表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/31

「まん」才

子供時代のほほえましい思い出話が、なぜかけがれた方向に進む。

中学生大喜びなやりとりにへきえきしてください。

B:子供のころに思い込んでたことってありますよね。

A:子供特有の無邪気な思い違いね。

B:僕はこれが撃てると思って練習してましたよ。か~、め~……。

A:あー、あるある。かめは――

B:カメをハメるやつ。

A:ちょ、ちょっと、公の場でなに言いだすんですか!

B:えっ? だから悟空的な人が撃つエネルギー波のことですけど?

A:あっ……えっ? やっぱそっち?

B:なんだと思ったんですか?

A:だってそういう言いかたしたら誰だって……。

B:一応、固有名詞は避けたほうがいいかなと。だから西遊記の猿と同名の人もぼかし気味に。

A:まわりくどいな。そうならそうと。

B:あー、おとなになるって嫌ですね。子供と違って勘違いの方向性がけがれてる。

A:あんな言いかた、誰だって思いますって。

B:自身の失態を一般化して正当化。あー、おとなってやだやだ。

A:くそ、ムカつくな。

B:あと子供のころに思い込んでいたといえば「空を飛べる」ってことですね。

A:マイペースだなおい。

B:こう、武術で空を舞うような技で浮けるんじゃないかって。

A:そうそう、武空じゅ――

B:おーっと。

A:なにっ、なんなの?

B:ノンノンノン、言わせねえよ?

A:はいっ?

B:技の名前。固有名詞はうかつに口にするとたいへんなことになるからね。

A:いや大丈夫でしょ、これぐらい、舞空じ――

B:チッチッチッ、だ~め。

A:うざっ。

B:この時代、権利関係シビアだから。たとえば、あのドラゴンを探求する国民的RPGと肩を並べる有名RPG、最後のファンタジー。

A:だからいちいちまわりくどいな。

B:あれに登場する回復魔法、登録商標なんだよ。

A:へえー、あのケア――

B:ノンノンノンノンノン。それ以上言っちゃ、ダ・メ。

A:うっざ、てかうっざ。超うぜえな。

B:HPをケアする魔法名、メーカーが商標権持ってるから、不用意に使うと使用料、請求されるかもよ。

A:いや、漫才でちょっと話題にしたぐらいでありえないでしょ。

B:気をつけるに越したことはないからね。

A:そうかなあ……。回復魔法のトリビアといえば、ドラゴンク――はいはい、ドラゴンを探求するRPGの呪文、元ネタがなにか知ってます?

B:なにかで見た気はするんですけど……。

A:あれは「ホイっと身を助ける」が語源なんだとか。

B:あー、それだそれ。

A:最初は「ホーミ」だったんですけど、沖縄の――

B:おまっ、おまっ!

A:ええっ! ちょっとやめてくださいよ、そんなもろアウトな4文字言葉っ。

B:違うわ! おまえ、って言おうとしたんだよっ。

A:まぎらわしいなっ。

B:おまえ今、沖縄県全域でお茶の間、絶賛凍結中だぞ!

A:なんだよ絶賛凍結中って。てか今どきお茶の間ってあんま言わねえよな。

B:ホーミって沖縄の方言でおま――

A:ちょっとそれ以上はやめませんか! 今度こそ言おうとしただろっ。

B:大丈夫だよ、沖縄にはそのものずばりな名前の干潟があるし。

A:たしかにあるけどっ。

B:正式な地名なんだしどうってことないって、漫――

A:わーっ、言うなあ!

B:そんなこと言ったら、漫画だって万華鏡だって全部アウトになるじゃん。漫画なんてマンの()だし、万華鏡なんてマンの――

A:もういいから、いいから! まんまんまんまんうるせえって。覚えたての中学生かっ。

B:マンドリルなんてマンにドリルって、もうどう考えても――

A:シャラップ、黙れ! いったんストップ、マンから離れろっ。

B:マウントフジ。

A:シャラッ!

B:マンって言ってねえじゃん。

A:うっさい、もうしゃべんなっ。

B:しゃべらなきゃ漫才にならな――

A:またマンって言った!

B:神経質か!

A:誰のせいだ! まったく、子供のころの思い出話がどうしてこんなけがれた感じになってんだ。

B:なんの話でしたっけ、ああそうだ、空を飛べると思い込んでたっていう。

A:気をとりなおしていきますけどね、最初に出会うのはやっぱりドラえもんやアンパンマンかなって――

B:ノンノンノンっ。

A:またかよ!

B:固有名詞。

A:もういいだろ、ドラえもんぐらい。

B:おまえ、さっき俺にマン言うなっつったくせに、自分はアンパンマンて言ってんじゃねえか。

A:おまえはまんまんまんまんうるせえから特別ルールだよっ。けがれた話題蒸し返すな。

B:じゃあこうしよう。おまえは固有名詞を使ってもいい、代わりに俺もマンの使用権を認められる。これでイーブンだ。

A:なんの取引なんだよ、使用権だイーブンだ。あーもうキリがないからそれでいいよ。

B:よし、円満解決だな。お互い我慢ばかりじゃ不満でたまんないし、自慢の漫才で順風満帆、ロマンある人生を満喫して満足満足――

A:どんだけまんまん言う気だあー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ