第3のお笑い
お笑いの2大ジャンル、漫才とコントに並ぶ第3のものを提唱すると言う。
いろいろと挙げるが、新規で新奇なものは生まれるのか。
B:お笑いって基本、漫才とコントじゃないですか。なんでこの2種類だけなのかなってよく思うんですよ。もっといろいろとあってもよさそうなのに。
A:お笑いといいますか、演芸・話芸に類するものは実際は豊富な種類があるんですけどね。
B:といいますと?
A:伝統的なところでいえばまず落語があるし、講談・漫談・浪曲なんかもありますね。腹話術やパントマイム・曲芸・マジックといった視覚に訴える芸もある。けして漫才とコントしかないわけじゃあない。
B:でも基本的にそのふたつばかりですよね。
A:ばかりってことはないと思うんですけど、幅広い層に人気があって、にない手も多いのはたしかですね。
B:僕はその状況はどうなんだろうって感じてるんです。2種類だけってのはちょっとさびしい。
A:両者の中間のようなコント漫才もありますが、まあ派生の範疇でしょうかね。
B:そういうわけで、第3の選択肢を探ってみようかと。
A:へえ、たとえばどういったものがありそうですか。
B:笑いと音楽の融合。
A:ほう。
B:どちらも非常に人気のある分野です。ヒットしないわけがない。こう、リズムに乗ってネタを披露するんです。デンデンデンデデン、アンちゃんいつものやったげて、聞きたいか俺の武ゆ――
A:パクリかっ。
B:武勇で――
A:パクリかっ。なんか意識の高いこと言ってるかと思ったらまんまパクリかよ。
B:武勇伝。
A:うるせえよ。リズムネタなんてすでにあるよとかいう以前の話だったわ。思いきり人様のネタじゃねえか。
B:そんなの関係ねえっ。
A:だからパクリかっ。なにが第3の選択肢だよ。ごたいそうなこと言ってやってることは最低っていう。
B:体操……それだっ。さらに体操というアクションもふんだんに交える。ラララライ体そ――
A:だからパクリかっ。離れろよ、パクリから。しかも全部同じような時期のネタだな。
B:千葉滋賀佐賀!
A:なぜ言った。
B:なんとなく。
A:だからなんでその時期なの。なんなの。いったい。
B:はいはいじゃあもう少し古風な感じなのクリエイトしますっ。
A:なんでちょっとキレ気味なんだよ。露骨なパクリなのに完全オリジナルみたいに言ってるし、なんなのもう。
B:やはり音楽との融合は着眼点としては間違ってないと思うんです。そこで和風の楽器を使う。
A:和楽器を?
B:視覚でも笑いをとるべく、顔面真っ白のメイクに赤い線を描き、いよぉーだとかの奇声を――
A:歌舞伎だなそれ。
B:奇声を発しながら独特のアクショ――
A:だから歌舞伎だよな。
B:こう、団十郎的な……。
A:歌舞伎っつうんだよそれ。てかもう団十郎て言っちゃってんじゃん。あれ、ウケ狙いで顔塗ってるわけじゃねえから。
B:なら傾くっ。前田慶次的に。
A:傾奇者かっ。字が違うわ字が。
B:雲のかなたに。
A:やかましいわ。もはやお笑いどころか舞台芸能ですらねえよ。
B:でも、奇抜な服装や行動などの傾いた生きざまは、お笑いに通じるものがありませんか?
A:なんかちょっといい感じのこと言ったふうだけど、パクリの数々がすべてだいなしにしてるから。
B:じゃあ小道具を使っちゃう。たとえば腹話術のような人形。目新しさ、斬新な切りくちを目指して、あえて日本人形を使――
A:人形浄瑠璃だよな。
B:えっ?
A:人形浄瑠璃だろ、どうせ。
B:そ、そうとも呼ばれることになるかもしれない……将来……。
A:何百年も昔からあるわ。なあ、伝統芸能をオリジナルみたく語るのやめよ? せめて最悪、お笑いの分野にしよ? 人形浄瑠璃も歌舞伎も笑いをとるカテゴリーじゃねえもん。
B:さっきからダメ出しばっかり。じゃ、おまえはなにかアイデアあるのかよ!
A:なに急にキレだしてんだよ。
B:と、いきなりキレてみせる芸はどうかと。
A:だからもうあるっつーのっ。
B:じゃあもう、すっごいドタバタ劇。5人ぐらいで、リーダー格にいたずらをしかけて見つかって逃げまわるような――
A:ドリフだよ。
B:こう、墓場とかの場面で、後ろにお化け的なのがいるのに気づいてなくて「志村ーっ、後ろ後ろ」て――
A:だからドリフだよ。けんさんの名前、出ちゃってんじゃねえか。なあ、パクリから離れたらいけないルールでもあんの? パクらないと死ぬの? 次なにパクるの?
B:次いってみよー。
A:うるせえよっ。
B:というわけで、新しいものを生み出すのは容易ではないと。今の漫才やコントのスタイルを確立した先人たちの偉大さを実感しますね。
A:えっ、この流れでいい感じのまとめに入るんだ。どのツラ下げて言ってんだよ。
B:新しい笑いを作り出すのは、あなたたちです!
A:だからその辺りの時代からパクるのなんなの。おまえが作り出せよ。
B:ゲッツ!
A:もういいからっ。
書き終わってから思ったのですが、10代の読者、だいたい置いてきぼりじゃないですかね、これ。20代前半ぐらいもそこそこ。そんなの関係ねえ!




