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6・満を持して登場!だけど洒落になりません

 よみがえる記憶!!


 前世で死んだあと、この神様に出会った。

 神様は、不幸な死に方をし、ある一定基準を満たした魂は異世界に転生できると説明。そして転生先に希望はあるかと私に尋ねた……。


「私、『幸せなお姫様』ってお願いしましたよね!?」

 神様に詰め寄る。

「ええ、」と引き気味の神様。「その通りです」

「初恋の相手に大失恋した挙げ句に生け贄にされるのが『幸せなお姫様』ですかね!?」

「て、手違いがありましてね」と神様。


 神様から一歩下がると、それこそ魂がこぼれ落ちるんじゃないかという深いため息をついた。


 神様のくせに手違い?


「どういうことですか?」

「マリーナ姫に転生させようとしたのです」


 マリーナ姫?

 ゲームにおいて、名前すらない身代わりの私よりはマシだけど、彼女が幸せな姫だろうか。だって好きな人を失うことがほぼ確定している姫だよ?


「最近異世界転生が多くて、ほとんどのヒロインや悪役令嬢が売約済みでしてね。もはやマリーナ姫しか残っていなかったんですよ」と神様はため息をつく。

「それなら転生を止めればいいのでは?」

「それはそれで魂が回らなくて困るんです」

「ソウデスカ」


 またため息をつく。

「なんなの、彼?」とムスタファが聞いてきた。

「神様。自称だけど」と私。

「本物ですよ!」と神様。

「手違いするのに神様?」剣呑な目付きのムスタファ。

「手違いしても神様です!」

 神様はバーンと胸を張った。


「で、一体どんな手違いをしたんですか?」

「それがうっかり忘れていたのですが、マリーナ姫も売約済みで他の方の魂が既に入っていました。で、あなたは弾かれて、関連する別のお姫様に入った」


 なにそれ。

 そんなうっかりミスで私、初恋ぶち壊れの末に竜に食べられるの?あんまりじゃない?


「仕方ないので放っておいたのですが、」

「放っておかないでよ!」

「前世の記憶を取り戻しちゃったみたいだし、私のミスを上に報告される前に、助けに来ました。感謝してくださいね」


「経緯はよくわからないが、」とムスタファ。「あんたが感謝してもらえる要素を一片も感じられないんだが」

「だねえ」といつの間にかそばに来ていた一つ目が同意する。

「人型はあまり食べたくないけど彼女が気の毒だから、症状が治ったら食べてやろう」とは竜。

「た、食べられませんよ、神様だから」

 後ずさる神様。

「それに、助けに来たって言ったでしょう!」

「どうやって?」


 私の質問に神様は再び胸を張った。

「今度こそ、あなたのご希望通りに転生させます!」

「……今、この状態から?」

「もちろん竜に食べられて死んでから」

「「全然助けてないっ!!」」なぜかムスタファと声が重なった。


「ダメですか」と神様。「それならループ系ですね。あなたがヴァイクリフに呼ばれる前に戻します。声が聞こえても反応しなければいい」

「それは……」と口ごもるムスタファ。

「でなければ単純にここから瞬間移動で居城に帰します。そうしたら再びマリーナ姫が生け贄ですね。あなたを騙してボロ雑巾が如くに捨てたヴァイクリフにとっては、巷で人気のざまぁ系に近い結末ですよ。これは気が晴れるでしょう?」

「それはっ!!」


 一言だけ叫び、再び口をつぐむムスタファ。噛んだ唇から血が滲んでいる。落とされた視線。握られた拳が小刻みに震えている。


「俺は姫様なら誰でもいいんだ」と竜。「だけど彼女はちょっと可哀想かな」

「初恋の男に騙されてな」と一つ目。「俺も彼女を連れて来たことを悔やんでいる」

「それに他国の姫だし」

「マリーナの父親は、そろそろ生け贄の時期だと知っていた筈だしな」


「どちらを選択しますか?」

 神様が笑顔で尋ねる。


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