらきなおったよ。

B:あんなくだらない施設を考え出した奴は人間のクズだねクズ。太宰もびっくりの人間失格者。未来永劫、地獄の業火で焼かれるべき。

A:おばけ屋敷ごときでどんだけこき下ろすんですか。富士急ハイランドのめちゃくちゃ怖いやつに連れてったら入口で漏らしそうだな。

B:怖い話とかもね、あれも子供だましですよ。

A:子供用おばけ屋敷で漏らした奴がよく言う。

B:漏らしてない! 腰が抜けただけ!

A:あ、認めた。

B:抜けたふり! ふりだから!

A:はいはい、そういうことにしときますんで。

B:くそっ、山田の奴め……。本当にあった怖い話のたぐいもね、「本当にあった」なんて言いわけがましさがかえってうさんくささを助長するというか。

A:友達との集まりで怪談が始まると耳をふさいでたそうですが。

B:あいつら嘘つきだから! 超嘘つき、ハイパー嘘つきだからっ。

A:なんだ、ハイパー嘘つきて。

B:僕ならね、あんな作り話なんかめじゃない、本当の本当にあった怖い話をできますよ。

A:「本当にあった」って言うよりもさらにうさんくさくなってますが。

B:なにしろあの手の捏造と違ってこっちはマジモンですから。ヤバさが違う。

A:そもそも怪談に、捏造呼ばわりするほどの信憑性ってありませんよね。

B:これは僕のひいおじいさんから聞いた話で、本当にあったことなんですが。

A:自分でうさんくさいと言ってたやつの定番の出だしですけど。

B:当時、戦争は激しさを増していく一方で、ひいおじいさんの家も生活が厳しかったそうです。

A:ああ、戦争中はどこもね。

B:配給も減って食料はとぼしくなり、食べものに困る日々。

A:誰もが飢えてた時代だ。

B:戦災孤児も少なくはなく、親戚の家を飛び出したある兄妹は、兄が畑泥棒をはたらいて農家の人から袋叩きにあったそうで。

A:それ、「火垂るの墓」だな。

B:電気がないためホタルを集めて明かり代わりにするも、翌朝には死んでいたり。

A:うん、火垂るの墓だな。

B:幼い妹が栄養失調となり、おはじきをドロップと思って食べようとしたり。

A:だから火垂るの墓だよな。

B:なんでホタルすぐ死んでしまうん?

A:ひいおじいさんの話どこ行った!

B:この兄妹だけではなく、何千万という膨大な犠牲者を出し、社会に暗い影を落とした戦争。とても怖いものですね。

A:えっ、そういう意味での怖さ? 霊的なのが出てたり取り憑かれたりとかじゃなく?

B:そんな居もしないオカルト的なものより、本当に怖いのは人間ですよ。恐れるべきは、武力という魔物に取り憑かれた、人の狂気なんです。

A:なんかちょっとうまいこと言ったふうですけど、そういう趣旨のやつじゃないですからっ。怪談っ。戦地にいるはずの父親がぼうっと畑に立っていて、実はちょうどその時刻に戦死してたとか、そういうやつっ。

B:ああ、そんな非現実的な作り話はだめですね。もっと実話寄りでないと。

A:足、がくがく震えてますよ!?

B:僕ならよりリアリティーのある話をしますね。これは1962年にキューバで本当にあった怖いできごとなんですけど――

A:それキューバ危機だろ!

B:あと、ネットを通じた監視社会とか。

A:そういうのもういいから!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ