表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/31

斬新なトリック

推理ものの新しいトリックを考えたという。

ろくでもないアイデアが次々と披露される。

B:僕ね、推理小説のすっごいトリック思いついたんですよ。

A:ほう。けっこう難しくありません?

B:題して「消えるシリーズ」。このシリーズでは、斬新な手段で凶器が消えるんです。その手があったか!やられた!と驚くこと請けあい。

A:ずいぶん自信たっぷりですね。まさか、氷を使うとかのくだらないのじゃないとは思いますけど。

B:えっ?

A:えっ?

B:ま、まあ、ええ…。

A:え、待って、ほんとに?

B:氷で刃物を作ってですね、殺害後に溶けて、いったい凶器はどこへ、って…。

A:しょうもなっ。それ、あまりに古典的すぎて、推理小説のハウツー本にも載らないレベルですよ。え、マジで自信作がそれ?

B:まあ…。あ、俺、すげえの思いついちゃったかも、って。

A:ある意味すげえよ、それをすごいって思ってしまうの。

B:恐縮です。

A:ほめてないよ? ほめてないからね? いや、こんなひどいとは思わなかったなあ。えっと、さっきシリーズって言いましたけど、ほかにもあるんですか?

B:ええ、これはさっきのよりもっとすごいですよ。

A:もっと、って、さっきのがすごかったみたいに言わないでくださいよ。初歩の初歩でしたからね?

B:恐縮です。

A:だからほめてねえって。

B:次のはすごい。食べものを使う。

A:まさか殺害後に凶器を食べて隠滅するとかじゃないでしょうね。

B:えっ?

A:えっ?

B:まあ…。カボチャとかすごい硬くて重いじゃないですか。鈍器に使ったあと、調理して、すごい!消えた!って…。

A:それ、わりあい使われてますから。

B:えっ、そうなんですかっ?

A:推理ものが好きな人なら一度は見たことありますって。カボチャじゃなく冷凍肉使ったり。

B:あ、そのネタいただき。

A:だからもうとっくにあるっつってんだろうが。

B:ちっ、人のネタを。

A:おまえのじゃねえよ!? たった今「いただき」とか言った奴がなに自分のアイデアみたく言ってんの?

B:じゃあ次のはすごい。今のトリックの進化型です。

A:進化型?

B:氷の塊を鈍器にして殴――

A:最初のやつじゃねえか! 退化してるよ。

B:舞台は完全密室。凶器はいったいどこへ消えた?

A:撲殺できるぐらいの氷が溶けたら床びっしょりだよ。あー、これ氷使ったな、ってバレバレだよ。氷は古典的すぎるって。

B:じゃあ普通の刃物。金属の。これが消える。

A:お、それはすごい。それも曲芸みたいに飲み込むとかじゃないでしょうね。

B:えっ?

A:言っときますけど、それももうありますからね。

B:え、マジで? 刃物飲み込むとかありえねえだろ…雑技団かよ。

A:今まさに言おうとしていたどの口が言ってんだ。

B:じゃあ別の方法で消す。

A:どうやって?

B:氷と同じですよ。熱を加えると氷は溶けて水になる。熱すればナイフも――

A:何千度で加熱する気だよ! そんな設備があったら、あー、この機器使って溶かしたな、ってモロバレだわ。

B:炎を吐けるっ。

A:常人は火とか吐いたりできねえんだよ! それこそ雑技団だろ。

B:だからあれ、なんか竜の血筋を引いた一族の末裔的な…そう、ファンタジー世界が舞台。おおっ、斬新じゃん、これ。

A:そいつが犯人って一発でバレんじゃねえか。それともみんな普通にガーガー吐くのかよ。

B:あ、じゃあ末裔限定で。

A:てか金属溶かす火吐けるならそれで焼き殺せばよくない? 室内で高温の火とか火事になるわ。

B:レンガとかの石造り。

A:焦げ跡が残るって。

B:うーん。でもファンタジー世界で推理ものって着眼点はよくありません? 前人未踏。

A:悪くはないけど、初ではないでしょ。誰かがもうやってますって。それに普通の推理小説より難しいですよ。

B:そうですか?

A:今みたいに火を吐いたり、羽が生えてて飛べるとか、なんでもアリでトリックの成立が難しくなる。ファンタジーものって設定考えるのたいへんですよ。

B:じゃ僕の「消える」シリーズはどうなるんですか!

A:知らねえよ! シリーズって、ただの単発アイデアじゃねえか。

B:なら「消えない」シリーズ。

A:それ、あえて銘打つ必要あるっ?

B:現場には、無残に腹を引き裂かれ、腸の出た被害者の姿。死因は絞殺。凶器は見当たらない――実は被害者の腸が凶器だったのだ…!

A:エグすぎるわ! 出血多量で先に死ぬんじゃないの、それっ? 凶器てか狂ったほうの狂気だよ。

B:アイデアは斬新でしょ。

A:まあね。氷のトリックを得意げに語った奴とは思えませんけど。

B:ほかにはね、遺産のダイヤを胃酸で溶かしてショック死――

A:ダジャレかよ!

B:あと、耳を引き裂いて「イヤー!」て――

A:エグいダジャレばっかだな!

B:あと「君の死体としたい」っていう――

A:サイコパスか! もういいわ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ