表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/31

ボトルシップ

部品を瓶の口から入れて模型を完成させるボトルシップ。

趣味で始めたと語ると、友人も似たものをやっているという。

が、あまりに悪趣味だった。

A:僕ね、ボトルシップ始めたんですよ。知ってます、ボトルシップって?

B:あれですよね、空き瓶にピンセットなんかで部品を入れて、なかで船の模型を組みたてるやつ。

A:そうそう。知らずに見た人は、どうやって入れたんだろう、って不思議がるインテリア。

B:でも、すごく根気と時間がいるでしょ。

A:早くも挫折しかけてます。

B:僕なんか手先が不器用だから、似てる別の趣味をやってますよ。

A:別の趣味?

B:ええ。模型部品の代わりに生きものを入れて育てるんです。

A:はあー、つまり瓶のなかで、出入りできない大きさに成長すると。ちょっと悪趣味だなあ。

B:たまに言われます。

A:なに育ててんです? 魚とか蛙? それか昆虫とか。

B:あ、ヒトですね。

A:ちょっと待てえー!

B:はい?

A:えっ、なにかの比喩とかじゃなく――

B:人類ですね、ホモサピエンス。あ、ワシントン条約に触れる希少動物とかじゃないんで大丈夫――

A:全然大丈夫じゃねえわ! 刑法とかもっと身近な法律にばりばり触れるわ!

B:ま、そう言う人もいますけどね。

A:100人中、おまえ以外の99人が違法だって断言するよ! もとになる受精卵、どっからパクってきた。

B:人聞きの悪いことやめてくださいよ。ちゃんと合法手段で入手してますって。

A:ここまでどストレートな犯罪聞かされて信用できるか!

B:男性がわの細胞は、まあ、僕が毎日むだに生産してるやつをね。

A:毎日、とか聞きたくねえわ! もう片方はどうすんだ、おまえ彼女とかいないだろ。ていうか、いても普通提供しねえよ。

B:妹にメールで聞いてみましたが「死ね」とひとことだけ返ってきまして。

A:当然だよ! なに妹の卵細胞使おうとしてんだよ、怖えよ!

B:あれ以来、なんかいろいろ全部着拒されちゃって。

A:たりめーだ! 刺されたりしないだけましと思えっ。

B:しょうがないんで母に頼――

A:だから怖えんだって! とりあえず、身内の遺伝子とかけあわせようとするのやめよっ? 特に肉親っ。

B:母が「もうこの子は先月もそう言って。ほら」って渡してくれました

A:オカンーっ! 軽すぎだろ! 「もうこの子は先月も」っておこづかいかっ。はい、むだづかいしちゃだめよ、ってやかましいわ! この常軌を逸した行為になに気軽に協力してんだよ!

B:で、まあ人工子宮的な瓶のなかで無事成長しまして。

A:お袋との交配すらかすむSFな話になってきたなおい! 一般家庭の空き瓶でやれるレベル超えてるだろ。

B:ええ、父の経営している大学病院の研究施設の一角を間借りしてぼちぼちと――

A:家族ぐるみ!? 間借りして、じゃねえよ。その異様な実験、施設関係者スルーかよ。ていうかもう、協力してるフシがあるよな?

B:まあ培養液の温度管理とか酸素や養分の供給とか、いろいろ24時間体制で必要なので――

A:もう怖えよぉ! 本格的すぎるよ、国家プロジェクトクラスになってんじゃねえかよ。個人レベルのボトルシップがどんだけ壮大になってんだよ。母親と親父は全面協力してるわ、妹だけかよ、一家でまともなの。

B:なかなか興味深いですよ。ボトルシップと違って成長する楽しみがありますからね。

A:サイコパス? なあ、サイコパスなの? 倫理観とかどうなってんの?

B:最近、言葉を覚えはじめまして。

A:それ培養液のなかに浸かってんだろ、どうやってしゃべんだ。

B:ええ、まだ0歳児ぐらいの大きさで丸まってますけどね、じぃーっとこちらを見ながらテレパシー的なやつで「コロス…オマエ…コロス」って。

A:怖えって! めっちゃ殺意持ってんじゃん! じっとこっち見ながらって、俺なら失禁するわっ。

B:僕もびっくりしましたよ。あ、しゃべるんだ、って。

A:そこじゃねえだろ! テレパシーとか軽く人類超越してんじゃん、それもうホモサピエンスじゃねえよ。おまえとオカンなんなの? やってることおかしいし、え、なに、おまえら一家、宇宙から来たの、どっか遠い星からやってきた系? 妹だけ血のつながってない養子とかの。

B:あ、ごめん、電話だ。はいもしもし。

A:いや電源切っとけよっ。

B:ママっ、いま僕、仕事中だって。

A:家じゃパパママ呼びかよ! 仕事中っていうか漫才の真っ最中っ。

B:えっ? AL1-ENが脱走した?

A:それなんだよ「コロス…」のコードネーム?

B:あれほど時空シールドの制御には注意するようにって――

A:もうおまえんとこの研究施設でいったいなにがおこなわれてるんだよぉ!

B:わかったすぐ戻る!――あ、悪い悪い、ちょっとヤボ用できたんで先帰るよ。

A:しれっと切り替えてもバレバレだよ! まだ漫才も途中だし!

B:でも戻ら――ワカッタ…マンザイ…ヤリカタ…オシエロ…

A:絶対今、操られたよなー!?

瓶詰めの生命体のところは、あのオーバーフローして全ビットが0に戻るあれを連想されたかたもいるかもです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ